冒険者ギルド
「おぉ!これが冒険者ギルドか!」
目の前にある木造二階建ての建物を見てフミが感嘆の声を上げる。
「そんなに感動する事か?」
「当たり前やろ!俺の世界には無かったんや!しかも物語だけの世界なんやで!?それが目の前にあるんや興奮もするやろ!」
「そんなもんかね?元からある俺としては別段感動することはないな。むしろ面倒だな。」
「面倒なのか?何かあるのか?」
「まぁな、ここではよく・・・」
<ガシャン!>
何かが壊れた様な音と共にギルドの扉を破って椅子が飛び出てきた。
「な、なんや!?」
「はぁ、またかよ。勘弁してくれよな。」
「またって、前から何かあったの?」
「さっきシゲさんに言おうとしたが冒険者ギルドは喧嘩が多いんだ。」
「コレや!こういうのを待っとったんや!アレやろ?新人いびりや喧嘩とか何でか出てくる輩みたいなベテランがおるんやろ!?」
興奮したフミが喜々として語っている。その視線の先で先ほどの壊れた扉から男が二人出て来た。
「この野郎!調子に乗りやがって!」
「ぶっ殺す!」
二人はいきり立って出てきてお互いに睨み合っている。片方は如何にもといった大男で背丈は190センチくらいはあるだろうか、がっちりとした体形は日頃から鍛えられているのだろう。片やもう一人の男はグランと同じ様な体型をしていたが人間ではなかった。
「アレは狼男か?」
「いや、犬男だな。」
「獣人と言うやつだな。しかし、あの大男はよく分からんがイヌオの方は剣士だな。」
「イヌオって・・・まぁやっぱそう思うか?」
「何でわかるんや?」
フミは何故か見抜けた二人に聞いた。
「何でって間合いの取り方だよ。」
「然り。イヌオは間合いが殴り合いにしては遠いのだ。大男は殴り合いの間合いなのだが重心が低すぎる。あれでは機敏に動けまい。だからわからんのだ。まるで受けるのを前提とした構えなのだ。」
「二人ともすごいやん!特にグランはよう成長したなぁ。これが修行の成果やな!」
「何であんたはわからないのよ。一緒に修行したでしょ?」
横から突き刺すような言葉ををアマンがフミにした。
「お、俺は技術屋なんだよ!だからそこまではちょっと・・・アマンはわかったんか?」
「私は・・・超遠距離移動砲台だからいいのよ!」
「見てみいや、結局分からんねやろ!」
二人の言い合いを他所に二人が動いた。イヌオが懸命に攻撃を仕掛けるが大男が攻撃を受け、捌いてから攻撃している。大男には攻撃は効いてる様子は無い。しかしイヌオは確実に消耗していた。
「あの大男は前衛の盾役だろう。だから受けてからの攻撃…後の先に特化してるんだ。まぁ、お互い武器もないから怪我で済むだろう。さぁ、ほっといてギルドに入ろう。」
「そうよ、早く稼がないとごはんにありつけないわよ!」
ちょうどその時、二人の決着が終わりを迎えようとしていた。
「フン、実力も無い癖にでしゃばるからこういう目にあうんだ。大人しくしてろや!」
「こ、このデカブツが!」
「給仕のねぇちゃんの尻を触ったぐらいで何騒いでやがる。お前の女か?だとしたら弱い男と付き合っているあの女がかわいそうだな!俺が強い男がどんなモンかやるよ!」
どうやら二人は店の給仕の女の子の事で喧嘩しているらしい。
「どこの世界も弱肉強食よなぁ。」
「ったく、また扉修繕の仕事が来るな。もう何回目だよ。」
グランはため息をつきながら扉の無い入口をくぐろうとしたその時。
「ふざけんな!お前!んミんリ《・》アちゃんに何かしたら許さないぞ!」
「(・・・ミリア?)」
「あの給仕、ミリアって言うのか。安心しろ俺が相手してやるよ。だからお前はもう黙ってろ!」
大男がイヌオに止めを刺すべく殴りかかる。しかし、大男が止めを刺す事が出来なかった。
「おい、そこの獣人。お前、今ミリアって言ったよな?」
グランが大男の拳を正面から受け止めていた。大男は受け止められた事に衝撃を受けていた。
「なっ!」
「あ、あぁ。そいつがミリアちゃんの尻を触ったんだ。それを見てて腹がたって・・・」
「そうか。」
「おい!お前もそこの獣人のようにされたいのか!」
大男は苛立っておりグランに食ってかかったがそこにはブチ切れたグランがいた。
「お前は・・・ぶっ殺す!」
★ ★ ★ ★
「で、これはどういう事なのか説明して頂戴。」
ギルド併設の酒場『アユミ亭』のカウンターでグランはミリアから問い詰められていた。
「いや、あいつがミリアにちょっかいかけたって聞いたからつい。」
グランはバツが悪そうな顔でミリアと向き合っていボソッと呟いた。
「それは聞いたわよ。確かに私はあの人に触られたけど・・・ちょっとやりすぎじゃない?」
「いや、あそこまであいつが弱いと思わなくて。」
「ついでにギルドの壁も思ったより脆かったの?」
ミリアの視線の先には大男が壊したの入口の隣に入口より大きな入口が出来ていた。
「・・・すまない。」
「まぁいいじゃないの!顔を上げなよグラン!」
うつむいたグランに声を掛けてきたのは小さな女性だった。
「ちょっとお母さん!」
ミリアが母と呼んだのはこの『アユミ亭』の店主でもあるアラミ・ピーノだった。彼女は小さい見た目に似合わず豪気な人物だ。
「なんだい。アンタもスッキリしただろ?」
彼女はミリアの母にして
「それはそうだけど・・・でも壁が。」
「あぁ、それは大丈夫だ。」
酒場の横のギルドカウンターの奥から眼鏡をかけた白髪交じりの男がこちらへ歩いてきた。
「お父さん。」
今度はミリアの父がやってきた。彼はクロウ・ピーノ。ギルドの事務に長年勤めギルド長からの信頼も厚い真面目な人物だ。主に外部とのやり取りを仕切っている。
「さっきルディーさんが来られてね。グラン君が直すから材料費だけでいいと言ってくれたよ。勿論扉もね。」
「何てこった。タダ働きかよ。」
「その代わり君にはお咎め無しだそうだ。」
「はははっ!よかったねぇ!ミリアの礼もあるんだ。これでもお食べ!」
アラミはグランに桃色のトマトのような果実を差し出した。
「アユの実か。これは好物だ、ありがとう。」
「これを嫌いな奴はいないだろうさ。なんたってこの店の名前にしたほどだからね。みんな大好きアユミ亭ってね!」
「ははは」
グランから乾いた笑いが漏れ出した。
「ところで、グランは何しにギルドに来たの?」
「あぁ、それはミリアの両親に復帰の顔見せもあったんだけど依頼を受けに来たんだ。」
「どうして!?何かあったの?」
「(そりゃ普段組合の仕事があるのに休みにギルドって普通は思うよな。どうしよう。ミリアにこいつらの事は言えないし。)」
「(グラン!何とか誤魔化すんや!)」
「(何か上手い事言いなさいよ!)」
「(んな事言ったてどうするんだよ!)」
幸いグラン達は魂で会話しているので時間はさほど過ぎない。修行の時ように外の時間はとてつもなくゆっくり流れるのだ。
「(そんなもの金が無いと言えばいいと思うのだが、理由が必要なら適当に欲しいものがあるとでも言えばいいだろう?)」
「(・・・!それだ!シゲさん!良い案が浮かんだよ!)」
「(うむ?よくわからぬが解決したのか?)」
「(まぁ、見てなって。)」
「クロウさんちょっと。」
「何かね?」
「・・・・・・」
グランは小声でクロウに話だした。
「ふむ、それは確かにここでは言えないな。」
「何よ!?グラン!お父さんに何話してるのよ!」
「まぁ待ちなさい。ミリアこの件は私が預かる。だからグラン君には何も聞いてはいけないよ。」
「何なのよ!もう!」
「悪いな、ミリア。そういう事だから!」
「なに、悪い様にはならないから安心しなさい。ところでグラン君そういう事なら入用だろう?」
「そうですね。割のいい依頼ありますか?」
「丁度いいのがあるんだがどうだろう?ただし、少し面倒なんだがね。」
クロウはそ言うとグランを引きつれてギルドカウンターへと向かっていった。
お待たせしました。いつも見ていただいてありがとうございます。今年もあと1か月がんばります!




