臓器林
「ステラちゃーん!また来るよぉ~。」
「うふふ、今日もありがとう。また待ってるわね。浮気しちゃダメよ?」
出来上がった男とそれを見送る女。町の西側の一角にある歓楽街、そこはいつものように男と女のやり取りがあった。
「今日も飲み過ぎたぁ。おうちは何処かな~。」
男はふらふらと覚束ない足元で西門の近くを歩いていた。
「っと、小便小便と。お?キノコ?まぁいいやな。」
おもむろに催した男は目の前のキノコの前で用を済まそうとした。
「オッサン!」
「なんだぁ?」
「こんな所でするんじゃねぇ。他所でやれ。」
「んだと!そんなモン俺の勝手だろうが!」
「私もこまりますよぉ。」
「うおっ!?キノコが動いた!飲み過ぎか?」
男は酔っていて未だよくわかっていないがそのキノコはキノだった。
「おや?こんな所に見た事無いキノコが。ちょっと採取しましょう。」
キノはおもむろに小さい鎌の様な物を取り出した。それを見た男は小さい悲鳴を上げた。
「キノ、やめとけ。それはキノコじゃない。それにソレを取ったら男は死ぬぞ?」
「死ぬんですか?キノコに寄生されてるんじゃないです?」
「いいんだよ。それにこんな所で油売ってていいのか?」
「そうでした!そろそろ出発しましょう。」
「よし、行くか。おい、おっさん!飲み過ぎだぞ。」
「あ、あぁ。」
酔った男をおいてグランとキノは二人で西の門の通用口から外へ出て行った。
「それで、そのキノコを取る場所は遠いのか?」
「ここから西へそこそこ歩いた所ですが夜が白む頃には着きますよ。」
「そうか、ならまだ時間があるな。少し聞きたい事があるんだがいいか?」
「はい。なんでしょう?」
「依頼受ける時に言ってただろう?水を混ぜても私には分かるって。それは何か方法があるのか?まぁ、教えにくいとは思うがこっちも仕事なんでね。」
「それは・・・確かに答えにくいですね。出来れば言いたく無いので、もし不正があったときにその方法は全てお話ししましょう。」
「まぁ、そうだよな。それじゃ後は着くまで採取のコツでも教えてくれないか?」
「勿論いいですよ!ですが全て伝えきれるかどうか・・・」
「簡潔に頼むわ。」
道中、獣や魔物に襲われる事も無く二人はキノコ採取の事話ながら道のりを歩いていった。
「そろそろ夜が白んできたが、もうつくのか?」
「ええ。右側に見える臓器林がそうですよ。」
「この雑木林か。」
「ちなみに私の家もここに在りますよ。ちょうど脾臓の所ですね。」
「林の秘蔵?そんなのがあるのか?」
「あるに決まってるじゃないですか!!」
「・・・悪い、何か話がかみ合ってない気がする。」
「はて?臓器林を知らない?」
「雑木林は知ってるが・・・もしかして体内の臓器か?」
「そうですよ?普通でしょう?」
「んな訳あるか!誰が言ったんだ!」
「おじいちゃんから色々聞いたから間違いないですよ!」
「まぁいい、とりあえず森の説明をしてくれ。」
「はい。まず知らない様なので説明しますね。この臓器林は五臓五腑で区分けされています。」
「五腑なのか?」
「そうですね。一般的には六腑ですがここにはありません。そもそも形のない臓器ですからね。住んでる私にもわかりません。まぁ臓器の位置は一般的な人と同じですので大丈夫でしょう。それで私たちは西側の腎臓から侵入します。そのまま小腸へ進み、そこを拠点とします。後は採取しまくりですね!ただし、左の肺に行くときは注意して下さいね。」
「左の肺に何かあるのか?」
「あそこには得体の知れない黒い影のような奴がいるんです。」
「影?」
「ええ。色んな獣や魔物が争ったけど全てダメだった。まるで霧に攻撃するみたいに手ごたえがなくて最後は取り込まれてミイラみたいになっちゃうんっです。」
「気味が悪いな。けどわかったよ。気を付けるよ。」
「後は獣や弱い魔物しかいないですが油断はしないでくださいね。」
「わかった。じゃあ始めようか。」
そういってグラン達は腎臓から侵入し小腸を目指した。
★ ★ ★ ★
「なかなか難しいな。どうも採取する際に雫が落ちるよな。」
「でしょう?だからみなさん最初は張り切って一本集めようとするんですけど、諦めて次から9,000マルスのコースにするんです♪」
東の空から太陽が顔を出し始めた頃、グランは容器の1/5ほどの雫を集めていた。比べてキノは既に1本と半分ほど集まっていた。
「コースって、まぁ、事実か。俺はそろそろ心臓へ行ってくる。キノはどうする?」
「流石に体力ありますね。私はベースキャンプで少し休憩します。」
「ならコレを渡しておく。何かあればその鈴を鳴らせ。」
「これは何です?」
「お守りだよ。鳴らせば相手を一瞬だけ攪乱出来る。その隙に逃げろよ?効果は保証するよ。それによく聞こえるんだ。この林の中くらいなら聞こえるさ。」
「錬金も出来るんですか!?」
「これしか出来ないよ。昔に婆さんから教えてもらったんだ。(ホントはアマンからだけど、言えないしな。)」
(せめて知り合いのお姉さんと言ってくれないかしら?)
(事実だろう。)
(うっさいわね!)
「護衛も仕事のうちだろ?仕事はきっちりがモットーだ。」
「ありがとうございます!気を付けて下さいね。」
「キノもな。」
グランはそう言って心臓へ向かっていった。
「私は朝食でも作って待ってますか♪」
気を良くしたキノは鼻歌を奏でながらベースキャンプへ戻って行くのだった。
キノと分かれた後グランは心臓の方へと歩いていた。
「ここら辺が心臓だろう。そろそろやるか、なぁアマン?」
(何よ?)
(正直、キノコウォーターの収集がうまい事いってないんだ。)
(知ってるわよ。見てたんだから。)
(ならこの先の話も分かるだろ?)
(私に何とかしろって事よね?)
(そうだな。)
(嫌よ。それくらい自分で何とかしなさいよ。来た!)
(せやせや!グランそれくらい自分で片づけや仕事はキッチリするんやろ?よし一向聴!)
(むッ!グランよ、有言実行せねばならんぞ?リーチ!)
(ってなわけだから自力で頑張りなさいよね。それカン!からの嶺上開花!ハネたわ!)
(なるほどな。お前等、今夜から飯は美味しい水を用意しておく。たらふく飲めるぞ。さてと、俺は引き続き仕事をしてくるとするか。)
(((ちょ!待て!)))
(グラやん!冗談やん!俺ら冗談言える仲やろ?)
(そ、そうだぞ!親しき中にも冗談ありと言うではないか!)
(真に受けないでよね!私にかかればこんな仕事朝飯前よ!)
(なら頼んでいいかい?)
(任せなさい!ちょっと身体借りるわよ。)
(わかった。)
「ふぅ、久しぶりの五感ね。」
(あまり無茶苦茶するなよな。)
「大丈夫よ。大魔法使いアマン様の実力を見せてあげるわ。まずは「サーチ」・・・」
「ここには12,638個のキノコがあるわね。そのうち雫が採取出来るのは9,247個って所ね。どうする?」
(どうするって全部出来るのか?)
「より分けが多くて面倒でけど、楽勝よ♪」
(なら頼む。)
「わかったわ。<数多の雫よ我の声に従い集え>」
アマンが唱えると周囲の木々がざわめきだし、鳴いた。すると四方八方から雨が降って来た。
(ごっついやん!コレ!何か雨が空中で止まっとる!)
(凄まじい!これほどとはっ!)
(言霊でここまで出来るのか!流石だな!)
「当たり前よ!私はアマンよ!後は仕分けの入れ物ね。<メイク>」
アマンがメイクと唱えると大きな籠とキノコウォーター用の容器それに荷台が出てきた。
「仕上げね。<我に従い各々が運命られし場所へ集え>」
すると停滞していた雨粒が勢いよく容器に収まっていく。その後もう一度木々が鳴き、今度はキノコが降ってきては籠に積み重なっていく。しかも、容器の前にはそのキノコから採取したと分かる様にキノコが置かれていた。
「よし!完了っと。これで文句ないわね、グラン?」
(正直、やり過ぎた気もするが大丈夫だ!晩飯は奮発するぜ!)
「((よっしゃー!))」
(しかし、何本集まったんだ?ざっと見ても300本はある様に見えるけど。)
「332本よ。種類のせいで本数は増えたけどまぁ、多いには問題ないでしょう?」
(しかしエグイ量やでこれ。なんリットルあるんや?)
「リットル?あぁ、フミの世界の単位ね。そうね、ざっと4.5リットルくらいかしら?」
(そう聞くと思ったより少なく感じるな。)
(とにかくだ。これで依頼は終了でいいだろう。ベースキャンプへ戻るぞ。)
グランはこれを見たキノが少々気の毒だなと思いながらその場を後にした。
いつもありがとうございます。不安定な更新で申し訳ないですが、頑張ります!




