ルート30
【京都 修学院】
柳生の傭兵団に所属している男は、作戦を受けている。
比叡山麓の治安を安定させろ。と。
早朝に3体のマシーンと随伴兵がアサインされた。
マシーンで比叡山を登るルートは少ない。
最初は比叡山の寺院を制圧するために歩兵が投入された。
大部隊ではなかったが、ミスはあった。
イグドラシルへの違法接続、赤く発光するマシーンがあるから柳生は京都を制圧できたのだ。
それを忘れて歩兵で攻撃するのはナンセンスである。
山の中腹で、自警団に囲まれて、全員死んだ。
次に山中越えのルート30で山頂を目指すのが今回の作戦である。
すぐに柳生の男は凄惨な光景を見た。
ルート30に至る道の両脇には大量の柳生のマシーンが何体も積み上げられ、焼かれていた。
まるで、ここを越えれば皆こうなる、と言った警告のように見える。
死体は見えなかった、それがまた不気味さを増幅させる。
もし、捕まったらどうなるのだろうか。
しかし、柳生の命令はすでにくだったのだ。山中超えを柳生の部隊ははじめた。
【比叡山中腹】
「草太、また来るよ。見えてる?」
指示を出しているのは杏野都子という。
岡崎の自警団を務めていた。今は山間部に後退して避難した市民を守っている。
「見えてるよ、こちら一応いつでも攻撃はできる。でも、バカだな、バリケードが何重にもあって、そこを超えても最後の道は潰してあるのに。都子さんの言うとおりだ、キルゾーンにわざわざ入ってくる。」
「戦争のプロなんてなかなかいないのよ。だから、命令を受けたらキルゾーンでも、心臓破りの坂でも登ってくるの。」
「相手は三体だから、気をつけて。」
「ありがとう。」
都子はマシーンを静かに起動させる。
自警団のマシーンを改造したタイタンである。
「ラタトクス工業の戦闘倫理アドバイザーのナミです。今日はよろしくお願いします。」
「よろしく。」
「戦闘を開始する、イグドラシルコネクトを。」
「杏野都子さん、戦闘哲学の宣誓をお願いします。」
「私は誓います。助けたい人を助けるための戦闘を。」
都子のマシーン、タイタンが少し軽くなったように思えた。
「秩序の神はホーラは戦闘を許可しました。今回の作戦は山中越えから比叡山寺院への攻撃の排除となります。こちらは上にいますから、引きながら、バリケードを利用して相手を倒していきましょう。」
「了解。」
柳生の部隊が、二つほどバリケードを突破しルート30を登ってくる。
柳生のマシンは赤く発光している。
都子はナミに了解をとってからバルカン砲で攻撃をはじめた。
しかし、砲の建て付けが悪いのかなかなか当たらない。
「地域の自警団のマシーンで戦えっていうのは無理があるよ。」
もちろん戦ってるのは自分の意思である。
それにしても、マシーンがポンコツすぎる。
とはいえ、悪路を気にせず都子のマシーンは三体のマシーンを引きつけていた。
「草太、いまだよ。」
合図をした瞬間に、巨大な丸太が柳生のマシーンに降り注ぐ。
2体のマシーンを巻き込んで、100メートルは坂を転落して行った。
随伴も半分は巻き込まれたようだ。
「なれてくれば、簡単なもんだね。」
「草太、気を抜かない。まだ一体いる。」
型にはめて、敵を倒せても、あまりにも戦力が弱い。
オペレーターのナミが警告する。
「だめです、これ以上近づくと、敵のマシーンの、赤い兵器の餌食になります。」
正しい指摘である。
「こんなオンボロマシーンじゃなければ、自警団になんか回してくれないっての。」
日本軍は早々に柳生に押し込まれている。
対して装備も大したことのない自警団が柳生の侵攻を抑えていた。
柳生の男は僚機が二体やられたのを見て動揺している。
この山の中、あとどれだけの敵がいるのだろうか。
さきほどから、山の中に入ったら隠れたりする都子マシーンを目とセンサーで追いながら、随伴兵と連絡を取り合う。
バリケードがあと少なくとも5つは確認されていて、同じように丸太が落ちてくる可能性がある。
柳生の目的は都子を含む自警団の排除である。
今の状況で山の中に入って、バリケードや山に隠れたりする都子を倒すなんてできるのだろうか。
しかし、意外だった、山に立て篭もらず都子は柳生のマシーンの前に姿を現した。
スピーカーで都子は柳生の部隊に語りかける。
「あー、もしもし、聞こえますか?もし諦めて撤退するのであれば追いません、今すぐ奈良のよそもんは退去してください。比叡山は京都のものです。」
草太から通信が入る。
「おい、比叡山は滋賀のものだ、勘違いするな!」
柳生の部隊は自警団のマシーンは都子だけだと知っているから、攻撃を継続した。
もっとも、判断したのは本部の上長である。
柳生のマシーンは最も標準的な、白波といわれるものである。武者を想像させる見た目をしている。
しかし、手には赤く発光する兵器を持っていた。
「奈良のよそもんはん、じゃー、今から攻撃を開始するし。」
都子のマシーンは山の中に姿を消した。
マシーンは巨体である。
柳生の男からは山のどこにいるかは木々の動きから予測はできた。
攻撃を先に受けたのは随伴兵だった。
草太が何名かを引き連れて、都子とは逆側から銃撃を仕掛ける。
柳生のマシーンは随伴兵を庇うように草太との間に割って入った。
「私から意識を離すなんて、馬鹿じゃない」
都子のタイタンは柳生のマシーンの背後から巨大な薙刀で斬りつけた。
再びスピーカーで説得を試みると、柳生は投降した。
「はい、よろしい、みんな負傷者を連れて帰りなさい。マシーンと武器は置いて帰ってね。」
草太は言う。
「捕虜にしなくていいのか?また攻めてくるぞ。」
「負傷者の捕虜なんて収容する余裕はないし、柳生にしても負担になるでしょう。できるだけ死傷者は柳生に返して相手の負担にすべきよ。」
戦闘倫理アドバイザーのナミは言う。
「お見事でした。戦力差にかかわらず作戦を成功させるとは。」
「ねぇ、あの赤く発行する兵器とマシーンを鹵獲して使えないかな?」
「あれは違法接続の可能性がありますから、一度使ったとラタトクス工業に認定されると、永久にイグドラシルのサービスを受けれなくなりますよ。」
「敵だけ違法の兵器で不平等なのに、何が倫理的なんだか。」
ルート30の麓にまた、柳生のマシーンが焼かれて積まれた。
【柳生 御所本部】
「また、比叡山の攻略部隊が全滅しました。」
柳生の支配範囲は京都から、大阪城の近辺である。
さらに範囲を広げるのはリスキーであるが、比叡山のように上を取られているのは不都合なのだ。
「大阪城は久我幻魔の攻撃を受けているから、これ以上大部隊は出せない。ラタトクス工業は京都の北側から大規模な攻撃を仕掛けようとしている。そちらに柳生二十一人衆を回したい。」
元々は十七人衆だったはずたが、微増している。
暗闇から声が聞こえる。
「いけません、戦力の逐次投入はいけません。では、我々が対処しましょう。」
そう聞こえると、気配がない空間だけが残った。
「行ったか。」
「UDAの部隊は伊賀に到達しつつあるか・・・」




