第41話 怪夢?夢なのか夢じゃないのか その2
俺はミストに自分が見た奇妙な夢についてありのまま話した。ただ、告ったことや、あの拳銃で魔物を倒したことなど、要所要所で話していないことはある。言葉でわかりやすく伝えるのは思っているよりも難しい。けど、俺の頭がこんがらがっていることはわかってくれたと思う。
「夢にしては妙にリアルな感じ…。あのクレアがエリルの体を乗っ取るっていうのもなんだかありそうな話だし…」
隣に腰かけていたミストは俺の話を真面目に聞き入ってくれた。やっぱり話して正解だったな。なんだか幾分気持ちが楽になったようだ。
…と思っていると、ミストが立ち上がって急に大胆なことを言いだした。
「エリルが寝ている間に乗っ取られるかもしれない。本をエリルから遠ざけよう」
「え…でも、クレアに気付かれるんじゃ…」
俺は顔を見上げながら若干の戸惑いを見せる。
「大丈夫。たぶん寝てる」
ポジティブなのか大雑把なのかはともかく…、これがエリルだとすごく心配になるのだが、ミストだとなんか信頼できるっていうか…。別にエリルをバカにしているわけではないんだけど、まぁなんというかそんな感じ。
…ということで、俺とミストは夜な夜なエリルの部屋に忍び込むことに。廊下が木製なので、ギシギシならないようにそうっと忍び足でエリルの部屋に近付いていく。
扉を開けると、エリルは鼻ちょうちんを膨らませながら幸せそうな表情でぐっすりと眠っていた。…ちょっとの物音じゃ起きなそうだ。さて…、クレアの本はどこだ?辺りをキョロキョロと見回していると、灯台下暗しとでもいうべきか枕元に置いてあった。
たぶん寝る間際までクレアとおしゃべりしていたんじゃないだろうか。そんなおしゃべり相手をこれから奪うとはなんて残酷な…と思うところだが仕方ない。
俺はそーっと本に手を伸ばす。クレアは表情を読み取れないが、たぶんぐっすり眠っているんだろう。物音ひとつ立てずに本を掴むことに成功し、俺とミストは足早にエリルの部屋から退散。声一つ上げない本を持って俺の部屋へと向かった。
部屋に戻ると、ベッドに腰掛けて本を開く。
「ぐー……、ぐー……」
姿は見せないが寝息が聞こえてくる。ほんとに寝ていたようだ。こういう摩訶不思議系キャラって勝手に警戒心強いもんだと思ってたけど…そんなことはなかった。
「クレア、起きなさい」
「ぐー……んん……?」
隣からミストが声をかけると、クレアの目が覚めたようで、寝ぼけ気味の声を上げる。そして、ゆっくりと姿を現した。寝間着姿だった。
「えー…、もう朝って……まだ真っ暗じゃん…ってあれ…?エリルは…?」
眠い目をこすりながら辺りを見回すクレア。エリルの姿は当然見えない。
「ここにはいない。なぜなら誘拐されたからだ」
別にそうじゃないのに俺がそれっぽいことを言うと、クレアは眠気も吹っ飛んで驚いた。
「えーー?エリルが!?」
「いや、クレアが」
見事にボケをかますクレアに冷静にツッコんだ。……いまいち締まらないな。




