その32
「商人に売るとしたら、5束で1雑貨が
適当です 」
前もってガーディアンから聞いた情報である。
向こうが折れて「6束で1雑貨」を
提示してきた。
恐らく銀貨8枚~10枚の攻防だ。
日本円で16000円~20000円。
こんな金額で困窮しないのはお互いの肌で感じ取られる。
せめぎ合いになるのは、次回以降の取引で舐められないようにする為だ。
要するに「サル山の喧嘩」である。
10分程で喉がカラカラに。
テーブルに飲み物は無い。
(あっても飲むのがこわいけど)
向こうはまだ余裕がある感じだ。
しまったな。
「失礼」と中座するとニヤけらたが
仕方がない。
セムジュに預けた鞄から「なま茶」を出して飲む。
ふぅ~、一息ついた。
振り返るとビックリしている。
ああ、ペットボトルにか。
「そ、それは何ですかな?」
「ハハ、商人が秘密を明かすことは
そうないと思いますが 」
「そ、そうですな。いや、...
そうですな。... 」
んっ、仕掛けるなら
このタイミングだな。
セムジュに退出をお願いした。
「お待たせしました。今度は2人き
りでお話ししますか 」
「あ、いや、まだ守護者がおいでな
のですが? 」
「彼は私の通訳です。私はこの大陸
の出自ではないので。
お疑いなら、母国語を話しますので
理解できないときは、片手をあげて
ください 」
ガーディアンから預かった「赤い宝石」をテーブルに置く。
「どうですか? このまますすめても
宜しいですか? 」
先程よりも目を見開いていたが、
我にかえり、片手をあげていた。
宝石をズボンにしまう。
「さて、秘密の1つを明かしたわけ
ですが、あなたにも教えて頂きたい
ことがあります。
あなたはこの教会の、いえ、あの
助祭の仲間ですか? 」
「驚きました。確かにあなたの話す
言葉はわかりませんでした。
ええと、教会商人ですので一員で
あるのですが、「助祭の仲間?」
という意味がわかりません 」
ふむ、もう少し踏み込んでみるか。
「助祭は私達に虚言を申しまして、
納付金の二重取りを画策しています
そこに関与しているかどうか。
ということです 」
教会商人がバッと立ち上がるが
手で制してなだめた。
「どうやら無関係のようでしたな。
疑って申し訳ありません 」
思い当たる部分があるのだろう。
今までより自信のない顔色をしている
「助祭のコトは別として、貴方とは
対等に取引をしたい。
全量で買取頂けるなら、折衷案
として11束で2雑貨。
どうでしょう? 」
悩む素振りを見せていたが、この範囲で妥協するのを待っていた感じだ。
「そ、そうですな。私も貴方と対等に
対峙していきたい。ええ、全量買わ
せて頂きますとも 」
この世界にも「握手」はあるのか、
お互いの手を握った。
この後、教会商人の「従業員?」達が現れて、葉物の勘定をしていった。
金銭を受け取り、再度握手をして、
控室に向かった。
(ガーディアンには悪いが、また飛んで帰ってもらった)
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フウッ、と溜め息を吐いていると
助祭が入ってくる。
「百戦錬磨のお前さんがそんなに
果てるとは。
相手は露天商人の若造じゃぞ。
耄碌したもんじゃな。次の仕事の
ときが心配になってきたわい 」
そう吐き捨て去っていった。
「潮時だな」
助祭との関係を勘ぐられた。
幸い、こちら側から納付した証拠は
ある。
商人は助祭と手を切る決断をした。




