道士達の戦い
華山道士連のリーは正直困惑していた。
黒いマシーンのあのチェーンソーのような武器が脅威なのだ。
UDA部隊と連携しながら戦闘をしていたが、あのチェーンソーが青い光を発すと、マシーンの体を一瞬で貫いて、戦闘不能になる。
しかも、目の前には大量の黒いマシーンときた。
幸い華山道士連の仲間は被弾していなかったが、UDAの仲間が犠牲になっただけで、順番だけなのだ。
リウは戦闘倫理アドバイザー経由でリーに伝えた。
「おい、このままだと本当に負けるぞ。さっさと棺を使えよ。」
「全機に通達。戦闘倫理アドバイザーとの接続を切断し、イグドラシルに戦闘終了を宣言しろ。」
「了解」
イグドラシルからのエネルギー供給は普段は生活に必要なレベルに制限される。
しかし、戦争では戦闘倫理アドバイザーが倫理的に戦場をコントロールしていることが前提で供給を増やすことができる。
これを戦闘レベルの接続という。
大体、2割は出力が違うので、この差が戦場での戦闘倫理アドバイザーの利用を強制させていた。
リーはやむを得ないか、と随伴する三機に棺を使うように指示する。
3機は棺を下ろして、蓋を外した。
棺の中身は、宝具 太極図である。
それを観測していたジーチンは言う。
「あれが崑崙の至宝にして、究極宝具、太極図・・・」
棺の中身が放射状に赤い光を放つ。
その光が龍のように輝き、戦場を照らしたのだ。
道士連のマシーン3機も、同じように赤く光った。
「すごい、1.75倍もエネルギー供給が増えた。」
「逆に相手はパワーダウンする。」
宝具といわれる。太極図は元々は崑崙に伝わっていた。
見た目は立方体の木箱だ。
神話の時代のものである。
3機のマシーンが太極図を通して、味方には力を与えて、敵からは奪う。
実に不思議な装置である。
ジーチンは驚愕する。
「こんなのがイグドラシル構築前からあったのかよ。」
パワーが上がった。片手のコマで黒いマシーンなぎ倒し、破壊していく。
黒いマシーンの青いチェーンソーはもう使い物にならない。
リーも初めて使ったが、このような強力な兵器をなぜ連合に対して利用してこなかったのか、それが不思議に思えた。
「こんなの戦闘と言えないじゃないか。」
イグドラシルからのエネルギーによってマシーン自体の耐久にも影響するから、黒いマシーンの攻撃はもう、道士連に通ることはない。
リーは棍を使って黒いマシーンの関節を破壊する。
あまりにも強力すぎるため、パイロットを殺す気にもなれない。
「もはや、倒すまでもないな。」
「おい、リウ、太極図の連続稼働時間と効果範囲は事前情報通りだろうな。」
「およそ、40分。範囲は700メートル。その後のダウンタイムは2時間。あまり離れすぎるなよ。」
「とりあえずは十分か。これでは残りの宝具もとんでもないんだろうな。」
「使い方がわかってればそうだね。ほとんどは漬物石と変わらんよ。」
実際宝具は他にもあったが、起動ができたのはこの太極図だけである。
実戦投入を連合に対して実行しようとしたこともあったが、ラタトクス工業から非倫理的と指摘されるのを恐れたから使えてはいなかった。
UDAが解析した結果、太極図は三つの機能を持つ。1.赤い光がアンテナの役割をしてエネルギーを受信する。
2.範囲内のエネルギーの受容体を学習する、今回の場合だとマシーンである。
3.最後にエネルギー受容体とのエネルギー受信を制御する。
これを棺を担いだマシーン3機で制御しているのだ。
イグドラシルというシステムができる前からこの宝具が存在したことはUDAは不思議に思ったが、過去の遺物がイグドラシルのシステムにたまたま適用できたという解釈をした。
ジーチンは言う。
「このまま速攻で、あの巨人まで近づいてエネルギーを止めれれば自重で自壊するだろ。」
本来はもっと近づいてから起動したかったのだろう。
太極図があっても、あの巨人に700メートルの範囲まで近づくのは容易ではないからだ。
リーは悩む。
あの巨人の主砲が、こちらを向いたら太極図ごと破壊されるんじゃないか。
であれば、むしろ黒いマシーンの数を減らしていって、巨人は長期戦にして食料枯渇まで待った方が安全じゃないか。あのサイズであっても二ヶ月分も食料は持たないだろうから。
そもそも、連合も部隊を出してるのだろうから、黒いマシーンを減らすまでしておけば連合が倒してくれるかもしれない。
「よし、黒いマシーンを20分間できるだけ削りながら、あとの20分は後退しながら戦うぞ。」
道士連は軍人であった。しかし、戦士ではなかった。
自分の命や立場が惜しいし、死にたくもない。
もし、戦士として巨人に立ち向かいたいとか、そういう類のことを考えていたなら、たぶん、この物語は巨人を倒して終わっていたのだろう。
大体は安全圏で戦おうとする人間は不測の事態に巻き込まれる物だ。




