報告
「さてと、スープはこんなもんでしょう♪キノコ焼きはグランさんが戻ってきてからの方がいいですかね。それにしてもさっきのは何だったんでしょうか?雨が横に降るなんて。しかも私を避けてるみたいに通り過ぎていきましたし。なんかまた不安になってきちゃいました。」
キノはグランと別れてから一人ベースキャンプに戻って来ていた。軽く休憩を取った後、自分たちの為に朝食の準備にとりかかっていたのだ。そうこうしている内に急に雨が横から降るという類まれなる現象に立ち会ったのだ。
「まさか、左肺の化け物の仕業・・・・。ええい!考えてもしょうがないです!こういう時は気分がとってもハイになるキノコから採取したキノコウォーターを使いましょう!コレを飲めばどんな落ち込んだ時でも一瞬で最高の気分にしてくれるんですよね♪」
キノが容器の蓋を開けて一気に中身を煽ろうとした時、背後から声がかかった。
「やめとけ。ってか何て使い方してやがる。」
あきれた顔でグランは声を掛けた。
「あ!グランさん!待ってましたよ!というか失礼ですね!用法容量を守れば大丈夫なんですよ。まぁ、許容量を超えて摂取すると帰って来れなくなりますが・・・」
「ダメじゃねぇか!見た目と違って危ない奴だな。」
「そんな事よりどうでしたか?採取は?」
「ん?あぁ、バッチリだ。」
そう言うとグランは茂みから大きな荷車を引いてきた。
「な、何ですかソレ?」
「見たら分かるだろう。採取したキノコと例のキノコウォーターだ。どうした?」
キノはグランの荷物を見て固まっていた。
「あ・あ・ありえません!どうやってこの短時間に!そもそも私と一緒にいた時は素人丸出しだったじゃないですか!それが私と別れてから今ままでのこの時間で何があったんですか!そもそも私が預けた容器は10本そこらだったでしょう!何処から出したんですか!?そしてその荷車!それはもう何なんですか!」
「あー、まぁそうなるわな。何て言ったらいいのか、簡単に言うと魔法だな。」
「んなわけないでしょう!」
「やっぱり?」
「当たり前です!」
(アンタ、言い訳を考えてなかったの?)
「(流石にこれを説明できるだけの理由は思いつかなかった。)」
(グラやん、俺にいい案があるんや!ちょっと変わってや!)
「(本当か!頼んだぞフミ!)」
「ちょっと納得のいく説明をですね・・・」
「えーと、キノちゃんちょっとええか?」
「はい?」
(この馬鹿!いきなり地でいきやがった!)
「言いたい事は良くわかる。けどな、こっちも商売や。簡単に仕事のネタバラシするわけにはいかんのやで?」
「あ!?」
「気づいてくれたならいいんや、ここはお互いに詮索せん方が良いと思わんか?今後の付き合いもあるやろ?」
「そ、そうでした。確かに方法を簡単には教えるわけにもいきませんね。私としたことがつい興奮してしまいました。ここは気持ちを静めるキノコを・・・」
「アカンって!ホンマにそんなんホイホイ使こたらアカンで!ダメ!絶対!!」
「わ、わかりましたよ。」
(おい、フミ。上手くいったようだな。ボロが出る前に戻れ。)
「(もうちょっとええやん!久々なんやからもうちょっとだけ!)」
(ダメ!絶対!!)
「(しゃーないな。ほれ。)」
「ふぅ。まぁそういう事だから納得してくれ。」
「わかりました。物の検品は後にしてとりあえずご飯を用意したので一緒にどうですか?」
「おぉ!助かる!丁度腹が減ってたんだ。」
「ならこちらへどうぞ!メニューはキノコスープと焼きキノコです。」
(キノコ尽くしか。悪くないな。ただその、贅沢を言うなら肉やパンみたいな腹に溜まる物が少し欲しい所だがこんな場所だ仕方無いだろうな。)
食べ盛りのグランとしてはやはりキノコのみという食事はやはり物足りないのだろう。用意してもらって贅沢は言えないので諦めて食べる事にした。
「ふっふっふっ。」
「ん?どうしたんだ?」
「グランさん。あなたは今、この食事では物足りないと思っているんでしょう?」
「そ、そんな事はないぞ!せっかく用意してもらった食事にケチをつけるなんて事する訳が無いだろう。」
「良いんですよ。グランさんの様な働き盛りの男性がいくら朝食とはいえこの食事をみて物足りなく感じるのは仕方ない事なんです。そうでしょう?」
「・・・まぁあえて言えば。」
キノは的確にグランの心を看破した。
「で・す・が!それはこのキノコを食べてからにして下さい!」
キノは焚火で調理している一本のキノコをグランへ差し出した。そのキノコは香りこそただの焼いたキノコだが色は濃い紫色をしており、焼いたせいかキノコから水分が滴っていた。
「こ、これは?」
「まぁ、何も聞かずにとりあえず食べてみて下さいよ♪」
キノは屈託の無い笑顔でグランにソレをすすめるが、どう見ても一般人からすると一番食べてはいけない色をしている。
「(アマン!頼む!)」
「(任せて!・・・うん、大丈夫よ。多分。)」
「(多分てなんだよ!)」
「(毒は無かったわよ。後はまぁ、味的な部分は分からないわ。)」
「(くっ!食うしかないのか。)」
観念したグランは恐る恐ると紫のキノコを口にした。
「・・・!」
咀嚼したグランは驚いて目を瞠らいた。
「どうですか?」
「肉だ!このキノコは肉の味がする!それも上等なヤツだ!」
「そうでしょう!では次はこのキノコをどうぞ!」
キノは次に黄土色のキノコを差し出した。紫のキノコとは違い今度は水は滴ってないが代わりに蒸気が中から噴き出していた。グランは次は疑いもせずにソレに齧りついた。
「まさか!コイツはパンか!」
グランが食べたキノコはまるで焼き上げたばかりのパンの様な味と食感がした。香ばしい香りも相まって目をつぶれば分からないほどのものだった。
「気に入ってもらえたようですね。」
気が付けばグランは二つのキノコを完食していた。
「ふぅ、美味かった!これほどとはな。これは本当にキノコか?」
「ええ、そうですよ。最初に食べたのが腐茸で次に食べたのが黄泉茸です。」
「えらく物騒な名前だな。」
「ええ、腐茸は食べると内臓から腐るのでその名前が、黄泉茸は名前通り黄泉に行ける事からその名前が・・・」
「なっ!おい!食っちまったじゃねぇか!」
グランは慌てて口に指を突っ込み吐こうとした。
「待って下さい!大丈夫ですから!」
「だってお前!」
「ちゃんと毒抜きしてますから!」
「そうなのか⁉」
「大丈夫ですって!ほら!」
そう言うとキノはグランが食べた物と同じ物を齧った。
「これでどうですか?」
「お、おう。まぁそれなら。しかしどうやったんだ?」
「少し手間ですが、このキノコを特別配合したキノコウォーターに浸すことで毒が抜けます。配合はキノコによって違うので、気を付けて下さいね!」
「少なくとも俺はしないから大丈夫だ。」
「グランさんになら特別に配合教えますよ?」
そんな話しをしながらグラン達は今回の成果を確認し合うのだった。




