撤退!
コクピットに談迷子を乗せて宗千佳は撤退していく。
柳生本家からの指示でもある。
ルルイエ、マリナは僚機に乗っていた。
宗千佳は談迷子に話を聞いた、聞かざるを得なかった。
「どうやって貴方はあの魔法使いと戦えたの?」
談迷子は異常な強さなのである。
宗千佳は少し震えたので、談迷子は慎重に言葉を選ぶ、偉そうにしてはいけない、卑屈であってはいけない。
それは彼女を傷つけるのだ。
「わたしは母から生き残る術を教えてもらいました、だから少しだけ人よりそういうことができるのです。」
魔法使いと生身で戦えることが少しだけ?
それは謙虚さではないのだろう。
「少しだけということは貴方より強い人に心当たりがあるの?」
談迷子は答える。
「ありますよ、そりゃあ。」
一番聞きたいことがあった。
「私と、その強い人たちの違いって何だと思う?」
「強さの違いですか?はっきりしたことは言えないですけど。たぶん・・・」
「たぶん?」
「そんなに変わらないんじゃない?貴方の強さも誰しも。」
マシーンが揺れる、瓦礫を踏んだのだ。
少しずつ戦場が離れていく。
静かになっていく。
「久我幻魔と、私もあまり変わらない?」
「そうね。貴方は柳生で子供の頃から稽古してるんでしょう。」
「誰よりも・・・」
強さが変わらないなんて考えたこともなかった。
魔法使い、三谷秀一、久我幻魔のチーム、雑賀故我、それを倒したキョウジという存在。
今日見た全てが自分を超えていた。
その意見は現実とは違うのだ。
「じゃあ、結果的に現実的にそうではないのはなぜ?」
興奮していた。談迷子は教えていいものかと悩んでいる。柳生には柳生の考え方があるから余計な思想を入れてもいいのだろうか。
わかりやすく、一般人でもわかるように伝えたい。
「貴方の言う強さが勝ち負けとして。」
談迷子は、そうなんでしょうね、と伝える。
「私がもし久我幻魔と本気で戦うなら、核兵器を準備して、不意打ちで久我幻魔に落とすね。」
宗千佳はムッとした。
「怒らないでね、昔の偉い人が言っている、戦いはその準備をいかにするかに、よる。ってね。」
談迷子は続ける。
「貴方が稽古するのもそうでしょう。戦いが始まる前に備える、鍛える、その話よ。」
「じゃあ、私の稽古がたりないということ?」
「違うよ。核兵器を用意できれば誰でも勝てるけど、それって貴方の考える強さなの?って聞いているの。」
核兵器を用意できるかという問題はさておき、核兵器の前では個人の強さは関係ない。
だから、人間の性能差なんて誤差であると。
つまり、求める強さの定義が違うから談迷子は説明できないと言っている。
もう少し、宗千佳に寄り添った答えをしてもいいが、それは柳生の教育に悪いのである。
そもそも、ちゃんと説明しても今の宗千佳には理解できない。
一貫して何が大切かは暗に説明していたが、それを理解するにはまだ早い。
人間から鳥が飛ぶコツの説明を受けても羽がないからわからないのだ。
「じゃあ、あの魔法使いと渡り合えたのは貴方が核兵器のような何かを準備していたってこと?」
「それは・・」
「それは?」
「そういうのは貴方の先生に聞くのがいいと思いますよ。」
「父は貴方達のように、強くはないのよ・・」
柳生家は落ちぶれている。久我流のような新参の流派に遅れをとるのだから。
しかし、自分の先生に聞けという談迷子の言うことは正しい。
宗千佳は人に物を教えたことがなかったからその正しさはわからない。
しかし、一つだけ、ただ願いは一つだけであった。
強くなりたいということだ。
まだ、宗千佳は強さとは何かとはわからない、宗千佳はこれから長い旅と出会いを経て知ることになる。




