公開! 七高剣舞祭のチーム
夏休み一週間前の放課後。七高剣舞祭参加者二十四名は一堂に会していた。その中の一人である、生徒会長のアンナが一人前に出て大会の概要について説明する。
「一年生もいるし、とりあえずルールを確認しておくわね」
七高剣舞祭の試合のルールは基本的に学内トーナメントや決闘と同じだ。左胸の校章を破壊するか戦闘不能にすれば勝ち。この戦闘不能には戦意喪失の意味も入っている。
だが違うところもある。それは七高剣舞祭は団体戦だということ。
【ルール1】各校からは八人三チームを出場させる。
【ルール2】1VS1、2VS2を交互に五試合行い、先に三回勝った方が勝ちとする。
【ルール3】各試合に出る者は毎回ルーレットによって決められる。しかし、一度試合に出たものは選ばれない。
【ルール4】各試合の勝利条件は決闘と同様である。時間制限はない。
【ルール5】各校の三チームはそれぞれ別のトーナメントでの登録となり、そのトーナメントで勝利したチームが決勝への出場権を得られる。
「こんな感じね。決勝のルールに関してはまだ具体的にはわからないけれど、最近の傾向からするとたぶん三つ巴のバトルロワイアルだと思うわ」
バトルロワイヤルと聞いて、ここにいる二、三年生の生徒の顔が曇った。なぜなら去年はこの決勝で完膚なきまでに叩きのめされたからだ。
「それじゃあ今から、各チームを発表していくわね」
アンナがそう言うと。待っていましたと言わんばかりにマリが立ち上がりメンバーの名前が書かれた大きな紙を広げた。
この時代にこんな原始的なやり方をするところがマリらしいなどとアンナは心の中で思っていたが本人はまじめにやっているので文句は言わない。
そこに書かれている各チームの一番頭に名前があるものがリーダーということになる。つまり、アンナ、マリに評議委員会の委員長である桜庭銀の三人がそれぞれチームを率いていくということだ。
「俺とフィールとアキは篠原先輩のチームだな」
「そうだね。でも、カルは会長のとこか」
なんとも言えない空気が流れたがカルは特に気にしていなような顔をしている。
「じゃあ、決勝で」
「「簡単に言うなよ(言わないでよ)」」
そんなやり取りをしている中フィルミネスは一人どこか嬉しそうな、ほっとしたようなそんな表情を浮かべていた。
「フィール、どうした?」
蓮華がそう聞くと、フィルミネスが焦った感じで言う。
「べ、べべ、べっつにー」
「ん?」
「そうね! 決勝で会いましょう」
「指さすなよ。てゆうか、俺らは同じチームだって言ってんだろ」
最近こいつ、ときどきおかしくなるよな。大丈夫か? 主に頭。
蓮華がそう思っていると。アンナががやがやしている教室を静め話を続けた。
「最後になにか質問はあるかしら?」
アンナのそんな問いに一人の男子生徒が手を挙げた。それを見てアンナが「どうぞ」と言うとその男子生徒はその場に立った。
「単なる疑問なんですが、なぜそこに全然聞いたこともない人物が含まれているのでしょうか?」
秋久のことだ。こんなことがあるのではないかと蓮華もフィルミネスもカルも、もちろん秋久本人も予想はできていた。
「それは生徒会推薦枠で選ばれた三人のことね」
秋久の心中を察したのかめんどう事を避けるためか言葉を濁すアンナ。だが男子生徒はそんなことお構いなしにぐいぐい来る。
「いえ。主にその佐久間秋久という者のことです」
「ああ、彼のことね。彼は……」
言葉を詰まらせたアンナ。はっきり言ってなんと説明したらいいのかわからない。真実を言えば必ず何か言い返してくるはず。そんなことを考えていると今度は違う生徒が急に立ち上がった。
「それは……僕のことです」
「お前か」
「混乱させてしまってすいません。僕は生徒会推薦枠で七高剣舞祭のメンバーに選ばれた一年E組の佐久間秋久です。えと、その……よろしくお願いします!」
緊張しているのか秋久の声は震えていた。さらにその男子生徒ににらまれるもののだから縮こまってしまうのは仕方ない。
「E組ってことはスクルータか。言っちゃ悪いがお前がここにいるのは間違っているんじゃないのか? それとも何かの手違いか? 今年の一年はスクルータが出なければいけないほど鬼気迫ってるのか?」
「それは……」
今度こそ本当に何も言い返せなくなってしまう。だがそれを許さないものが隣にいた。
「俺もスクルータなんですけど」
「お前は……霧ヶ谷蓮華か……」
席に腰を落ち着かせたまま言う蓮華。その男子生徒の視線は秋久から蓮華に移ったが蓮華は気にする様子もなく前を向いたままだ。
「俺は別にいいんですか?」
「お前は別にかまわない」
「何でですか? 俺は学内トーナメントに出て少し名前が知られているからですか?」
「そういうことだ」
「俺はあなたの名前知りませんけど」
ケンカ腰、挑発という言葉が似合うような発言をする蓮華。そんな蓮華が癪にさわったのか男子生徒は蓮華のことを先ほどよりも力強い眼光でにらみつけた。
「お前は学内トーナメントで自分の強さを見せつけた。だがそいつは違う。ましてやスクルータだ。とても役に立つとは思えない」
「スクルータであることがいけないんですか。この学園の生徒はみんな同じことしか言えないのか。まったくもってあきれ果てる」
そう言って肩をすくめ、ため息をつく蓮華。
「じゃあ、どうすればいいんですか?」
「簡単だそいつの強さを示せばいい」
「あなたと決闘でもしろってことですか?」
「ああ、そ……」
そうだ、と男子生徒が言いかけたがそれを蓮華が無理やり止めた。
「無理です」
「なに?」
「あなたはアホですか? 今まさに七高剣舞祭に出るって人がたくさんいる中で手の内さらすわけないでしょ! それとも何か? あんたは自分の強さをバカ正直に周りに示してちやほやされたいかまってちゃんですか!?」
「なんだと……」
キレる寸前という雰囲気を漂わせている男子生徒。それでも蓮華の言葉は止まらないしだれも止めようとしない。なぜなら人間は普通、他人のめんどう事には関わりたくないものだし、他人ではないフィルミネスやカルはむしろもっと言ってやれという気分だからである。
「それにあんたがどれだけ強いかは知らないけどはっきり言ってアキのほうが役に立つ」
「佐久間秋久が俺より強いってことか?」
「なに言ってるんですか? アキのほうが弱いですよ。たぶんアキはここにいる人の誰にも勝てません」
「意味がわから……」
「けど……誰が強いイコール役に立つだと言いました?」
「何を言ってるんだ?」
「わかりませんか? つまり……あんたみたいな自分が強いと過信している脳筋ヤローよりもアキのほうがよっぽどチームに貢献できるって言ってるんだ」
「てめぇ! いい加減にしろよ!」
我慢の限界がきたのか男子生徒が声を荒げてこちらを見向きもしない蓮華につかみかかる。だがそれでも蓮華は憶することはなくむしろ口もとつり上げて笑った。
「クールに取り繕ってた皮がバリバリにはがれてますよ。大丈夫ですか? もしかして桜庭先輩の真似ですか」
その男子生徒は顔を真っ赤に染めて言葉を失った。そんな時、彼の肩をたたく者が一人。生徒会の林道薫だ。
「おい。もうやめとけ」
薫がそう言うと蓮華の胸元をつかんでいた手を離した。すると男子生徒は舌打ちをして自分が座っていた席に荒々しくついた。
「会長すいません」
「いいのよ。ありがとう林道くん。ケンカにならなくてよかったわ」
「その、こういう感じなので自分が彼の代わりに篠原先輩のチームに入っても構いませんけど」
「本当に?」
「はい」
「それじゃあ、そうしましょうか。二人とも二年生だし、配分もちょうどいいわね」
マリのチームの男子生徒とアンナのチームの薫がを入れ替わることに軽く賛成の雰囲気のアンナ。一応アンナはマリに確かめる。
「どうかしらマリ?」
「私はかまわんぞ。ドンとこい」
「じゃあ、そういうことにしましょう」
というわけでその男子生徒と薫がチームを入れ替えることでこの場は何とか収まった。
あの人同じチームの人だったんだ。
蓮華が煽るためではなく本当にあの男子生徒のことを知らなかったことは誰も見抜いてはいなかった。




