↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もし、社畜が異世界の第三王子に転生したら【連載版】  作者: りな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

205/244

205

大国視点

小国で第二王子の反乱が鎮圧され、国王が復権したとの報せが届くと、大国の王宮では急ぎ王国評議会が招集された。

重臣たちが円卓を囲み、国王が口を開く。

「諸君、この一件をどう見る」

外務卿が地図を広げる。

「第二王子は失脚し、国王は復位しました。しかし、実際に反乱を鎮めたのは第三王子です」

財務長官も続けた。

「阿片事業も、大聖堂建設も、難民救済も、すべて第三王子の領地が中心となっています。現在、小国の歳入を最も生み出しているのも、あの領地でしょう」

商務顧問が静かに言う。

「我が国が最も懸念すべきは、阿片貿易です」

部屋が静まり返る。

「今は順調です。しかし、国王と第一王子が政争を恐れ、第三王子を排除しようとすればどうなるでしょう」

誰も答えない。

「阿片事業は止まり、難民救済も止まるでしょう。小国は再び混乱し、我が国との交易も途絶えます」

軍務卿が腕を組む。

「内乱が再燃すれば、国境にも兵を張り付けねばならぬ」

財務長官は深く頷いた。

「莫大な利益を生む阿片も失われます。我が国にとって損失は計り知れません」

しばらく沈黙が続いた。

やがて老宰相が静かに口を開く。

「つまり、問題は一つです」

全員の視線が集まる。

「現在の国王は玉座に座っております。しかし、小国を支えているのは誰でしょうか」

誰も反論しなかった。

老宰相は続ける。

「国を最も安定して治められる者を王位に就ける。それこそが、我が国にとっても、小国にとっても最善でしょう」

国王はゆっくりと頷く。

「……第三王子か」

「はい」

老宰相は迷いなく答えた。

「レオンハルト殿下は、すでにエリシア王女との婚姻を結ばれております」

一人の評議員が静かに口を開いた。

「隣国との同盟は、もはや殿下個人ではなく王家そのものに結ばれたものです。王女殿下を迎えた以上、殿下が国王となられるのが最も自然でしょう」

「異論はありません」

「私も同意します」

「レオンハルト殿下こそ、小国の王となるべき御方です」

異論を唱える者はいなかった。

こうして王国評議会は満場一致で、第三王子を国王へ擁立する方針を決定した。



教皇庁に、一人の外交官が姿を現した。

大国の紋章が刻まれた使節の証を携えたその男は、表向きには教会への献金と、難民救済について協議するために訪れたことになっている。

教皇庁には、各国の大使や聖職者が日々出入りしている。

そのため、大国の外交官が訪れたとしても、不審に思う者はいなかった。

案内された先は、教皇庁の奥深くにある一室だった。

重厚な扉が閉じられ、部屋には教皇の信任厚い枢機卿だけが待っていた。

外交官は静かに一礼する。

「お招きいただき、感謝いたします。」

枢機卿も穏やかに頷いた。

「冷害の被害は各国へ広がっています。難民も増え続けていますから」

「ええ。しかし、一つだけ例外があります。第三王子の領地です」

外交官は静かに言った。

枢機卿は黙って耳を傾ける。

「難民の受け入れは順調に進み、大聖堂の建設も予定どおり進んでおります。巡礼者や商人も集まり、領地には活気があります」

それは教会も把握している事実だった。

飢えた民へ施しを行い、修道士が治療に当たり、大聖堂の建設は多くの職を生み出していた。

絶望に包まれた各国とは対照的に、その領地だけは未来へ向かって歩み始めていた。

外交官は続ける。

「しかも、その資金の大半は第三王子自身が生み出しております」

阿片の加工技術。

医薬としても価値を持ち、莫大な利益を生む国家最高機密。

その利益が、難民救済と大聖堂建設を支えていた。

「それほどの富を持ちながら、私欲に使いません」

枢機卿は静かに呟く。

「ええ。あの方は領民のために使います」

外交官は迷いなく答えた。

「だからこそ、我国は第三王子を王に望みます」

枢機卿は外交官を見つめた。

「一領主のままでは、その力は領地に留まります。しかし国王となれば、その施策は国全体へ及ぶ。飢饉に苦しむ隣国より、立ち直った同盟国の方が我が国にとっても利益なのです」

部屋に静寂が流れる。

現国王は冷害への対応に追われている。

しかし、国を立て直す原動力となっているのは、第三王子の領地だった。

「しかし、その功績が一領主のものとして積み重なれば積み重なるほど、他の諸侯の嫉妬や警戒を招くでしょう」

このまま領主として働き続ければ、やがて国内の均衡は崩れる。

その莫大な財力も、人望も、現国王の下に置いておくには大きすぎる。


「万が一、政争によって第三王子が失われれば」

外交官は低い声で続けた。

「難民救済も、大聖堂建設も、阿片事業も止まります」

枢機卿はゆっくり目を閉じた。

教会にとって、それは決して受け入れられない未来だった。

ようやく救われ始めた民を、再び飢えへ戻すわけにはいかない。

「教会のお考えは」

外交官は静かに尋ねる。

枢機卿は静かに首を横へ振った。

「この場でお答えすることはできません」

外交官は黙って頷く。

「この件は、教皇庁にとっても重大な問題です。教皇猊下ならびに枢機卿団で慎重に協議いたしましょう」

外交官は深く一礼した。

「ご賢明なご判断に感謝いたします」

それ以上、二人は何も語らなかった。

外交官は静かに部屋を後にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
レオンハルト「俺から、毎日温泉に入る権利を、取り上げる……だと……」 これもう戦争案件なんよ
大国の重臣たち結構無能なのか? 王女嫁がせておいて婚姻相手を国王にしたら属国化か乗っ取りで外交上完全アウトな感じなのだが。 第三王子を王に据えてから王女と婚姻成立させないと、権威無視になる。
あああ、そうか 第三王子が王位を次いでマルクくんに温泉直轄領(&阿片統制)を任せれば…と思ったけど べアトリーチェさんとの婚姻で王子夫妻から離れるわけにはいかなくなってる! トラブル解決の芽をトラブル…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。