その57
二人に近付くと、男がニヤけた顔を
して、
「なんだチェシー、次に選んだのは
若いぐぼぉぉぉ、 」
おばちゃんからの渾身のストレート、
男が吹っ飛んだ。
オレだったら「K.0」どころか
即死だな、ありゃ。
起き上がるのを待って語り出す。
「改めまして、この村に取引を予定
している教会従者、露店商人の
ヤスオといいます。
今回は、お越しいただき、有り難く
存じます。
こちらの女性がどう記したか分かり
ませんが、
村の作物をより美味しく、生活の
手助けになればと、事を進めており
ます。
試食会は村では称賛でしたが、
村以外の多くの声を集めるため、
そちらに願い出ました。
「数人に試食」を予定しておりました
ので、この人数に心ゆくまでの量は
及びません。ご了承下さい。 」
一応儀礼的に挨拶をしたが、
「芋なんざ、どう食っても芋の味しか
しねえよ 」
ブンンッ、
2発目のストレートは男に避けられてしまった。
「呼んだのが間違いじゃ。
こんな奴に食わせてやることは
ない。
葉物でああなんじゃから、
さぞかし芋でも旨くなるんじゃろ。
勿体ない、勿体ないわ。 」
パンチを躱し得意気だった男は
すぐに顔をしかめていく。
「はん、
そこまで言うんなら確かめてやるよ
こっちも時間掛けてきたんだからな
食わなきゃ大損だ 」
まあ、試食させることに成功したと
思っておこう。
芋1個ずつだともたないので、半分個
にしていくか。
じゃがバターから始まり、バター醤油
タラコバター、マヨネーズ等蒸かし芋
を味付けして渡す。
最初は「まあまあだな」とか言って
いたが、タラコバターに至っては
「これじゃ足りん、もっとよこせ」と
喚いた。
遠巻きにみていた男達も、その声
を合図になだれ込んできた。
時間にすると3分ももたなかった。
空きっ腹に小ぶりな芋1個ないし2個
初見の「芋かよ」と侮った感じが
今はない。
目が血走ってきて、かなりヤバい。
こっそりじゃがバターを食べていた
おばちゃん、
「これは茹でた芋とは違うのぅ」
相変わらずマイペースだ。
頼んだ葉物がまだ届かないので、
フライパンを取り出し、
「皮付きポテト」を揚げていく。
セムジュとガーディアンに油跳ねが
届かないよう、コンロ周りから規制
してもらった。
頃合いに揚がった芋を掬い網で上げ、
キッチンペーパーに落とす。
塩胡椒を振りかけたものが、すぐに
消えていく。
最後の3個分は我慢してもらい、
油を鍋に移し、ベーコンを炒める。
これにポテトを投入し、とろけるチーズを絡ませる。
塩胡椒を振りかけて完成。
皿に上げると「ゾンビの手」みたいに
群がった。
ここまで30分、ようやく葉物が
届いた。 が.....
お浸しは1分ももたずに消え去った。
「エー、これにて試食会を終わり..
「ちょっと待った 」
おばちゃんに殴られた男が待ったを
掛ける。
なにやら手で合図を送ると、奥にいた男達が木箱を持ってきた。
「あんたが芋を旨くするのは分かった
これは俺たちが狩った「塩付け肉」
だ。
これを使って旨いもんにしてくれ」
木箱を開けると塩付けのブロック肉だ。
ガーディアンに尋ねると「鹿肉」らしい
いや、ジビエ肉なんて扱ったことないよ
困ったなぁ。




