第17話「お出かけ、1」
俺もこれと言って特別でもないが、灰色のズボンに黒色のシャツをインして、ネックレス何てつけてみたり少しおしゃれをしてみた。
でも小鈴は白のワンピースだけのくせして俺よりもおしゃれに見える。
スタイルだろうか。
いやでもアクセサリーも付けている。
俺との違いを見つけようとしても、まあ結局は顔を見てしまう。
「お前……なんでそんな可愛いの?」
「え?」
「なんかうざい」
「ええ……」
小鈴は口角を上げながら戸惑いの声を上げる。
「その顔が嫌だ」
「え」
「その声も嫌だ」
「そんな」
「その髪も嫌だな」
「ええ」
「性格も」
「え……」
「てか、全部」
「えええ……」
何も考えずに小鈴の柔らかい両頬に手を添えてしまった。
すべすべした白い肌。
産毛一つとない。
綺麗な瞳だな……。
まるで日本人とは思えない。
海が広がっているようなターコイズブルーの瞳。
「小鈴ってさ、ハーフ?」
「そうだよ」
「え、ああ、そうなの?」
「うん」
そのままずっと頬を触っていると、小鈴は段々と目を伏せて顔を赤く染め始めた。
手の甲で髪を撫でると、薄っすらと白色のような黄色のような毛が見えた。
「地毛は金髪?」
「うん。でも……そんなに見つめないでほしい、かも」
「あ、お、おう」
なんだか気まずい空気の中、俺たちは家を出た。
なんで頬なんて触ったんだろう。
分からないけど、無性に触りたくなった。
小鈴は触りたくなる薬を撒いていたりするんだろうか。
「お昼何食べに行く?」
「モック」
「ジャンキーだな」
「うん」
どうやら小鈴には甘える癖があるらしい。
今もまた俺の手を掴んで、子供みたいな笑顔を向けてくる。
からかってこないのは不思議だけど、これはこれでちょっとかわいい。
前なら「照れてるんですか?」なんて言ってきそうだ。
「食べ終わったら何買いに行くの?」
何か不満を感じたのか、小鈴は顔をそむけた。
「ごめん。なんか言った?」
「うん」
「ごめん」
「私は、渉流と一緒にお出かけしたい」
「うん」
「そこに意味なんてないよ」
つまり何を言いたいのかよく分からない。
「えーっと、それはつまり、どういうこと?」
「だから、特定の物を買うために出かけたいんじゃない」
「買いたいものは」
「今はないよ」
「え?」
疑問符が頭を埋め尽くしていく。
買いたいものがないのに出かける理由はなんなのか。
んー……分からん。
「渉流……はさ」
「うん」
「私としたいこと、ない?」
「んー……そうだなー」
改めて聞かれるとパッと頭に浮かぶものはない。
そもそも俺はインドア派だし、小鈴が家に遊びに来ているのが当たり前で、何かをしたいとは思ったことがない。
「一緒に居られたら、それでいいかな」
そう言葉を零すと、小鈴は小難しい表情を浮かべた。
「そこは一緒なのになぁー」
何かまだ引っかかるのだろう。
不満そうな顔も見せてくる。
「私も一緒に居られるだけで幸せだよ」
「うん」
「でも、色んな渉流が見てみたい。だから、訳もなくどこかに遊びに行きたいし、必要最低限で済ませたくない」
「あー……」
なんとなく分かってきた気がする。
とはいっても、まだ一緒に居たいということしか理解は出来ないが。
そんなこんなで俺たちはモックに到着していた。
「何頼む?」
「チーズバーガーとポテト」
「ジャンキーだな」
「へへ」
俺は……侍モックでいいか。
数分もしたら頼んだ商品が届いた。
そして、特に今まで通りの食事。
たまに食べさせてこようとしてくるけど、慣れたもんだ。
「はい、渉流。あーん」
いや、前言撤回しよう。
流石に人目に付く場所でやるのは恥ずかしいもんだ。
また若干からかってくる小鈴との食事を終え、俺たちはデパートを彷徨った。
季節に合わせた洒落乙なコーデが道を着飾る。
行きかう人々はみなおしゃれだし、隣の誰かさんもおしゃれ。
気が滅入るとはこのことだ。
「渉流、あれ見に行こ」
「ん」
小鈴が指さしたのは人をダメにするクッションをでかでかと置いている店だった。
「座りたいんだろ」
「え、そんなことないですよ」
「嘘だな」
「いやいや」
「今、敬語使ってたろ」
小鈴は案外分かりやすい。
よく顔に出る人は聞くが、言葉に出る人もいるみたいで、それが小鈴だ。
「ちょっと座ってみる?」
小鈴は静かにコクコクと頷いた。
ほんと可愛いやつ。
子供のように腕を水平に広げて駆けだした小鈴は、勢いそのまま人をダメにするクッションにダイブした。
「おい、迷惑だろ」
「大丈夫ですよ」
すぐそばにいた女性の店員がこちらに近寄ってきた。
「デートですか?」
「……」
ちゃんとカップルに見えてるんだな。
「はい、そうです」
「えー、可愛い彼女さんですね」
店員は小鈴をじっと見て横顔からでも視認できるほど、にへらとした顔で笑った。
「猫ですけどね」
「え、ね、猫?」
女性店員の小鈴に向けた顔を見ていると心がモヤっとした。
「あ、ちなみに俺は飼い主なんで」
「ああ……そう、なんですねー……」
女性店員は顔を引きつらせて、苦笑いを浮かべた。
これで俺たちの領域には触れられまい。
……たぶん。
「小鈴、味わったか」
「まだー」
「まあ、もう行くぞ」
「え、早いよー」
駄々をこねる小鈴を起こして、お店を後にした。
自分で言っておきながら恥ずかしくなった訳ではない。
「まだまだ回りましょうね」
小鈴はそう笑顔で俺を見た。
「もちろん」
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