表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
近未来梅田地下街紀行  作者: 川中太一
日本への旅路
PR
29/78

日本海を渡る 前編

【上海 市内 マイクロバス内】

準監禁中の柳生宗千佳がホテルを脱出するのは困難である。

しかし、何もなかった。久我天根が手を回したのだろうか。

拍子抜けだった。自分以外の仲間はどうなっただろうかと少しだけ気がかりだ。


「これからどうやって日本へ?」


「船を使う。あと、これは仕事か?」


「これ?とは?」


「あんたを日本へ連れていくということだ。仕事なら報酬をもらわないとダメだな。」


「ああ、そうね、柳生庄まで行ってくれれば経費と報酬を払うわ。」


提示した報酬は子供が出せる金額ではなかったが、柳生宗千佳はラタトクス工業の仕事もしていたから、それなりに稼いでいる。


久我天根にすると涙に流されて連れていくよりも

仕事として受けたと考えたい。


天根の横で耳がピコピコ動いている。

「この耳の子も一緒に行くの?」


「ああ、そうだ、目を離すと碌なことをしないからな。」


「失敬な。私は一応協力してやってるのだから、たまには感謝しろよ。」


二人の関係はよくわからない。

「貴方達の名前は?」


久我天根は答える。偽名を答えようとしたが、それもめんどくさい、正直に答えた。

「久我流の久我天根だ。こっちのバカは、雑賀ウサギ」


「違う、雑賀故我だ、名前を変えるな。」


上海の事件での死んだ男の名前も、柳生本家に出入りしていた男も、雑賀故我だった。

「貴方は女の子?」


「心は男だ。生物学的には女だ。」

ややこしい事情でもあるのか。


「詮索をするな、誰でも聞かれたくない過去はある。」

久我天根はにやついている。

それをウサギは気に入らないようだ。


「もう少し教えてほしい。港へは向かっているようだが。日本は港が封鎖されているのでは?」


「魚がなきゃ、食っていけないやつは多いんだ、港を完全封鎖はできないだろ。多分」


多分?と言ったか?

宗千佳は色んな大人を見てきた。能力に分相応な自信を持った者は多いが、この男はなんだ?

ホテルからは簡単に脱出させて、日本に行って今回の問題対応をするという。

そんなことができるか。


「あなたを信じていいのかな・・」


ウサギが反応して言う。

「いいわけないだろ、こんなやつゴミだぞ。」


「そうだ。俺はゴミだぞ。」

久我天根は悪口を言われてなぜか悪い気がしないようだ。

「信じる必要はない、もし嫌だと感じたなら別行動をしてくれ違約金も取らないから。」


【上海港】

コンテナが大量に積み上げられている。

物流が混乱しているんだろう。

出せない物が多いのだ。


「こんな調子じゃ、出してくれる船なんてないんじゃないの。」


「こっちだよ。」


壁があった。巨大な壁。

「3枚分チケット買う、あとで経費で請求するからな。」


巨大なクルーズ船であった。

いわゆるカジノ船と言われる物である。


【カジノ船 2等客室】

「よく考えたものね、カジノ船なら近海を周遊するから運行をやめないもんね。」

ベットに腰をかけて、少し寝ようかなと、考えている。


ウサギはすでに、同室のベットで寝ていた。


「日本まではこの船では行けないから、途中で船を乗り継ぐことになる。」


「乗り継ぐ船とはいつ頃出会うの?」


「4日後だ、まずは寝ろ。」

天根はそう言って自分の部屋に去っていった。

宗千佳は相当疲れていたから、泥のように体が崩れ落ちて、4日間は起きなくていいのだからと、何も考えずに、横になった。


それから、15時間くらい経過して、ドアを叩く音と天根の声で目が覚めた。


ウサギの姿はない。


すこし、髪と顔がだらしなかったので、少し待ってと緊急の措置をしてドアを開けた。


ドアを開けるなり、ドレスと化粧道具を渡された。天根はサングラスをかけている。


「パスポートには20才の日本人で偽造してあるから、よろしく。」


少し待ってと、天根を外に追い出して、まずはシャワーにかかってから宗千佳は言われた通りに着替えた。


「日本に渡るためだ協力しろ。」


「理由は?」


「まだ言わないほうがいいだろう。化粧はうさぎにさせるから少し待て。」

そういうと、どこからかすぐにウサギを連れてきた。


【カジノ船 レストラン】

黒いドレスをきめた宗千佳は美しかったから、周りから非常に目立つ。


「なに?食事をしにきたの?」


「当然だろ。腹が減ったのだ。」


窓からどこまでも海が見えた。日本はまだ見えない。

すごく遠くに日本を感じた。


「食べないのか?」


よく考えると、食事なんてゆっくりするのは大分前だった。

人と食事をするのも。


「ウサギは?」


「あいつは、こういう場所が苦手なんだ耳が目立つしな。」


「あの耳は何なの?」


「今のところは企業秘密だな。それよりも、、何食べる?」

久我天根にするとそれが一番重要である。


宗千佳はレストランのメニューを見ても何が書いているかわからないし、そもそも読めない。

天根に任せると伝えた。


ウェイターがやってきて、天根はおすすめのコースを頼みますと、自分が食べたくない物だけを丁寧に伝えた。

セロリ、ニンジン、紫蘇、野菜ばかりである。


「レストランで食事したことは?」


「こんな高級なところはなかったね。」


「そう。まぁ、たくさん食べな。」


カジノ船は富裕層が乗るものだから、当然のように上品な味であった。

不思議である、どうやってこんな新鮮な食材を船上で仕入れるのだろうか。


「どう美味しい?」


「美味しいわ・・・美味しいけど」


「けど?」


「色々わからないことがたくさんあって、何もかも無茶苦茶で。」


宗千佳は泣くわけでもなく、むしろ感情がないように現状を吐露する。


「言うように世界は無茶苦茶になった。だからなんとかしようとして日本に向かってるんだろう。」


「そうだけど。」


「じゃあ、頑張ってみたらいいんじゃないか。」

他人事である。紛れもなく他人であるからである。


少しずつコースの料理を口運びながら、話を続ける。

天根は料理が美味しいか?と都度確認する。

「何の確認なの?」


「料理の食べ方を知らないのか?」


「食べてるじゃない。」


「はぁ、美味しいものを食べたら、美味しいって口に出すもんだよ。」


天根が何を言いたいのかわからない。

「美味しい・・」


「美味しい物を食べて、よく寝て、運動してをすることが健康の秘訣であるから、落ち込んでいる時はそれを心がけよ、と習ったんだ。」


と伝える。


「そもそも、貴方は誰なの?」


「久我天根って名乗らなかったっけ。」


「久我流の久我幻魔なら知ってるわ、でも天根は知らない。」


「別に有名人であるという自信はないけど。」


久我幻魔の戦いを、大連で宗千佳は見た。

久我流のチームは全員が自分よりも明らかにつよい。


「貴方も、強いの?」


天根は嫌な予感がしたのでとりあえず。すごく弱いと否定した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ