第31話 美味!おいしいものは外せない
俺達はおいしいパスタを食べた後、もちろんストロベリートルテを食すべくトルテ屋に並んだ。行列はさっきよりも若干減っていて、20分程度で買うことができた。
クレアが本に閉じ籠っているうちに食べてしまおう。俺達は道端のベンチに座ってトルテを包みから出す。既に一切れずつに分けられており、一切れは掌くらいのサイズだ。
「これがフローベルで一番有名なトルテ…」
「おいしいもの食べすぎて、この町を出るのが辛くなってしまいそうです」
「一理あるなそれ。なんだったらもう一泊したいところだ」
今の俺達はもう完全に魔物よりおいしいものを食べることで頭がいっぱいになっている。さすが食欲に勝るものは無い。…こんなことクレアに言ったら発狂するかな。
まぁとにかく、目の前の至極の品をいただこうじゃないか。
「「「いただきまーす」」」
俺達3人は仲良く声を揃えると、ぱくりとトルテを口の中へと運んだ―――。
あぁ~~サイコーにおいしい~~。甘さが程よいし、なんて香りが良いんだぁ~~。イチゴ独特の香りと風味がたまらない!これは…並んででも買う価値大アリだ!お土産に買いたいくらいだ!
「あぁ~~、おいしくて昇天しちゃいそうです~~」
エリルはあまりのおいしさに昇天寸前のご様子。
「今度家に帰る前にお土産に買おうかな」
ミストはミランさんにもこの味を知ってもらおうと、お土産購入を検討中のようだ。できることなら、俺も両親へのお土産を買いたいところだ。
…後味の余韻に浸ったところで、さてと…名残惜しいが町を出るか…。そして次に俺の口から出た言葉は――
「もう一泊しない?」
「いつまでのんびりしてんだぁーー!!」
途端、エリルの脇に置かれていた本が勝手に開いて、クレアが勢いよく腕を振り上げてツッコミを入れてきた。…しまった。怠け心に甘え過ぎたか…。
「はぁー…。せっかく図書館から出れたのに、早速訪れたこの仕打ち…。辛い…」
クレアはガックシ肩を落として落胆してしまう。喜怒哀楽が激しいな…。見てて飽きないから良いけど。
今の3人はたぶんクレアの話を真面目に聴かないだろう。ミストはそもそも信用してないし、エリルはさっきから余韻に浸りまくってるし、俺はもう一泊してさらなるグルメ発掘を目論んでるし…。クレア仲間になってまだ数時間しか経ってないけど、もう扱いが雑になっている。
「エリル!!ほら!!早くモルテナ山に行かないと!」
クレアが一番頼れるエリルに声をかける……が、余韻に浸り中のエリルの頭には魔物のまの字も無い。
「ふぇ…?モルテナ山にはどんなトルテがあるんですか?」
その代わり頭はトルテでいっぱいのようだ。…しょうがないな。
「だめだクレア。今のエリルは甘いお菓子とかおいしいグルメのことしか頭に入ってこない。とはいえ、クレアも俺達の仲間。仲間を粗末にするのはよろしくない」
「そうそう!!わたしがこんな惨めな思いをしているんだから、次はわたしの頼みを聞く番でしょ!!」
クレアが拳を強く握りしめて説得してくる。…確かに、彼女の言うことは尤もだ。
「だが待て。俺達は町にありがたみを感じてしまう旅人初心者で登山家じゃない。いきなり山に行くのはちょっとハードルが高いんだ。そこで公平を期すために…俺とじゃんけんしようじゃないか」
「じゃんけん?」
クレアは首を傾げる。
「クレアが勝ったら今すぐモルテナ山に向かおう」
「あんたが勝ったら?」
「ここでもう一泊してさらなるグルメ開拓する」
「なんでだぁぁーーーー!!!」
クレア発狂…。まぁそうなるわな。だが、こうするしかないんだ。許してくれ。
チラッとミストの方に目を向けると、彼女はこっそり親指を上げてグッドのポーズをとっていた…。
「ほんじゃ、出さなきゃ負けよ…」
間髪入れずにじゃんけんスタート。
「あー…!もう!」
クレアも仕方なしに右手を上げる。
「最初はグー、じゃんけんホイ!」
俺はグーを出した。……対するクレアは―――
チョキ!!俺の勝ちだぁぁ!!
「うわぁぁぁーーー!!なんてことぉぉーー!!この辛さがまさか継続だなんてぇ……!ショック死しそう…」
パタン……
本は力無く静かに閉じてしまった…。南無…。




