表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
近未来梅田地下街紀行  作者: 川中太一
日本への旅路
PR
36/78

風魔殴殺陣

「お前も面のやつらの仲間なのか。」


太郎は首を横に振る。

「そもそも、雷蔵さんは、なんでこの子が怪しいと?」


雷蔵という大男は太郎という子供を山中追い回していた。

どうも、誰かが結界を張っていてそれが山の人々の迷惑になっているからやめさせたいんだと。


旧知である天根は雷蔵が苦手だ。

会うたびに稽古に付き合わされるし、金はたかられる。

その上で酒も、女もなんでも好きだ。

とにかく近くにいて落ち着きがないのだ。

しかし天根が雷蔵を尊敬している部分もあるのとはある。


「感じたんだ。こんな山奥に子供が一人とはおかしいだろう。しかも、俺から数時間も逃げているんだぞ。」


天根はどうしたものかと悩んでいる。

太郎に対する目線は厳しい。

男の子は天根が助けてくれないと判断したのか。

口をすぼませて、ピィッーと口笛を鳴らした。


鈴が一瞬止まり、すぐに大きく同時に鳴った。


シャン


不思議だった、茂みから一団が現れたのだ。

さきほどまでそんな気配もなかった。

周りは崖である。30人はいるだろう。


その中からひとり、前に出てきた。

「すみません、その子を離してもらえませんか?」


雷蔵が言う。

「頼む前にまず名乗れ。」


名乗らせておいて自分は名乗らない。


「失礼しました。私は小太郎といいます。風魔小太郎と言った方が馴染みありますか。」


風魔小太郎とはおとぎ話の人物である。

「おまえふざけてたら容赦せんぞ。」

バカにされたと目が血走っている。


風魔小太郎を名乗る男は雷蔵の野蛮さに目を回した。

「信じてはもらえませんか?」


「どっちでもええわ、早く結界を解け。」


別の1人が前に出た。

「この蛍火を倒したら、交渉しましょう。」


いかにも忍者という装束ではなかった。パーカーで頭を隠して少しぶかっとした服装であったから、何か暗器をもっているのかもしれない。


「わかりやすくて、ええやんけ。」


少し正気を取り戻した、宗千佳は天根に止めなくていいのか、と聞いたが。

止めることが、まずできないだろうと回答した。


そもそも、天根には関係ないと考えているのかもしれない。

子供が虐待されているのなら助けるが、今なぜか喧嘩をしようとしているのはおっさんである。


蛍火は、岩場から雷蔵に向かい歩いてくる。


天根が宗千佳に声をかける。

「もし、誰がこの世で一番強いかと聞かれたら」


「えっ?」


「きっと雷蔵さんなんだろう。」


蛍火が石を雷蔵に向かって投げつける。

正確に目に向かって飛んでいく。


しかし、雷蔵はそれをかわすわけでもなく、石に当たりながらも、蛍火の脇腹に手刀を当てていた。

それだけである。


蛍火は倒れて動かない。

雷蔵も顔面から血を流している。それなりの流血である。


天根は雷蔵に言う。

「殺したんですか?」


回答は明快だった。

「知らん。」


--


雷蔵は蛍火を倒して交渉の機会を得ることができたことになる、が。


風魔小太郎は久我天根を見つけた。

「貴方が久我天根ですか?」


「ああ、まぁそうだ。」

30人はいる風魔に囲まれているのだ。

敵対しているわけではないが、緊張はある。


「交渉は貴方を含めても?」


「え?」


雷蔵がわりこむ。

「こいつに何かさせるのは問題ない。」


「え?」


風魔小太郎はいう。

「ナハト王が梅田を支配しているのはご存知ですか?」


雷蔵は答える。

「知らん。ずっと山にいたからな。」


「それが悩み事なのです。ナハト王を大阪から追い払ってほしい。」


「結界と何の関係があるんだ。」


風魔小太郎は答える。

「風魔殴殺陣を使えと、指示がありました。」


天根が問う。

「それは?」


「ナハト王を排除できる風魔の奥義です。しかし、風魔殴殺陣は死にすぎます。殺しすぎる。だから使いたくはないのです。この結界もその準備にすぎません。結界はここから京都の醍醐まで続いています。歴史上この規模で、殴殺陣を使ったことはありません。大量の死者が出ます。生駒山以西から西宮まで生物は残らないでしょう。」


宗千佳は風魔殴殺陣は違法の戦略兵器の類ではないかと、考えている。


「酷い兵器を使いたくないから、先にナハト王を止めてくれと?」


風魔小太郎はうなづく。

「幸いかはわかりませんが、準備にあと半月はかかります、この間にどうか、梅田を解放してください。」


元々は子供を返すかどうか、結界をやめるかの話なのに、いつのまにか、関西全ての人間が人質になっている。


雷蔵の考えは明快だ。

「今首領のお前を絞め落とせば、その殴殺陣は作れなくなるんだろう。」


「ここにいる全員を相手にしてですか?」


「すこし、しんどいけどな。半分は道連れにしてやる。」


慌てて天根が割り込む。

「誰の指示でやっているんだ?」


「三つ足のカラスと言えば貴方にはわかるでしょう。それ以上は・・・言えません。」


天根は少し俯いた。

雷蔵とも何か話をしている。ややこしい話だろう。


ここで風魔を倒すのは可能か。

ここにいる風魔を倒しても別動隊がいたら同じでは、範囲の広さを考えるとこの人数とは思えない。


ウサギが割りこんで風魔小太郎に言う。

「戦争だぞ、UDAとか連合とかラタトクス工業に依頼したほうがいいぞ。このゴミでは無理だ。」


「十分、天根殿は有力です。そもそも鎮圧できればだれでもいいとは思います。少しでも希望を増やしたいのです。我々は命令を受けていますが、さすがに今回は作戦が大規模すぎます。」


三つ足のカラスが敵対する何かが梅田にある。

皆殺しても止めたい何かがある。

イグドラシルへの違法接続だけではなく、だ。


「俺たちの目的は京都へ抜けることだ。京都の柳生に対して打撃を与えれば、梅田の鎮圧も楽になるだろう。それを前提にまずは結界を抜けさせてくれないか。」


「わかりました。その子を連れて行くといいでしょう。一応は風魔のはしくれです。」

太郎を指差す。


なぜ、男の子を危険な旅路に連れて行かせようとするのか。

「それは風魔小太郎の意見か?」


風魔小太郎はかすかに口元を緩めたようだ。

「はい、もちろん。」


「小僧、なんと呼べばいい?」


「太郎です。よろしく・・」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ