その95
お代わり男は地球人でいうと
30代半ば、均整のとれた体型に
手入れの入った顔付き。
これに紫がかった外套を纏い、
内からのぞく黒い服には金と白の刺繍
が入り、質の良さを顕している。
普段は野良着の村ならば、男の異様
さに気がついただろう。
だが今日に限っては行事の為、
よそ行き用の服がほとんどだ。
「カゼ」は感じられないので、害意は
無さそうだ。しかし村の入り口は
取り巻き達が監視してる筈。
どうやったかは分からないが
その素性はすぐに知れた。
押し合いの騒ぎに村への最後のお勤め
(糞尿集め)を終えた7人の傭兵達が
「 総隊長?! 」
と叫んでいたらしい。
(ガーディアンが教えてくれた)
男の方も彼らに気付き、この場から
離れていった。
「フゥゥ 」と安堵するも
まずは手前の仕事を片付けてしまおう
彼ら一団を気にするのは後だ。
30分後
村人に配り終わり、火を片付けた後の焼き鳥を自前の大皿に載せ、
教会の中へと入る。
礼拝堂には取り巻き達や7人の傭兵、
前村長とその家族がおり、
此方が来るまで茹でた芋や花酒には
手を着けずにいたようだ。
ガーディアンを伝い、
「 どうぞ始めて下さい 」
と声掛けをしたが、皆動かない。
「んん? 」と思っていると
傭兵の1人が
「その、少しよろしいでしょうか?」
と連れて行かれたのが教会の横、
そこにはセムジュやスール氏、そして
先程の総隊長がいた。
近づくと、皆で世間話と言うよりも
隊長が1人、捲し立ている様にみえる
途中で足を止めるも、視界に入ったのか、隊長がこちらに詰め寄る。
「何故大金を積んでも、意として首を
振らんのだ
商人にとって金は信用なんだろう!
お前もスール氏も商人だ、
これ以上の信用は有るまい。
この論理が間違いなら、世に商いは
成立しない筈。
それでも異論があるなら
無学なオレに分かるよう、ようよう
説明してくれ! 」
無学とは思っていないだろうが、
そんな隊長からの問に対し、
反論し易く安堵した。只、
上手く伝わるかは別として
気を引き締めていこう。
「隊長の言う通り、私達は商人です
しかし商人である前に「1人の人間」
であります。
例えばの話ですが、
傭兵団の1人が誰かから恨みを買っ
たとします。
その誰かから仲間を切れという
大金の依頼がきました。
隊長は訳も聞かず、善悪を確認せず
に仲間を切りますか?
出来ないでしょう。では何故か?
それは「金は信用」ではなく、
「信頼の対価が金」であるのです。
物を買う際、人は品質を信用して
お金を払うのです。
それが違えれると商人は信用を失くし
次から買って貰えなくなるでしょう
それは団でも同じではないですか?
隊長が理由もなく仲間を切る。
そうならない信頼があるからこそ
仲間は命を預けられる。
それに対し、団は給金を払う。
どうです?説明になりませんか? 」
隊長は腕を組み、項垂れながらも
頷いていた。
「確かに、お互い見ず知らずの
間柄では、
金を積まれても怖いだけですな。
いや、納得いきました。
自分の不甲斐なさもありますが
スール氏からでは、上手く諭して
貰えなかったもので。 」
「人それぞれ得意分野と言うものが
あります。個性ともいいますが
私は話す方が、彼は人との取引が
得意なのでしょう 」
隊長が納得したのか踵を返し、
スール氏の方へ戻っていった。
それを見送っていると視界に入って
きたのは、案内したさっきの傭兵だ。
ソワソワしているのを見て
「 アッ 」と気付く。
急いで教会に戻るもやはり「お預け」
のままだった。
「は、始めて下さい 」と言ったが
今日一番の冷たい視線を受け、
自分も「まだまだ」だなと悔やんだ。




