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もし、社畜が異世界の第三王子に転生したら【連載版】  作者: りな


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103/109

103

マルクの先導で、入口付近に私は視線を向けた。

――急使。

土埃にまみれた外套。 馬を潰す勢いで駆けてきたのだろう。 息は荒く、整える余裕もない。この場にふさわしくない姿であることなど、気にしていない。 いや――気にしていられないのだ。

広間の空気が、わずかにざわめく。

だが、誰も咎めない。 それだけで、ただ事ではないと知れる。

「……来い」

低く告げる。

騎士は一瞬だけ膝を折り礼を取ると、 迷わず立ち上がりこちらへ進み出た。その動きに、訓練された兵の気配がある。

周囲のざわめきが、自然と落ちていく。やがて、私のすぐ傍で足を止めた。

視線を落とし、声を抑える。

「街道巡回の兵より、緊急報告にございます」

私は、わずかに顎を引いた。続けろ、という合図。騎士は、さらに一歩だけ近づき、私の耳元で声を落とした。

「クロウフォード伯爵領へと続く街道が、何者かにより破壊されました。……それにより、クロウフォード伯爵が負傷されております」

静かに、息を吐く。表情は変えない、しかし思考は一瞬で切り替わっていた。

「……意図的、か」

「は。路盤が掘り崩されております。通行を狙ったものかと」

私は、ゆっくりと顔を上げた。

「諸君。申し訳ないが、この場を中断させていただきます」

声は大きくないが、広間の隅まで通る。

楽の音が止まる。 杯を持つ手が止まり、視線が一斉にこちらへ集まった。

「領内において、看過できぬ事態が発生しました」

短く、しかし曖昧にはしない。

「客人の安全に関わる問題です。対応を最優先とします」

一礼する。

「本日のもてなしは、後日、改めて埋め合わせします。どうかご容赦いただきたい」

沈黙。だが、それは不満ではない。 理解の沈黙だった。

エリシア王女が、静かに口を開く。

「……当然のご判断です」

その声は、場を支えるように落ちる。

「どうか、お気になさらず。こちらのことは問題ありません」

――助かる。私はわずかに頷いた。

「感謝いたします」

それ以上は言わない。 すでに次へ進んでいる。

「マルク」

呼ぶと、即座に背後に現れる。

「騎士団を動かせ。現場を封鎖、街道は全面通行止めだ。出入りした者、全て洗え」

「はっ」

「工兵も出せ。応急でいい、夜のうちに仮復旧に入れ。物流を止めるな」

「承知しました」

「それと、クロウフォード伯爵をこちらへ搬送しろ。医師は最上の者を用意する」

「は」

命令は終わりだ。

私は外套を取り、歩き出す。

……まさか。大国の王族が滞在し、警備が分散したこの瞬間を――狙ったか。

「……いい度胸だ」

怒りではなく、評価に近い、しかし。

「――潰す」

それだけは、揺るがない。

足音が石床に響く。

宴は終わった。

そして――本当の意味での“領主の仕事”が始まる。

話の流れにより、今回は短いです。

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― 新着の感想 ―
第三王子がここまでハッキリ潰すと明言するのは初めてじゃないかな… やはり王女との語らいの時を邪魔されて!
緊張の条約締結から晩餐会での王女の感情の揺れ、慌ただしい敵の出現、展開が素晴らしいです。
 ( •̀ᾥ•́)未来の義父殿が…ッ!? ……よし、討ち入りですね?
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