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近未来梅田地下街紀行  作者: 川中太一
日本への旅路
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32/81

鳥羽上陸

【鳥羽港】


宗千佳と天根とウサギはフェリーを襲った海賊の小型ボートを使って、鳥羽港に接岸していた。

「おい、着いたぞ。」


宗千佳もウサギも船酔いでどうしようもない状態になっている。

陸に上がりたい、そういう思いで必死に上陸する。


「こんなに揺れるとは思わなかった。」


予定では、漁船を乗り継ぐつもりだったが、フェリーから怪しい船が出たら燕雀朱美が密入国者の手配をしているとされるかもしれない。

いや、手配をしているのは事実ではあるけども。


だから、先日襲ってきた海賊船を使ったのだ。

鳥羽は海が入り組んでいるのでこっそりの上陸にも向いていた。


「近海と言っても、それなりの沖からあんな小さな船で来たんだ。酔っても仕方ないか。」


「燕雀さんの空飛ぶマシーンでもよかったんじゃないの。」


「一人乗りだし、あのマシーンはもっと揺れるぞ。」


「そ、それはダメね、うっ」


天根の運転も雑であったのだ。


車を借りて移動しようとおもっていたが、2人とも動ける状態じゃない。

久我天根は諦めて、一泊することにした。


鳥羽港近くの大きめの旅館に部屋をとった。


【少し良い旅館 宴会室】


牡蠣とステーキと伊勢海老とアワビと、どんどん食べ物が運ばれてくる。

「ちょっと、こんなに頼んでお会計大丈夫なの?」


「平気だ、海賊船の退治で多額の金をもらった。」


宗千佳はすぐに金を使い切ろうという発想に呆れている。


ウサギは満漢全席に興奮している。

「牡蠣うめぇな。少し小ぶりだが味がしっかりしている。どんどん頼もう、な。」


天根はステーキには手をつけない。

「食べないの?」


「おっちゃんになるとな、松坂牛みたいなサシが多いのは後でお腹壊すんだよ。」


「なによ、それ。」


「いいから食え、旅館ってのは満腹になって倒れて寝るもんだ。」


宗千佳は真面目だから。

「これから、どうするの?」


「日本に上陸できたんだ。京都を目指すよ。」


「なぜ京都なの?」


「今の日本の状況をまとめさせておいた、おいウサギ説明しろ。」


ゲップをしながらウサギは端末を起動した。


日本の状況を宴席のモニターに映して伝える。

まず、自分たちは三重の先端の鳥羽にいることを示した。

・大阪はナハト王が支配している。

 梅田地下空洞を本拠地に立て籠っている。


 西は淀川を防衛戦としている。

 十三で日本軍の白州大隊が睨み合い中。

 和歌山から久我幻魔が反撃準備中。

 

・京都、奈良、三重の伊賀甲賀を柳生が支配している。


 京都の岡崎、山科で自警団が比叡山とラタトクス工業の力を借りて反撃中。

 四日市にUDAの部隊が集結中。


大きな戦力として、ナハト王の部隊、日本軍、久我幻魔のチーム、柳生、UDAが入り乱れて日本で戦っている。

連合とUDAとラタトクス工業の合同部隊の投入も準備中とのことだった。


この時代の日本は、関東平野に戦略核兵器が落ちて、大きなクレーターができている。

首都機能が崩壊し、日本を見放した人々は太平洋に巨大な水上都市を作った。

これが船団と呼ばれる国家である。


船団と、日本で国力が分解されて、工業力が落ちたら、日本はどこの国からも狙われなくなった。


梅田の地下街は住むところがない人の拠り所になり、拡張を繰り返し、梅田地下大空洞と言われるものになった。

梅田地下大空洞はあまりの広さにより全貌がわかる人はもういない。加えて2/3は土と水に埋まっていて、いまなお、200万人もの人間が居住地としている。


宗千佳は全体の状況を見て提案した。

「ここからなら和歌山で久我幻魔と合流するのは?」


天根はその提案に少し呆れた。

「そういえば、俺がお願いされてたことは日本に連れて行ってくれだったから、この後どうする気だ?」


「とりあえず柳生庄に行って状況確認かな。可能であればそこまで連れて行ってくれないか。」

度を過ぎた要求であった。


「京都までは通過点だから構わんが。久我幻魔と合流するのはしない。」


「なぜ?」


「久我幻魔の目的はナハト王の鎮圧だろう。俺たちは京都とか、奈良に行けば済む話だ。最前線に行ったら戦争に巻き込まれて時間がかかっちまう。戦争関係への接触は逆に極力避けるべきだ。」


確かに、我々は誰も参戦したいわけではない。

久我天根は雑賀故我の討伐を、宗千佳は柳生で事情を聞いてできれば、こんなことをやめてほしい。


「どうやって京都まで?」

柳生までと言わなかったのは自分本意に思われないように気遣いだった。


「そうだな、久我幻魔よりも、状況確認のため岡崎の自警団に合流すべきだが、四日市にUDAが駐屯してるならすんなりと抜けれるかはわからない。大杉谷から吉野へ抜けるのがいいだろう。京都についたら自警団に接触するが、そこに行くまでに柳生庄に寄ってやるよ。」


話は筋だっていた、戦場を避けるのは当たり前だ。

だから天根の言葉を信頼してしまった宗千佳は所要時間を聞くのを忘れていた。

海に続いて、長い長い山の旅のはじまりである。

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