外伝 回顧録 2
ルルイエからすると、賭け試合に使われるイグドラシルへの違法接続の調査で来ていたが、
違法接続なんて不可能と感じている。
フランの試合を見ながら、売店で買ったかき氷を食べていた。
フランはマシーンキャバリエに乗り込んで展示試合を始める。
展示試合はバトルロイアルで観客が賭ける先を選ぶためのものである。
レギュレーションはある程度展示試合の内容で固定されることが義務付けられる。
「こんなに限定的な、単純な動きしかできないなら、パイロットもあまり実力を出せないんじゃないかな。」
フランはリックジャガーのドラッケンと対峙している。
ドラッケンはキャバリエと比べてやや動きが重い。
関節に欠点があるからだ。
そもそも、格闘試合をするために作られたマシーンではないから、欠点というには制作者に酷だけど。
2度目の右ストレートをフランは後ろに下がってかわすが、顔面にヒットしてしまう。
下がっていたからポイントにはならないが、キャバリエはふらついた。
実況が煽るようにフランの不利を伝え、観客席はラタトクス工業のふがいなさに悪態をつく。」
ルルイエは無線で大丈夫かと確認している。
「マシーンの勝手が違いすぎる。それに相手のパイロットも素人じゃない。」
「格闘大会という意味ではフランさん、あなたが素人なんだ。勝つことじゃなくて、試合そのものが目的地なんだから、とりあえず慣らし運転をしてくれないか。」
「・・私のオッズは?」
「は?」
「この試合のオッズはいくらになってますか?」
ルルイエが通信端末でオッズを確認すると、フランの勝ちで1.6倍、つまりフランの勝ちに賭けている人が多いということだ。
「賭け事は気に入りませんが、私の勝ちに賭けている人がこれだけいるのです。期待に応えないのは倫理的ではありません。」
建前である。単純に闘志が湧いてきている。
今度はドラッケンからローキックを仕掛けられるが、右脚を上げて防御体制を取る。
激突する音が観客席へ響いて、そのコダマのように客は沸いた。
綺麗な受けである。
キャバリエはドラッケンの左肩を掴んで、顔面に右ストレートを叩き込む。
ドラッケンの顔面は破壊された。
顔面の破壊は3ポイントである。
5ポイント取得か、戦闘不能になった場合に試合は終了する。
モニターには、3-2のスコアが表示されている。
キャバリエの右腕が先ほどの攻撃で破損したのだ。
【オーナー室】
オーナーのイワンはオーナー室から展示試合を観戦している。
「本当にあのフランという女は強いのか?」
オーナーの後ろに立っている男がいた。
「ええ、強いですよ、何回か戦いました。とくにマケドニアでの戦いは素晴らしかった。もうだいぶ昔の話だけどね。」
「それほどですか、素晴らしい。」
「それより、実験のために私は来たのだ。この試合でやるかね。」
「くれぐれもバレないように。バトルロイアルが盛り上がるようにも頼みますよ、フォローしてください。」
その男は華山道士連の人間である。とくに表情は変えなかった。
【展示試合会場】
ドラッケンはタックルを仕掛けてきた。
展示試合だから、マシーンの破損は嫌がるべきである。
リックジャガーからすると、飛び入りのプランが気に入らない。
フランに再び無線で通信が入る。
「おい、あと少しでも時間切れだよ。」
「わかってます。オッズに答えるにはということでしょ。」
ルルイエはポイントが上回れば勝ちなんだから逃げ切れと言った。フランは勝ち切れと捉えた。
キャバリエは体当たりに対して、その場にしゃがみこむ。
絶妙なタイミングであった。
ドラッケンはタックルをすかされて、競技場の壁に突っ込んだのである。
すかさず、フランは背面に、パイロットに影響がないように、左ストレートを加えた。
ルルイエは、ありゃあ、完勝してしまった、驚いた。
「ルルイエさん、おかしいんです。」
「何が?」
「タックルの動きが最後減衰しました。もっと吹き飛ぶ予定だったのに。」
ルルイエはその話を聞いて八百長があるのではと考えた。
リックジャガーに詰問する必要がある。
そうこうしていると隣の会場から、大きな歓声が上がった。
実況の声が響く。
「圧勝でした。チームライジング、パイロットマリナ、まさに圧巻。これで12連勝です。」
ルルイエの聞いていた違法接続の噂はこのマリナのことだった。
情報はすでに得ている。
イグドラシルから追放された存在。
そもそも改造人間なのだから他の人間よりも、質がいいのは納得がいく。しかし一応のところ、このマリナの調査も必要だ。
考えに耽っていると、フランの言葉が耳に入ってきていなかった。
何か言っている。
1.6倍でも賭けていたのでしょう、夕食楽しみにしていると。
ルルイエは賭け事はやらないが、勝たしてもらったと伝えてカードにキャッシュをチャージした。




