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もし、社畜が異世界の第三王子に転生したら【連載版】  作者: りな


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私の手元には、二つの書簡があった。

一つは、教会からのもの。

そこには、私の領地を独立した王国として認め、私をその国王として承認する用意があることが記されていた。

そして、もう一つ。

小国の国王から届いた書簡だった。

そこには、私の領地が本国から独立することを認める、と明確に記されている。

二通の書簡を、私は机の上に並べた。

これで、少なくとも私が勝手に王を名乗るわけではない。

教会が認める。

そして、これまで私たちを治めていた国王も、独立を認めた。

あとは、それを正式な形にするだけだった。

私はマルクを呼んだ。

「教会へ書簡を送る」

「正式な要請、ということですね」

「ああ」

私は頷いた。

「教会から承認をいただいた以上、正式に戴冠式を執り行ってほしいと申し出る」

マルクは書記官を呼び、すぐに書簡の準備を始めた。

文面は慎重に整えた。

教会から受け取った承認への謝意。

小国の国王から独立を認められたこと。

そして、正式に王国として成立し、私がその国王として戴冠するための儀式を執り行ってほしいという願い。

最後には、こう記した。

――我が領地が、神の御前において一つの王国として認められることを願う。

書き上げた書簡を確認すると、私は封蝋を押した。

「これを大司教へ届けてくれ」

「承知しました」

密使が書簡を携えて出ていく。

それからの日々は、驚くほど早く過ぎていった。

教会との間で、戴冠式の日取りが決められた。

そして、式の場所も決まった。

まだ完成には程遠い、建設中の大聖堂。

それでも、すでに中央の礼拝堂と祭壇は形を成している。

私は、そこで式を行うことを望んだ。

エリシア王女がこの国が生まれる瞬間を、この地に建てられた大聖堂に刻みたいと言ったからだ。

周辺の諸侯や近隣諸国にも、正式な通知が送られた。

私はその日に戴冠し、この領地が新たな王国として成立する。

その事実を各国へ知らせ、可能であれば、その場に立ち会うよう求めた。

誰が来るかはわからない。

だが、見届ける者が多ければ多いほど、この国の成立を否定することは難しくなる。

同時に、王冠や王笏も用意された。

豪華なものにする必要はない。

この国には、まだ贅沢をする余裕などない。

それでも、王冠だけは必要だった。

王として認められるために。

そして、この国が確かに存在するのだと、人々の目に示すために。

教会からは、戴冠式で用いる聖油についての指示も届いた。

儀式の進行も、司祭たちによって細かく決められていく。

宣誓、聖油による祝福、王冠の授与、王笏の授与。

そして、正式な即位の宣言。

一つ一つが、私を「第三王子」から「国王」へと変えていく。

そうして、準備は整っていった。


かつては、王になることなど望んでいなかった。それが今では、自分の領地が一つの国になる。

そして私は、その国の王になる。

窓の外を見る。

領都では、戴冠式を前にして人々が慌ただしく動いていた。

新しい国の旗が掲げられ、建設途中の大聖堂にも式典のための装飾が施されている。

私は戴冠式を、目の前にしていた。



マルク視点

朝、建設中の大聖堂には、いつもの工事の音がなかった。

床に残っていた石粉や木屑は綺麗に掃き清められ、むき出しの石壁には、色鮮やかなタペストリーが掛けられている。

それでも、天井を見上げれば、巨大な木製の足場と建設途中の梁が目に入った。

マルクは、しばらくその天井を見上げていた。

足場の隙間から差し込む朝の光。

完成したばかりのステンドグラスを通り抜けた光が、石床へ淡い色を落としている。

「……まだ、こんなに残っているのか」

思わず呟く。

だが、不思議と悪くは思わなかった。

この大聖堂も、これから完成していく。

そして今日、この場所で新しい国が始まる。

「マルク殿」

声を掛けられ、振り返る。

「そろそろ、お時間です」

「……ああ」

マルクは、最後にもう一度だけ天井を見上げた。

やがて、聖堂内へ人々が集まり始めた。

教会の高位聖職者、周辺の諸侯、近隣から訪れた使者。

そして、この地で暮らす領民たち。

やがて、鐘が鳴った。

厳かな音が、大聖堂の中へ響き渡る。

第三王子が姿を現した。

誰もが静かに頭を垂れる。

祭壇の前まで進むと、大司教が問いかけた。

「汝は、この国を治める者として、神の御前に誓うか」

「誓います」

第三王子は、迷いなく答えた。

民を守ること、法を守ること、教会を尊重すること。

そして、この地に建つ大聖堂を完成させ、その後も必要な支援を続けること。

一つ一つの誓約が、静かな聖堂に響いた。

やがて聖油が額へ施され、大司教が祈りを捧げる。

そして、王冠が運ばれてきた。

大司教の手によって、それが第三王子の頭上へ置かれる。

「ここに、神の御前において、レオンハルトをこの国の王と認める」

その瞬間、聖堂内に鐘の音が響き渡った。

「国王陛下、万歳!」

誰かが叫ぶ。

続いて、あちこちから声が上がった。

「国王陛下、万歳!」

マルクも深く頭を下げた。

顔を上げると、王冠を戴き、王笏を手にした若き国王が見えた。

マルクは、ふと天井を見上げた。

未完成の梁、組まれた足場、まだ空白の残る壁。

それでも、そこには確かな未来があった。

大聖堂も、この国も。

これから少しずつ、形を成していくのだろう。

長い年月、彼の傍で働いてきた。

苦しい時もあった。

先の見えない時もあった。

だからこそ、今日この瞬間を迎えられたことが、たまらなく嬉しかった。


マルクは誰にも気づかれないよう、静かに目元を拭った。

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― 新着の感想 ―
推し(マルクさん)が泣いている…。 うんうん、、、隣から肩抱いてポンポンしてあげたい。爽やかに。 妄想上、自分は男の同僚で、マルクさんを支えるサブ的なモブです。下心は皆無。
領地だけの王になることになってからエリシアの反応が描写されてないけど、今も「これほどの方がなぜ国全体の王にならなかったのか、母上がせっかく神託を受けたのに」とか思ってるのかな
レオンハルト国王陛下、万歳! エリシア王妃‥‥、万歳! あれ? 王妃って、 陛下だっけ? 殿下だっけ? いつもわからん。
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