組合とギルド
大変遅くなりました。仕事が落ち着いてきたので更新ペースを上げます。よろしくお願いします。
冬が終り春を迎えた頃、小さな明りが灯った一室で一人額を抑えうなだれている男がいた。
「これは、本格的にマズい。」
男は一人でなにやらぶつぶつと話していた。
「どうしたの?今日も順調だったじゃない。」
「いや、まぁそうなんだけど。」
「俺達に隠し事をしても仕方無いだろう。」
「・・・」
最近隣人から五月蠅いと注意され、謝る度に原因が独り言と知ると皆気の毒そうな顔をして『やっぱり事故の影響が』や『悪い、気が立ってたんだ』『私が無神経だったわね』等と言って退散して行く。そう、グランの事である。隣人は冒険者家業が多く、すぐに住人が入れ替わるのだが、何故か優しい人が多く皆距離を空けていった。ただ、本人にとっては独り言じゃないので毎度落ち込むのだが仕方ないのだろう。
「金やな。金がなくなったんやろ、グラン?」
「あぁ、もう金がない。明日の晩飯で最後だ。」
「ちょっと!何サラッと言ってるのよ!」
「そうだぞ!お前も少しは考えて生活しなくてはな。」
「お前らのせいだろうが!腹も空かないくせにあれもこれも観光気分で浪費しやがって!少しは自分の胸に手を当てて考えてみろ!」
グランは復帰してからの1週間知らない世界に興味深々と言った様子で夕飯時にはあれもこれもと言った具合でグランにたかっていた。
「それは仕方ないやろ。俺らはグランと感覚を共有しとんねんからお前を通してやないと飯の味がわからんのやで?」
「そうよ!10数年ぶりに食事したのが嬉しいのよ?大目に見てくれてもいいじゃない!」
フミとアマンがグランの苦言に反論する。
「そうか、なら言わせてもらう!まず、フミ!お前は毎回飯の度に大酒飲んでるよな!軽く見ても一升は飲み過ぎだろ!次にアマン!お前は甘いものがあればすぐに飛びつく!駄目だとは言わないが何故全甘味を制覇するんだ!それでなくても甘味は割高なんだ!」
バツが悪そうに二人は明後日の方向を向く。精神世界なので方向があるのかは定かでなないが。
「二人とも、うかれるのは分かるが少し自重が必要だな。」
重久自分は関係ないと言った様子で二人に小言を言うがグランは鋭い目つきで重久を睨む。
「最後にシゲさん!」
「む?俺は二人ほど贅沢した覚えはないぞ?」
「確かに、シゲさんは酒もほとんど飲まないし、甘いものは好きじゃない。」
「そうだろう。俺に贅沢は必要ないのだ。修行中だからな。」
「シゲさん、あんた生前はどうやって生きていたんだ!?」
「どうと言われてもな。普通だぞ?」
「普通は毎回5人前も食わないんだよ!」
重久は見た目によらず大食漢だった。
「と言うか実質一人で食ってるのに何処に入ってるのか俺は不思議で仕方がないんだけどな。」
食事の度に人格を交代しているが、実際に食べているのはグラン一人なのだ。流石に自分の身体が心配だった。何せ食べ終わった時には程よい腹心地なので余計に不思議だった。
「あら?それなら空間魔法で胃を拡張して身体に徐々に還元してるわよ。だからあなたは当分飲まず食わずでも大丈夫なはずよ。」
「・・・なんて技術の無駄遣いをしてるんだよ。空間魔法なんてこの世界の魔法使いが見たら卒倒するぞ?とにかくだ!毎回夕食の度に6人前と酒1升に店の甘味を制覇してみろ!あっと言う間に金が無くなるぞ!ちなみに今夜の夕食代は12,800マルスだ!お前ら俺の収入を知ってるのか?」
「ちなみになんぼなん?」
「月に138,000マルスだ!宿代が週に4,900マルス、組合の会費は年払いしてるが月払いにしても2,500マルス程度だ!今までは多少贅沢しても月に100,000マルスもあれば十分だったんだよ!」
グランの住むこの世界では町に住む平民の一般月収が約220,000マルスだ。辺境の町や農民はこの限りではない。グランは組合に所属している為に色々保証がある。現に怪我をした時に面倒を見てもらったのだ。
「グラン、暗算が得意になったな。」
さわやかな笑顔でサムズアップするフミに苛立ちを覚える。
「俺より得意なフミならわかるだろう。家計がヤバいんだ!」
「給金はいつだ?」
「あと11日後だ。うちは月末払いなんだよ。」
「持たないわね。貯金とか無いの?」
「お前らが文字通り食いつぶしただろうが。あれから何週間経ったと思っているんだ。」
「どうにかならへんの?バイトとかないん?」
「バイト・・・副業か。明日は休日だから出来ない事はないが、ギルドだな。」
「なぁ、組合とギルドって何が違うん?」
フミがグランへ尋ねる。体感時間で18年一緒にはいたがほとんどが修行と学問だった為にお互いの世界の内容はあまり知られてない。技術や技を優先した為だ。だからグランはフミたちへ説明する必要があった。
「ギルドと組合は基本的には一緒だ。呼び方が違うだけだよ。ギルドは冒険者ギルドの事で組合は建築ギルドの事だ。他にもギルドはあるが、主にこの二つは便宜上ギルドと組合とで呼び分けているんだ。後は何のギルドかって事だな。」
「ほー、じゃあ何でギルドでバイトが出来るんや?」
「報酬の受け渡しの違いだよ。組合は作業員の内は働いた日数を纏めて月末に渡すんだ。ギルドは依頼内容にもよるけど終わって報告をしたら報酬を貰えるんだよ。」
「なるほどな。ちょっと違うけど受けか常用の違いって所やな。受けなら終わった時に払うのも納得出来るしな。」
「そう言うことだ。」
「よくわからんな。」
「そうね。でもとりあえずギルドに行けばいいのね?」
アマンと重久はよくわかってないようだが。あまり関心が無いのだろう。
「よし、じゃあ明日の飯の為にギルドへ行こうや!」
「うむ、日々をしのぐ為には働かなくてはな!武士も食わねど高楊枝とも言うが、限界はあるのだしな。」
「まだ味遭わぬ甘味の為に!」
「本当にこいつらには食欲しかないのかよ。」
こうしてグランは足取り重く冒険者ギルドへ向かうのだった。
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