その45
走っていった奥さんを茫然と眺めて
いると、入れ違いにおばちゃんが帰ってきた。
「ん、どうした?
ああ、あの夫婦か!!
あの夫婦は少し狡いところがあるか
らの、
葉物を少なく茹でて、雑貨を貰いに
きたんじゃろ。
大方もう一度金を貰おうとして、
葉を茹でにいったんでないかの 」
後で言って聞かすわ。
とおばちゃん
その旦那はここにいますけどね。
見ると、少し紅くなっていた。
しばらくするとザルを持った団体が
ぞろぞろとやってきた。
最初の夫婦と同じ様に注意点を述べ、
葉物を預かる。
うん、葉の量が多いな。
三等分でなく、4カット、5カット
或いは2かたまりにしてから切っていく。
唸りやなにかが聞こえてくるが、
来る人が増えるにつれ、一々顔を上げるヒマがなくなっていった。
少なくなっていく醤油を継ぎ足し、
せっせと作業をすすめる。
最後の葉物を返し、ようやく辺りを
見回すと、皆の皿はカラだった。
うーん、一応鰹節で様子を伺おうとしたんだが、どうしようか。
それに....
「ようやったのう」と
おばちゃんが労いにやってくる。
完食なので、好評だとはおもうのだが
感想は聞けてない。
「そうか、ならばわしが食べて、感想
を述べてやるぞ 」
おばちゃんの付き人から、茹でてない
葉物を受け取る。
ふむ、だったら2通りにするか。
手前のコンロで湯を沸かし、半分を茹でてからザルにあけ、今度は塩を適量
鍋に投入し、残りを茹でた。
塩が入った容器をみて
「こっ、こんなに塩があるのになぜ
ケチったんじゃ。
それとも、その黒い汁によっぽどの
自信があったんか? 」
困惑するおばちゃんを置いて作業を
続ける。
ザッ、ザッと切って完成。
まずは醤油のほうから食べて貰う。
「うんっ、んーん。塩茹でしてないの
に、鼻から塩気が突き抜けるのぅ。
まあ、旨いと思うぞ。
葉物と合うじゃろ 」
お次は塩茹でノミのほうを。
「んっ、いやいや味がせんぞ。
ただの茹でた葉っぱじゃ。
なんじゃこりゃ? 」
塩の入った容器から一つまみして
確認している。「確かに塩じゃ」
もう一度醤油のほうを食べる。
「ああ旨い。これが旨いちゅうことか
前に兄ちゃんが食べた時、
困惑してたのはこのことか。
自分らだけで、ズルいのぅ 」
1人で自己解決したおばちゃん。
それはよしとして、今度は鰹節を
かけてやる。
縮む様子に引いていたが、口にいれ
「オォ、旨、旨いのぉ 」
と大きな声をしたもんだから
まわりに勘付かれる。
「こりゃわしのじゃ」とのたまうが
廻りを囲んだ人らにアッサリと
めしあげられた。
締めに芋を茹でようとした時、
ザルに一杯の葉物をもって、
あの奥さんが帰ってきた。
おばちゃんがたしなめようとしたら、
「食べられるなら金はいらない 」
と、ウットリとした顔をして言ってくる。
困ったな、どうしよう。
フゥ、とひと息ついて
「黒い汁はなくなった 」とカラの容器を振る。
奥さんはガックリと、力なくその場に座り込む。
「日頃の行いじゃな」とおばちゃん。
しょうがない。
コンロから鍋をずらし、
フライパンを手に取った。
病院内にあるレストランにて
更新しています。
(WiーFiがあるので)
もう少しで退院の目処がつきそうです。




