第40話 怪夢?夢なのか夢じゃないのか その1
クベスは今の時期訪れる人が少ないようで、宿も格安の値段で1人部屋を3つ取ることができた。…とはいえ、1人というのはちょっと寂しい。
夢から覚めてだいぶ時間が経っているが、今でも鮮明に覚えている。確かに俺はミストに告白したし、彼女も俺のことを好きだと言ってくれた…。あぁ…いっそのことずっと夢の中でもよかった。今異世界にいるのに…。
そんな余韻に浸りながらベッドに潜って目を瞑ると、いつでもあの時の光景が浮かんでくるような気がした。…いかんいかん。いつまでも悲しんでいてはだめだ。また隙を見て告ればいいじゃないか!……何考えてんだ俺は。
今は思考停止しよう…。一夜眠れば傷も癒えるはず…。―――――――――
「起きて…!起きて…!」
……。なんか声が聞こえるよう…な。
「起きて!お願い…!目を覚まして!!」
んん…!?この感じ…なんかただ事じゃないぞ…!?
俺は慌てたように目を開けて体を起こした。――視界に映ったのは、見覚えのある池だった。
「ユウキ!よかった…!」
次の瞬間、背後から両手を回されて抱きつかれた。……え。
「ミ、ミ、ミスト…!?」
俺はどんな湯沸かしポットよりも素早く沸騰して勢いよく離れた。すると、ミストは一転してムスッとした表情になる。
「心配したのに…。驚きすぎ」
「いやだって…!あれ…!?また同じ夢を見てる…!?」
俺はハッとする。馬車で見た夢と同じ夢を見ている。厳密にいうと、場所が同じなだけで、場面は違う感じだ。
「夢…?何言ってるの…。これは夢じゃない」
ミストは怪訝そうな表情を浮かべてそう言った。え…?夢じゃない?どういうこと?もう…なにがなんだか…。
ガサガサ…
その時、葉擦れ音がして、近くの茂みから何かが勢いよく飛び出した―――――
「うわああぁぁ!!」
――――俺は叫び声をあげて目を覚ました。辺りを見回すと、宿の寝室だった。
「……はぁ」
俺は深いため息をつく。なんて悪夢だ。というか、一体どうなってるんだ?立て続けに同じ夢を見た挙句、夢の中のミストは夢じゃないとか言っちゃうし…、それに…俺は何に襲われたんだ…?
コンコン…
そこへ、寝室のドアをノックする音が。
「どうしたの?大丈夫?」
ミストの声だ。いきなり悲鳴があがればそりゃ心配にもなるだろう。…なんだか急に恥ずかしくなってきた。もはや恐怖も忘れて、真夜中に叫び声をあげてしまった自分を咎める。
「大丈夫。ごめん起こしちゃって…」
ドア越しに謝ると、ドアが開いてミストが顔を覗かせてきた。
「ほんとに大丈夫?」
念を押すような問いかけは、ミストが心から心配してくれているのだろう。無理に強がるよりは、話を打ち明けた方が良いと思った。…俺はそう思い、ミストを部屋に入れて、さっき見た夢のこと…その前に馬車で見た夢のことを話すことにした。
……でもやっぱり、告ったことは内緒にしておくか。




