港から現れる仲間
巨人が崩れ落ちた。
談迷子はやっと戦場から遠ざかれることにほっとしてる。
息をつく暇もなく、宗千佳が不思議な反応をキャッチしている。
「何かの反応、まさか・・」
まだ、敵の陣地内である、黒いマシーンに出会わないとも限らない、だから、できるだけ戦闘音や、炎が上がらない方に向けて移動している。
宗千佳が気づいた反応は柳生家のマシーンの反応だった。
しかも、かなりの数である。
柳生の本隊が応援に来てくれたのだろうか。
宗千佳は日本の奈良からここまでどれだけ時間が
かかるかを失念している。
それでも、超常の世界の中で多くの仲間が来てくれたことに感謝した。
「ルルイエ、柳生です、柳生の本隊が来てくれた、保護を要請しよう。」
談迷子が割り込む。
「ダメです。嫌な予感がします。」
もともと先程までは宗千佳が空気を読んでいた。
今度は同じことを談迷子がしている。
「なぜ?私の仲間だよ。父が来ているかもしれない。」
「どん底の時ほど希望は危険なんです、もう私たちは逃げきれます。不確定要素を積んでみんなを危険に晒してはいけません。」
これは理屈ではなかった。
経験なのだろう。しかし、自分の仲間を否定されて宗千佳は冷静になれるわけがなかった。
「とりあえず呼びかけてみます。」
談迷子はそれ以上何も言わなかった。
「こちら、柳生である、柳生の克久の娘、柳生宗千佳だ、応答を頼む。」
2度、同じ発信をした。
ルルイエも割り込む。
「もし、ここで柳生本家が介入しても、彼らは戦闘に来たのだろう。だったら、下手な合流をしたらまた前線に送られちまう。やめるんだ。」
ルルイエの消極的な思いは伝わったのか、無線の応答はなかった。
いや・・・
「こちら、柳生本家大隊である、ラタトクス工業へ派遣された、柳生宗千佳と言ったか?」
応答があった。
「そうだ!私はまだ戦える!何か協力することは?」
「確認する。指示を待て。」
談迷子は大体事態を見透かしていた。
だからもう何もいわなかった。
ルルイエは慌てている。
「撤退の安全なルートを聞くんだ、それ以外は巻き込まれるな。」
更に通信が入った。
「指示をする。優先事項があり、動いている故。ラタトクス工業に捕虜として投降をしろ。あとから引き渡しを要求する。だから、今の救出と合流は諦めろ、とのことです。」
「ラタトクス工業に?どういうこと?」
「伝令は以上。」
談迷子は宗千佳の手を握って言う。
「早く行きましょう。」
轟音がなった。大多数のマシーンの群れだった。
柳生の本隊が巨人に向かっていくのだ。
いつも見慣れたマシーンの群れだった。
柳生庄の・・・
しかし、一つだけ違っていた。
「赤く発光している。」
柳生の大軍のマシーンは赤い光を放っていた。
それは黒いマシーンの光と同じであったのだ。
談迷子は再度繰り返して言う。
「早く行きましょう、彼らが我々と敵対しないうちに。」
【大連工業地帯 港沿岸倉庫】
ナハトは出迎えた。
柳生克久が率いる大軍を。
「なかなかの手腕だった。見事だよ、全て計画通りだったようだ。」
「華山道士連、久我幻魔、イレギュラーはいくつかあったが、なんとか目標は達成できた。柳生はもう我々を助ける必要もないんじゃないか。」
「まぁ、それはそうだが、我々にとってはこれからが本番だから、協力してやっていければとは思う。」
「じゃあ、行こうか、日本へ。」
柳生の大隊は港へ、ナハトと日陰博士を連れて日本へ消えていった。
【大連工業地帯 巨人残骸付近】
ジーチンは瓦礫の中で目が覚めた、
「リー、リウ、どうなった。」
なんとか瓦礫を押し除けたが、マシーンはそれ以上は動かない。
仕方なく、コクピットを開けて歩き出す。
別にリーもリウも長い付き合いでもなんでもない、しかし、仲間ではある。
「たまたま、私だけ、タンク役のマシーンだったから助かったんだ。みんな死んだのか。みんな・・・」
すこし息を吐く。
「リーの作った料理美味しかったな。」
少しだけ歩いて、瓦礫でこけて、少しだけ血が出た。
「UDAの基地まで歩いていけるかな、華山の仲間は助けに来てくれるかな。」
心細かった。
しかし、弱気になるよりも、復讐心が湧いた。
仲間を殺された恨みである。
「次はやつらを一人でも多く殺してやる。」
神様というのは残酷である、それは不幸を与えたことではない。
瓦礫でこけた先に落ちていたのは、太極図であった。
不幸は悲しい、しかし、復讐はもっと悲しい、その復讐のための力を運命という神はジーチンに与えたのである。




