第58話 指令? 炎の魔女を仲間にせよ! その3
神様と会話できることをミストにばらした俺は、部屋にミストを入れてこれまでの経緯を話した。俺がこの世界の人間ではないことは彼女も既に知っているが、神様と喋れるやばい奴というのは話していなかった。
「そんなちゃらんぽらんな人がこの世界の神様なんだ…」
俺の話を聞いてまず出た感想。ですよねーとしか言えない。この世界の人達からしたら、そりゃひどく落胆するだろう。ノリ軽すぎるし、責任感ゼロだし…。ただまぁ……
「話しやすいってとこだけは良いところかもな」
一応褒め言葉も言っとく。多分どっかで聞いてそうだし。
「…それで、神様はなんで炎の魔女を仲間にしてって言ったのかな」
「そこまではわからん。俺も理由教えてほしいんだけど、ちゃらんぽらんだからさ…」
やばい。また文句出ちゃった…。まぁでも事実だしな…。
――すると
「それはねー!」
どこからか陽気な女性の声が聞こえてきた。そう…この声こそ…
「神様!?」
俺がその名を呼ぶと、ミストは動揺して辺りを見回す。……すると、俺達の目の前にぼやっと人の姿が見え始め、それが次第にはっきりとしてきた。
純白のドレスを身に纏い、栗色の長くてサラサラの髪を携えて…頭の上に金色の輪っかが浮いている……神様の姿だ。
「やほー!」
神様は友達に挨拶するくらいのノリで声をかけてきた。もうのっけからこんな感じです…。ミストはというと、神様の姿を目の当たりにして、口を開けて呆然としている。この神様、見た目だけは神聖な感じがするからな…。残念美人って奴か…。
「そこっ!残念美人とか言わない!」
神様がビシッと人差し指を俺に向けて注意してきた。やべ…心読まれてた…。俺はすかさず話を切りだす。
「っていうか、俺が起きている時に姿を見せたのって何気に初めてですよね?」
「あ、たしかにー」
今までは俺が気を失ってるか眠ってる時に夢の中で出会っただけだ。今ははっきりと起きているから、その状態でも姿を現せるのはわりとびっくり。…まぁ神様だからなんでもできるのか。
「でもねー、1分くらいしかいれないんだわこれ」
「制限時間あるの!?」
まさかの発言にびっくりする俺。なんだよその特撮ヒーローみたいな制限は…。っていうか1分ってすぐじゃんか!
「神様!早く理由教えてください!消えちゃう前に!」
「まぁまぁ落ち着きなさいってー。炎の魔女はねー、とーっても強いから、これから起こるピンチとかですっごく役に立ってくれるよ!逆に言うと、仲間にできないと結構きっついかも」
え…!?これから起こるピンチ!?え!?こっちはのんびり旅を続ける気満々だったんですけど!?だってもう魔物問題だって解決したのに…!もう何もないでしょうよ…!アレイア平和だって言ってたじゃんか!
炎の魔女が強いと言うことより、そっちの方が気になってしまった…。やばい…!もう1分経ったか…!?
「神様!これから起こるピンチって一体…!?」
「あーもうオーダーストップでーす!もう注文は受け付けませーん」
舐めくさってんなこの神様…。やべ…心読まれてるんだった…。
「じゃ!是非仲間にしてねー!」
神様は手を振りながらそう告げると、霧のように姿を消してしまった…。くそう…気になることが増えてしまった…。
ミストに目を向けてみると、彼女はまだ呆然としていた。初めての体験だからな…。まさか神様に逢えるなんて思ってなかっただろうし。
「きれいな…神様だったね…。やっぱりちゃらんぽらんだったけど」
すごく的確な感想だと思います。
…それはそうと、困ったな。これから起こるピンチも気になるが、炎の魔女を仲間にしないときついという話を聞いてしまったからには、是が非でも仲間にしたいところだが……。
「結局この町には炎の魔女いないんだよな…」
「でも神様がユウキに宛てたメッセージには、この町にいるって書いてたよね」
…確かにそうなんだが、この宿屋主の女の子はいないって言ってたからな…。この町は規模も小さいし、仮にいたら結構有名人のはずだ。ミストだって地元の町では超有名人だったからな。
「とりあえずもう夜だし、明日の出発時間を遅らせて、町の人に聞き込みするか」
「うーん…でも、パルマに行く馬車は明日の9時に出るのが最後だよ?それまでに探し出せるかな…」
おっと…そうか、馬車の時間があったな…。そんなに早いのか最終便…。まぁ80キロも離れてるし、町の外だと夜は危ないから、必然的にその時間になっちゃうんだな。
いや~判断に迷うなぁ…。どうしよ……RPGで強キャラを仲間にするの忘れてその先でめっちゃ苦労するやつだよなこれ…。
「先を急がなきゃいけない理由もないし…、もし見つからなかったら、もう一日粘ってみよう」
俺はそう決断した。情報が少ない中で先を急いでピンチになるのは避けたいところだ。平和とは言え、魔物が完全に無くなったとは限らないし、その他にもよくわからん生き物がいる可能性がある。喋る木がいるくらいだしな…。
すると、ミストは微笑みを浮かべた。
「ユウキがそう判断するなら、それが一番だと思うよ」
いや…もう恥ずかしいです。顔合わせてられないです…。
「とりあえず、今日はゆっくり疲れを取って、明日の朝行動しよう」
「うん。エリルやクレアにも話して協力してもらおうよ」
「えっ?神様のことも?」
「そこは任せる。神様のことを話さなくても、炎の魔女がいるらしいから逢ってみたいとか言えば興味湧くかも」
「なるほど。さすがミスト」
――ということで、明日の朝聞き込み開始だ。




