その48
均衡はすぐに崩れた。
村長は弱味でもあるのか、おばちゃんを見るなり、退散するようだ。
「なんじゃい、やらんのか?
相変わらず口だけ達者なようじゃの
だから... 」
「う、うるさい、あんたに何がわかる?
あんたも同じようなものだろ 」
捨てセリフを吐いて帰った村長に
「フン」と吐くおばちゃん。
憮然とした顔して近付いてきた。
「悪かったの、身内のもんが恥をさら
して。
あれでも昔は村の為に尽力して、
んっ、スンスン、こりゃもしかして
酒の匂いか?
そうなんじゃろ!!
ええぃ、自分らだけズルいぞ
わしの分はないんか!! 」
せっかく真面目な展開だったのに、
台無しだ。
話を続けるなら出してもいいと条件を
出すと、ウンウンと頷く。
チューハイとビー..「ビールは譲れませんぞ」とセムジュが割って入った
タメ息をついてから
ほろ○いブドウをシュコッと開け、
「シュワシュワするからな」と前置きしてから渡す。
クンクンと嗅ぎ、
「甘い匂いがするのぅ、
たまらんわい 」
そして一気に...
「ガフォ、ブホッ、ホッ、ホッ
あぁ~死ぬかと思ったわ。確かに
シュワシュワしとった。こりゃ
一口ずつ飲むもんじゃの 」
グッグッグッ、とそれでも一気に飲み
干した。
「此処らにはない酒じゃのぅ、
130年以上生きてきたが、
初めて飲んだわい。
甘くて旨い、
こんな酒ならいつでも歓迎じゃ 」
このまま余韻に浸らせると眠りそう
だったので、話を急かす。
「興が冷めるの」と言ってくるが
代金分は働いて貰う。
「何処から話そうかの、
そうじゃ、この村に王族の保養地が
あったのは知っていよう.... 」
概略
王族一家がこの村を避暑地として利用
していた。
当時のおばちゃんは地元組の侍女として働く。
その過程で読み書き計算、持ち込まれた書籍より、基礎農業等を学ぶ。
ある時、第2皇女がこの村の青年に恋に落ちる。
村に訪れる度、逢瀬を重ねる2人。
これをよく思わない者から刺客を放たれる。
刺客によって倒れる青年。
村の行く先をおばちゃんに託す。
この事件を機に王族は避暑地を放棄。
地元組の侍従や侍女の大半も
王族と共にこの村を離脱。
教会関係者も徹退した。
村の行く先を託されたおばちゃん、
王族に着いていかず、仕事の合間に
廃教会で読み書きを教える。
当時の教え子に、現村長もいた。
村を支える人財にと、熱心に子供達を指導していったが、
逆に村の行く末に不安を感じ、都市部へと散っていった。
それに愕然とし、今のおばちゃんが
出来上がる。
まあそんなところ。
結果として未だ集落に堕ちず、豊富な農作物にありつけている様子。
ナゼ託されたのか?
それはおばちゃんの「兄」だったから
だそうだ。
明日検査をして良好だったら
昼退院の予定。
自分だけ仕事をしていないと
苛まれていた為、
これでひと息つけます。




