第34話 出発!モルテナ山へ その2
気付くと、俺は見知らぬ森の中にいた。さっきまで馬車に乗っていたはずなのに、今は地面に立っている。いるのは俺一人だけ。エリルもミストもいない…。いったいどこに行ったんだ?……というよりも、俺がはぐれたのか?
突っ立っていても仕方がないので少し歩いてみる。突然すぎて焦りも感じないし、なんだかフワフワした気分だ。
しばらく歩くと、森の中に泉が現れた。なんだか神秘的な雰囲気にも見えるし、そうでない気もするし…。けど、水はきれいそうだ。
バシャァーン
――と、泉の中から突然、頭の上に輪っかが浮かんでいる女の人が姿を現した。
「あれ…?神様…?なんでこんなところに」
その姿は間違いなくあのちゃらんぽらんな神様。そういえば、意外と顔を見たのは2回目か。もっと会ってるような気もするけど…。
それにしても、これは俺を呼び寄せたのか?なんのために?
「そこの旅の人、キミが泉に落としたのはどっち?」
神様は用意された台本を読むかのような口調で俺の問いかけをガン無視し、両掌を上に掲げた。すると、掌の上が光り輝き、右手にはなんかの紙切れ、左手には……
「ミスト!?」
なんとミストの姿が現れたのだ。
「右のはキミのいた世界に戻れる片道切符で、左のは水の魔女、ミストちゃんだよ。どっちか1つを選んでね。どっちかだよ!」
「いやいやいや!」
念を押す神様に俺はツッコまざるを得ない。組合せがおかしい!なんでここでミスト!?っていうか、元の世界に戻れる切符とかそんな便利アイテムあったのかよ!?
「右を選べばその名の通り元の世界に戻れるよ。でもミストちゃんとは二度と会えなくなるよ。逆に左を選べばミストちゃんと一緒に居られるけど、元の世界にはもう戻れなくなるよ」
いつもの軽い調子でしゃべったけど、内容は非常に残酷…。どっちかを選んで、もう片方を捨てるなんて……俺には…。
「早くー!選んでー!このポーズ保つの疲れるんだからー!」
悩みまくっている俺を煽るかのように自分勝手なセリフを言う神様。ちくしょう…。なんて残酷な神様だ…。今まで助けてくれてたのにどうしてこういきなり――――
「はっ…!」
次の瞬間、俺は勢いよく起き上がった。
「あ、ユウキ起きたんですね」
そこには、窓越しに外を眺めていたエリルの姿が。ガタガタと揺れる床…、今俺がいるのは馬車の上だ。…どうやらさっきのは夢だったようだ。神様のいたずらだとしたら相当悪質だ。今度会ったら文句言ってやる。
ふと、逆側に向き返ると、ミストが横になってこちらに寝顔を向けていた。いつものツンケンした表情とは打って変わった彼女の素の表情は、俺の気持ちを焦がらせるには十分なほど可愛らしかった。
しかし、そんな最中、驚愕の言葉が聞こえてきたのだ。
「ユウキ、クベスに着いたらそこから先は別行動しましょう」




