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方向音痴の半竜娘は旅がしたい  作者: 揚げパン大陸
第1章 魔物問題を解決しよう
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第29話 元気!ミニチュア少女の名はクレア! その1

 エリルが図書館の地下でクレアから貰ったという黒い本からクレア自身が飛び出してきた。しかもエリル曰くキャラが変わったらしい。本来はやかまし…もとい元気な性格のようだ。

 それにしたって彼女は普通ではない。なにしろ本から飛び出したとはいえ、身長が20センチほどしかないのだから。


「クレアはどうしてそんなに小さいの?」


「ちっさい言うな!!」


 ミストが初めてクレアに話したが、悪意がこもってるんじゃないかと思うくらい直接的な物言いだ。クレアも気にしているらしく、唾を飛ばす勢いで文句を言う。

 とはいえ、ミストの質問は俺も気になっているところだ。あと、いまだ本の上に居続けているのも理由があるのかな。


「わたしもできることならみんなと同じくらいのサイズになりたいし、この本からも離れて自由に動きたい。でも…、今の力だとこれが精いっぱい」


 なるほど…、本から離れることもできないのか。なんか…かわいそうだな…。


「まぁ、今でもやかましいし、これ以上大きくなられると騒音問題に発展するから」


 ……ミスト、読書邪魔されたの根に持ってない?


「う…う…」


 すると、ミストの連続毒舌攻撃に元気少女もさすがに応えたのか、悲しそうに目に涙を浮かべている。


「うわーん!!ひどいよぉー!!エリルーー!!」


 そして涙を滝のように流してエリルに泣きつく。不憫に思ったエリルはクレアの頭を撫でてあげる。…なんかこういう展開見たことあるな…。


「あーよしよし…。もーミスト!弱い者いじめはだめですよ!」


 エリルもさらっとクレアを弱者認定してしまうが、エリルがクレア側についたことでミストの勢いがなくなってしまう。


「む…」


 …と、ミストはなぜか俺に目を向けてきた。…なんだよ?俺はどっち側なんだってか?俺は公平を重んじる中立的立場を貫いてやる。


「3人ともまぁここは仲良くしよう。旅は楽しくないといけないしな」


「そうですね!ユウキの言う通りです。えー…と、そう!クレア!この本には魔物について書かれているんですよね?」


「それなら、わたしが変わりに説明してあげる!」


 おっ!それはありがたい!わりと厚めの本を隅から隅まで読むのは時間かかるし、口で説明してくれた方がわかりやすそうだ。


「えっ!?いいんですか!?」


「もっちろん!でも、順を追って説明した方がわかりやすいよね!まずはこの町を出て、北方にあるモルテナ山に行こう!そこに魔物に関する秘密が隠されてるから!」


「そうなんですね!じゃあ早速出発しましょう!」


 意気込んだエリルはベンチから立ち上がる。…なるほど、山か。町が恋しくなるやつか…。


「待ってエリル」


 すると、ミストが制止をかけてきた。ん?どうしたんだ?


「どうしたんですか?」


「まだフローベル名物ストロベリートルテを食べてない」


 真面目な表情で何を言ってるんだ…と言いたいところだが、ナイスだミスト!俺も図書館に来る前にパンフレットで確認していたのに、危うく食べ損ねるところだった…。危ない危ない…。せっかく異世界まで来たんだから、この世界のおいしいものを食べないと!

 この町の郊外はいちごの名産地のようで、その甘くて良い香りのするいちごをふんだんに使用したトルテ……食べないわけにはいかない!

 ということで、俺達は町を出る前に一番有名なトルテ屋に向かうことにした。向かう途中もエリルはクレアとおしゃべりを続けている。クレアもずっと籠ってたから喋りたいことがたまってるんだろう。

 …それに対して、先頭に立つミストは寡黙に地図を見ながら歩いている。クレアにエリルを取られた…とか思ってるんかな。


「それにしても、この世界も栄えてるところは栄えてるんだなー。街並みだけ見たらあっちの世界にも実在してそうだし」


 あんまり気が進まないが、俺が代わりにミストの相手をしようじゃないか。…と思って話をしてみたのだが―――

 彼女から予想だにしなかった言葉が出てきた。


「あのクレア…、危ないから気を付けて。何か秘密を隠してる」


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