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方向音痴の半竜娘は旅がしたい  作者: 揚げパン大陸
第1章 魔物問題を解決しよう
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第32話 急転!?闇夜の静けさの中で

 その後、俺達はフローベル観光に繰り出した。異世界に来てまで街の観光というのもおかしな話に聞こえるかもしれないが、街というのもその世界の重要な要素だ。その世界の人々の暮らしが凝縮されているのが街なのだから。

 RPGだとほとんどが王国で、街に騎士団とか兵士がいたりするが、アレイアは共和制で王様もいなけりゃ軍隊も持たないらしい。それはつまり、平和が保たれているということ。

 でもかつては軍を持っていたこともあるようで、フローベルにもフローベル城という石造りの立派なお城がある。それも外見はほとんど破損しておらず、当時の様子がほとんどそのまま残っているらしい。


「すごーい…。今にも兵隊さんが出てきそうですね!」


 俺達はお城の中に入って見物している。これだけ立派だと、あっちの世界じゃ観光客でごった返してるだろうが、ここは人もまばらで、尊厳な雰囲気がより一層引き立っている。


「そうだな。俺てっきりこの世界じゃまだバリバリの王国制度で、兵士がいっぱいいるのかと思ってたけど……平和なんだな」


「そうですよー。アレイアは平和なんです」


「じゃあ尚更、魔物をどうにかしないとな」


 俺がそう言葉を漏らすと、エリルが思い出したように声を上げる。


「あっ…!モルテナ山!クレアに早く行こうって言われてたのに…」


 なんだ…。今の今まで忘れてたのか…。さすが甘味の力恐るべし…。


「まぁ焦ったって仕方ないし、今はゆっくりしようぜ。な?ミスト」


 俺はそう言ってミストに目を向ける。…と、彼女も俺に目を向けて小さく頷いた。




 その日は夜まで街を観光して周り、夕飯も奮発して、牛のヒレ肉のクリームソース和えという、高校生のガキが食べていいのかと思うくらい豪勢な料理を食べた。今まで食べた肉料理で一番おいしかったかもしれない。ありがとう神様…お金をたんまりくれて…。明日から節約します。

 夜、ホテルの部屋にある椅子に座って外の夜景を眺めていると、コンコンと音が鳴り、部屋の扉が開いた。


「ちょっといい?」


 入ってきたのは、意外にもミストだった。


「どうした?珍しいな」


「あんたこそ。てっきりクレアに言われるがまま、モルテナ山に行くんじゃないかと思ってた」


「いやまぁ…最初はそう思ってたよ。でも、ミストがあんなこと言っちゃうからさ、だんだん気になってきて」


 実を言うと、最初は魔物の謎が気になって仕方が無かったから、クレアの言う通りに動こうと思っていた。本当だ。

 すると、ミストはクスッと笑みを浮かべてベッドに腰かけた。……あれ?ミストが笑ったのって…初めて?いや、エリルにはもう既に振り撒けてるかもしれないけども。


「私の言うことなんか真に受けないと思ったのに…」


「そんなことねぇよ。ミストは頭が良いし、勘も利くし……。ミストが言うことも尤もだなって思っただけだ。クレアはよくわからないところがあったから、モルテナ山に行く前にそれを探った方が良いと思ったんだ。…そしたらミストの言う通りだった。あれは何か企んでる。だって、モルテナ山に行くことを自分で“頼みだ”って言っちゃったもんな。あそこまで必死に連れて行こうとするのは何か裏があるに違いない」


 ミストの柔らかな笑みを直視できない…。なんだよちくしょー…。


「さすがだね。うん、さすが」


 ミストはうんうんと頷く。


「ほんとにそう思ってんのか?」


 あまりにも素直に褒めてくるんで、裏があるんじゃないかと思ってしまう。


「思ってるよ。あんたの言い回しは私も見習わないといけないと思ってるし、あんたは私よりずっと冴えてると思う」


 あぁ……なんか…胸が苦しくなってきた…。


「いやいや!ミスト!普段通り毒を吐いてくれよ!大したことしてないって言ってくれ!らしくねぇよ…」


 俺は思わず口に出してしまった…。なんだか耐え切れなくなったのだ。

 すると、ミストは儚げな表情になって立ち上がった。


「ごめんね。今まで毒ばっか吐いちゃって…。私って自分にすごく甘いんだなって……あんたと居るうちに思うようになった。クレアのことだって最初にあんたに言ったのは、エリルに言えばあの子が傷つくし、あの子が傷つくのを見たくなかったから。あんたが異を唱えた時も私はムスッとしちゃったし…。ひねくれてるよね…」


 ひねくれてるのは……俺の方だ。なぜなら、ミストが実はすごく良い子だということを認めたがっていないのだから。ミストに弱点があるとわかった時も俺は内心喜んだ。それは俺も心のどこかでミストに対抗心を燃やしていたからなのだろう。


「似た者同士だな」


「え…?」


 ミストは少し驚いた表情を見せる。


「俺だって結構ひねくれてるぜ?ミストが料理の知識全然無いこと知った時はちょっと嬉しかったし。だから俺の方が優れてるとかねぇよ。似た者同士だ」


「似た者同士かー…。なんだか嬉しいかも」


 なっ…!!ミストの笑顔が……とんでもなく………。


「じゃあ私もう寝るから。今日は楽しかったよ。おやすみ」


 ミストはそう告げると、静かに部屋から出ていった。……俺は椅子から立ち上がると、そのままベッドへ倒れ込んだ。


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