その64
おばちゃんが帰ったあたりから
夕暮れになり、一先ず教会の奥へ
引っ込んだ。
報告しに来たガーディアンにお使いを
頼み、もう1人には石塔の様子を
見張ってもらった。
セムジュは入口のある礼拝堂で見張りをしてくれている。
スール氏も近いうちに村を訪れる。
この村の未来を語るのは
それからとして、村長の親御さんに
働いてもらう店をかまえないと。
台や棚とか手持ち金庫もいるかな?
多少のDIYが出来るよう、
工具も必要か。
纏めようとしているのに、することが
拡がる一方だ。
デキる人ならパパッとするんだろうが
自分には無理だな。
精々人の期待を裏切らないよう
頑張るとしよう。
翌朝
またしてもミネラルウォーターで
身繕い。
礼拝堂に行くと、セムジュが
「頼まれていた薬が届きました 」
と言ってきた。ガーディアンに
頼んだお使いの1つがこれ。
目薬位の大きさで素焼の瓶?
瓶口には葉っぱでフタをして、
そこに石をねじ込んで栓にしてある。
にわかには信じがたいが、
これが回復薬か。
鼻を近付けて臭いを嗅いだり、
瓶の様子を触って確認していると、
「あの、本当によろしいので? 」
諺でいう「泥棒に追い銭を...」
みたいに感じたのだろう。
セムジュが怪訝な顔をしていた。
気持ちはわからんでもない。
「物で円満に解決できるなら、
それに越したことはない。
拗れたら、人をみる眼が無かった
ということだけ。
やるだけやってみるよ 」
その最中
「ドンドン」と引き戸が叩かれた。
「彼ら(取り巻き)でしょう。
私が昨日、教会に訪れるよう
言っておきましたので 」
セムジュは応対するため、棒を外し、引き戸を開けた。
立っていたのはリーダー格の男。
後ろには、10人位が控えていた。
「中へどうぞ 」
と言うや頷き、進んできた。
パイプ椅子をあてがい、お互いに座る
「皆の代表として参った。
昨日の話に相違はないかと。 」
「勿論です。
それとは別に、村からの餞別として
1人に1つ、回復薬もつけます。
道中の御守りとして下さい 」
今度は男の方が怪訝な顔をする。
「人質を取ろうとした者に
高額の金銭だけでなく、薬まで。
そうまでして追い出す訳を
聞かせて頂きたい。
何故です? 」
顎に手を宛て考える。
金でホイホイ動くより、その裏を
感じとったということか。
ここは正直が一番だな。
「後腐れがないようにしたかった。
その理由では引き下がらんでしょう
しいて云うなら、働き方改革かな。
これからも見回りや害獣の駆除は
必要です。 ですが
今後は商人の護衛、輸送の手伝い、
詰所当番等、今までの仕事を誇りに
していたら、これらは成し得ないと
思いまして。
この村の先を見据え、あなた方に
無理強いをしない為、円満な解決を
はかった。
この答えでどうでしょう? 」
男が腕を組んで考え込んだ。
しばしの後
「商人は我々と違い、裏をかいてくる
だが先程の答弁は正直さを感じた
守護者もいるし、嘘ではないの
だろう。
村長に付く21人の内、
私を含め、ここに来た12人は
元ガイザールの戦士団だ。
我らは敗残兵だったが、
村長に誘われ、この地にやって来た
長年、それなりに世話にはなった
あなたがこの村を見捨てないのなら
我々は命を掛けて働く所存だ。
だが他の9人は違う。
村から解放してくれ。 」
想像していた展開とは違ったが、
取り敢えず頷く。
9人減なら村の維持は可能だし。
「そうそう、後できっちり
おばちゃんに詫びをいれといて。
次の村長の予定だから。
頼んだよ 」
男が頷くと、後ろに向かって手を
かざす。
残りの男達がぞろぞろ入ってきた。
皆が膝つき、
「村長が退任次第、
我々はあなたの命に従います 」
エエェーーーーー、
めっちゃ重いんですけど。
どうしよう......
セムジュをみると
「私にもわかりません」
みたいな表情だった。




