採取クエスト
クロウに連れられたグランは一緒にギルドカウンターへ来ていた。
「さて、グラン君。君に受けて貰いたいクエストは・・・そこのキミ。D-38のクエストを持って来てくれ。」
「はい、少しお待ち下さい。」
ギルドではクエストをランク分けしている。ランクはF~SまでがありBまでは一般に受注ランクが伴うかギルドが許可すればば受注できる。但し、B以上はギルドからの指名依頼となりこちらから受ける事は出来ない。ちなみに討伐や護衛などの戦闘を伴うクエストはDランクからとなっている。
「ええと、クロウさん俺のランクはEなんだけど・・・」
「大丈夫だ。このクエストは採取クエストだ。危険は少ないよ。ただ難易度が少し難しいのと依頼者が同伴するのが条件になっているんだ。その為に護衛も必然的になる為総合的に判断した結果Dランクとなっているんだよ。」
「お待たせしました。こちらがご希望のクエストになります。」
「ありがとう。まぁ、護衛と言っても動物や魔物が出てきたら倒すなり逃げるなりするだろう?それと一緒だよ。依頼者とパーティを組むと思えばいいさ。」
「そうですか。そういう事なら。」
「よし、決まりだね。依頼者に連絡をするから少し待っていてくれ。」
「わかりました。それではまた来ますね。」
「頼むよ。そうだ、ちょうど昼前だからそこで昼食を取るといい。私にツケてくれていいから。」
「良いんですか!?」
「あぁ、多少こちらの無理も言っているからね。お礼みたいなもんさ。」
「ありがとうございます!」
グランはそう言うとアユミ亭へ戻り少し早めの昼食を取るのだった。
★ ★ ★ ★
昼過ぎの『アユミ亭』では冒険者や一般客などでごったがえしていた。
「ご馳走さん!やっぱここの飯は美味いな!」
グランが昼食を終えるとカウンターから威勢のいい声が飛んできた。
「当たり前さ!誰が作ってると思ってるんだい!」
「ホントにミリアの母さんの料理は美味いよな!」
「そうね。」
そこには食器を下げに来たミリアが不機嫌な顔をして愛想無く答えた。
「なんだよ。まだ機嫌治ってないのかよ。」
「別に。グランが何をしてようが関係ないですから!フン!」
ミリアはそういうと食器を持って調理場へ行ってしまった。
「・・・滅茶苦茶機嫌悪いじゃないか。」
「これは相当の埋め合わせがいるんちゃう?」
「あなた、女心を全く分かってないのね。」
グランの頭の中で住人の声が響いた。
「全く、大変そうだよ。どうやって機嫌をとるかな。」
グランがミリアの事で住人と会話しているとクロウから声がかかった。
「グラン君、依頼者が来られたので来てくれ。第三応接室で待っているよ。」
「あいよ!また来るんだよ!」
グランはアラミに礼を言うと応接室へ向かっていった。
「ここが第三応接室だな。」
グランはドアをノックすると『どうぞ』と返事が来たので中へ入った。
「失礼します。」
グランは部屋に入るとそこには大きなキノコの置物があるだけだった。
「へ?キノコ?依頼者は?」
グランは中を見回すが人影がない。大きなキノコがあるだけだった。
「ここですよ!」
「んん?」
グランが声のする方を見ると置物が動いた。
「ここですってば!」
よく見るとキノコの様な恰好をした少女がそこにいた。
「ええと、あんたが依頼者でいいのかな?」
「はい!私が依頼者のキノ・パレーヌです。キノと呼んで下さい。」
「キノさんね。俺はこの依頼を受けたグラン・ネードだ。グランと呼んでくれ。ところで・・・」
「あ、コレですよね。」
キノは自らの頭のキノコを指差した。
「色々聞きたい事はあるがまぁそうだな。」
「よく聞かれるんですよね。」
「(そりゃそんな恰好してりゃ聞かれるだろうよ。)」
キノは背は子供ぐらいだろうか。アイボリー色のポンチョにオレンジ色のキノコの傘の形をした帽子をかぶっていた。見た目はデカいキノコそのものである。傘が大きく目元が見えない。本人も見えているのだろうか疑問である。
「このキノコはシェードキノコって言いましてそれを防腐処理した後に・・・」
(そこちゃうわ!)
思わずフミが中でツッコむ。
「って!ちょっと待て。俺が聞きたいのはソレの詳細じゃなくて何でそんな恰好してるのかって事なんだがな。」
「恰好?普段着兼作業着ですがどうしました?」
「いや、ならいいんだ。(よく誰に聞かれてんだよ!)」
「じゃあ、引き続き加工方法の・・・」
「それはまた今度でいいから先に仕事の話を進めないか?」
「あ!そうでした!私ってばキノコの事になるとつい話し込んじゃって。それではお仕事の説明をしますね。まず今回の依頼はキノコウォーターの採取ですが、キノコウォーターはご存知ですか?」
「いいや、聞いたことがないな。」
「キノコウォーターとはキノコの成分が溶け込んだ朝露の事なんです。キノコの傘の裏側のヒダがあるでしょう?そこについている雫がキノコウォーターなんです。」
「なるほどな、俺はその雫を採取すればいいんだな。」
「ただし、キノコは種類が多いですよ?今回は指定はないのであるだけですが、もしも!もしもですよ!艶のある鈍色のキノコを見つけたら決して触れずにすぐに私に報告して下さい!その時を何よりも優先します!」
「お、おぅ。」
あまりの勢いにグランは少し引いていた。
「すいません、また興奮してしまいましたね。後はキノコウォーターを混ぜずに採取する簡単なお仕事です。朝露が残る時間なので精々昼までですがよろしくお願いしますね。」
「あぁ、わかった。それで報酬はどうなっている?」
「それはですね、2パターンあるので選んで貰えますか?」
「選べるのか?」
「えぇ!まず一つは日の出前から正午まで働いて貰って9,000マルス。もう一つが取れた分量で変わります。こちらはこの容器に8割まで満たせて貰えれば一本17,000マルスで引き取りますよ。あ!ちなみに採取した後のキノコはそちらで好きにしてもらってかまいませんよ。」
「(ふむ、キノって言ったか?思ったよりこいつやり手だな。)」
キノの報酬条件にグランが暫し考える。
「一応確認するが、混ざり物の判断はどうしてるんだ?」
「それはですねぇ、現物があるのでお見せしますね。」
そう言うとキノは小さいキノコから2本の容器を取り出した。
「見てて下さいね。これは両方とも違う種類のキノコウォーターなんですが、これを混ぜると・・・このように濁りますもしくは色が付きます。純粋なキノコウォーターはどんなキノコから採れても無色透明なんですよ。勿論、水で薄めるとその限りではありませんが私には分かりますのでその場合は違約金を払ってもらうか、人体じ・・・研究の手伝いをして貰います!さて、これで問題なければサインしてさい。」
満面のえみでキノは契約書をこちらに差し出してきた。
(おいおい!グラン!あのキノコ今絶対人体実験って言おうとしたで!)
(き、気のせいだろう!あんな幼子がそんな事をするわけがあるまい!)
(あんた達ねぇ、そこの契約書の違約金の額を見てみなさい。)
((!!!いいっ!!!))
(違約金10,000,000マルス!?)
(どうやらあの子、違約金より実験体の方が欲しいようね。見た目とは裏腹に生粋の探究者ね。見直したわ。)
(マッドサイエンティストめ!!探究者とか魔女ってこんなんばっかりなんか!?なぁ、グラン!ちょっと考え直したほうがええんちゃうか?)
(俺は受けようと思ってるんだよな。)
(何でや!?)
(確かにちょっと怖い内容ではあるが、内容が良い。何よりキノって奴は頭がいい。そんな奴が2度と引き受けて貰えない様な依頼を出すか?)
(それは分かっとるけどもやな。・・・まぁ最終的にはグランが決めたらええわ。ちなみにどっちで受けるんや?)
(そんなの受けに決まってるだろ。)
グランはニヤリとフミを見返した。
(やっぱりな。常用やなくて受けで行くんか。)
(普通、いや俺一人なら前者だがこっちは都合4人もいるんだ。何とかするんだろう?飯の為に。)
(当たり前よ!ささっとサインしなさいよ!)
(決まりだな!よし!)
「わかりました。なら俺は後者の条件で仕事を引き受けます。」
「本当ですか!ありがとうございます!」
「グラン君、いいのかね?その条件はかなりキツイぞ?」
「大丈夫ですよ。」
「なら構わんが。頑張ってくれよ。・・・ンンッ!それではこれでクエストの受注を認めます。質問が無ければ以上で解散です。」
「それじゃ、グランさん!明日の夜が白み始める前に西門前に集合でいいですか?」
「大丈夫だ。明日はよろしく頼む。」
「はい!ではまた明日!」
そう言いながら小さいキノコは何処かご機嫌な様子で人ごみに消えていった。
更新が大変遅れて申し訳ありません。度重なる激務とインフルエンザに感染してしまいこの体たらくです。
なるべくペースをあげていきますのでどうぞお付き合い下さい。




