第28話 奇妙?エリルが手にしたその本は その2
魔物に関する本を手に入れた俺達は、図書館の外にある庭園で本を読むことにした。色とりどりの花が咲き乱れる庭園で読書なんてなんか優雅でおしゃれだけど……題材は魔物ってところがなんとミスマッチな。
俺達はベンチに並んで座り、エリルは例の黒い本を取り出し、ミストは“渦潮の神秘”と書かれた本を取り出した。………ん?
「ミスト結局借りたのかよ!?」
「何か問題でも?」
俺のツッコミを涼しげにあしらうミスト。いやいや、ちょっとは悪びれろよ!彼女らしいっちゃらしいが…。っていうか、ミストは今のところ魔物より渦潮の方が興味があるらしい…。何度も言うが、最初に調べたいと言ったのはミストだ。
「渦潮だって、魔物との関係がゼロかどうかわからないでしょ?」
まぁ…、そう言われると…そうかもしれないが…。いや、魔物がいないあっちの世界でも見られる自然現象で、地形に起因するものだ。それはさすがにこっちの世界でも同じなんじゃないか?
…と思ってミストを見るが、既に彼女は意識を本に全向けしていた。もはや俺など眼中にないご様子。…さすが水のエキスパート。水博士の称号を与えてやりたい。
「じゃあ私は、魔物の知識を蓄えますよー」
一方エリルは黒い本を見つめて意気込みを見せる。…なんだか妙に緊張してきた。いったいどんなことが書かれているのだろうか…。
そして、エリルは表紙をめくり、1ページ目を開いた――――瞬間
「やっほぉーーー!!」
飛び出す絵のごとく、黒いマントを羽織った紅色の髪の女の子が本の上に現れたのだ。でもミニチュアサイズで、頭から足の下まで20センチくらいしかない…。
「やぁっとお外に出られたよーー!ありがとうエリル!」
「えっ…?えっ…?ど、どちら様ですか!?」
エリルは動転してしまっている。もちろん俺も。名前を知っているってことは少なくともどこかで逢ったということだけど……、いやそれよりも……小人…?よりも小さいよな…。本の妖精か何か…?
「えーー?酷いよエリルー!この髪、この黒いマント!見たことあるでしょー!」
本の妖精?はムスッとしてエリルに抗議する。知らないわけがないと言いたげな感じだ。
すると、エリルは思い出したように手をポンと叩いた。
「もしかしてクレアさんですか!?」
「ピンポーン!大正解!」
クレアって言えば…さっきエリルが口にした名だ。この黒い本を渡してくれた人だ。……え、でも、なんで本から飛び出してきたの…?
「でも……図書館の地下で逢った時となんかこう…雰囲気が違いますね…。年齢も若返ってる感じですし」
「あれは魔法で大人のわたしの姿を見せてたんだ!雰囲気は大人だから落ち着いた感じにしたの!」
「えー!?魔法でそんなことができるんですか!?すごいですー!」
「すごいでしょー!エッヘン!」
素直に称賛するエリルと、ピノキオのように鼻を伸ばして得意げな表情をするクレア。魔法が使えるってことは、彼女も魔女なのか…?
…すると、今の今までノーリアクションで読書に耽っていたミストが不満そうにこちらを向いてきた。
「ちょっと、声が大きくて読書に集中できないんだけど」
「「あ、すみません…」」
注意されたエリルとクレアは揃って申し訳なさそうに詫びる。……いやいやいや!!
「そこ素直に謝るなよ!!ミストもどんだけ本読むのに全振りしてんだよ!?」
とんでもな3人にツッコまずにはいられなかった。すると、ミストはこれまた不満そうに本を閉じた。
「仕方ない…。ちょっとは話聴いてあげる」
もはやミストにとってクレアの存在は渦潮以下のようだ。…そう思うと不憫だな。っていうか、魔法使えるミストがこういうのに興味を示さないって…。
とにもかくにも、やかましそうなのが仲間?になりました。




