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異世界BAR 月に吠える  作者: しゅーる君


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キッカ

ギルター商会事件から間もなく1ヵ月。

公都リンデンバームが誇る魔法結界を突破して、

魔族が侵入していたとの報は瞬く間に広がり、

そこで暮らす人々の暮らしに大きな影響を与えた。


ライムバッハ公爵家の騎士団をはじめ、

公都冒険者ギルドが結成した警らチームによる、

公都のあらゆ場所を対象とした魔族狩りは、

熾烈の限りを尽くすものだった。


うちの店も調査の対象となり、

すべての扉を開けられる捜査が行われた。

もちろん爺ちゃん家につながる裏口も調べられたが、

強面(こわもて)の騎士団員が開く裏口の先は、

日中でも光が届かない暗がりの裏路地に続いている。


捜査は3日おき都合4回もやってきた。

その執念たるや頭がさがるところなのだが、

なんど調査したところで、

リーネ達が身を隠している爺ちゃん家へは辿り着くことはなかった。


長らく止まっていた時間が動き出すように、

街に人影が増えていくと、無期限休校だった学校や、

役場の行政業務が再開され、人々の日常が動き出していく。


「マスター、久しぶりっス!」


飲食店(バール)月に吠えるは明日から本格的に営業を再開する。

店長のキッカが再開する飲食店(バール)の開店準備の為、

ふたりの子供を連れて手伝いに来てくれた。


「おっ、チビスケども。しばらく見ないうちに大きくなったな」


キッカの子供は8才となる双子の姉妹。

ジーナとシェスタ。

赤毛のおさげ髪は、母親のキッカとよく似ている。

キッカが仕事中は叔母に預けられているのだが、

叔母の都合が悪いときは、双子を連れて出勤を許している。

常連たちが代わる代わる面倒をみてくれる為、

この双子は飲食店(バール)のアイドル的存在となっていのだ。


「うさいハゲ」

「死ねばいいのにデブ」


・・・子供じゃなかったら。


「こら、マスターになんてこと言うっスか!」


親しき中にも礼儀あり。

さすが元B級冒険者。

体育会系の子育てなのだろう。

目上の者には最低限の礼節が必要であめ事を諭している。


「マスターは、ちょっとだけハゲてて、少しだけデブなんだから多めに見なさいっス!!」


「「はーい、ママ」」


・・・ハゲても太ってもいないはずだが。


「あっ、店長。明日からよろしくお願いします」


厨房から割烹着姿のアリサがやってきた。

飲食店(バール)の開店に向けて、

ここ数日俺から仕込みや掃除のやり方など、

仕事のイロハを引き継いでいる。


「アリサちゃん、明日からよろしくっス」


チロルがリーネと学校に通うことになった為、

アリサが飲食店(バール)の副店長見習いとして働くことになった。

アリサが最近まで魔族の姿だったとは当然ながらキッカには話していない。

知ることで火の粉が降り注ぐ可能性があるのなら、

知らないほうが良いこともあるだろう。


チロルから学校に行くまでの時間、

飲食店(バール)の仕事がしたいと願われた。

だが彼女は未来ある12歳。

仕事より学業を優先させたいというのは親心だろうか。

長期休暇以外はアリサに任せろと、

半ば強引に納得させている。


世の中には職業(クラス)と実際の仕事が合致しない場合が多い。

職業(クラス)とは適正力がある目安でしかなく、

自分が何をしたいというのは、あくまでも本人の意思によるのだ。

ちなみにAランク冒険者のアランの旦那の職業(クラス)は調理人(コック)だ。

将来あるチロルには、より多くの選択肢を与えてやりたい。

それには学校から多くを学ぶ機会を得る事が最善だと考える。

リーネの護衛はチロルしか任せられないと、

なんとか説得してみせた。

やはり最後は誠意だよな。

俺の必殺能力(スキル)ハイパー土下座(ドケザ)が効果覿面だった。

ふふっ。



「それにしても、マスター。よくアリサちゃんみたいな若くて可愛い娘(こ)見つけてきたっスね」


「若くて可愛いだなんて・・・それほどでも・・・ありますよねぇ♪」


・・・少なくてもキッカの実年齢の3倍は人生経験を積んでいるバ●(ピー)アだ。


「マスターは下ごごろ丸出しっスけど、行動力がまったく伴わないヘタレっスから二人だけの作業でも安心して仕事できるっスよ」


「まぁ、ある意味人畜無害ですね♪」


・・・妄想だしても百歳超のババ●(ピー)を●●(ピピー)する気にはなれない。


「前かがみになった時、胸がみえちゃったかもって時でも、マスター顔を横に向けるっスけど、視線は同じ一点を凝視してるっスから気を付けてほしいっス」


「あらら、手振れ補正機能搭載してるのかしら・・・」


・・・ガン見がばれてた。


「それから、一番注意してほしいことがあるんスけど」

「えっ、何かしら・・・」

「チロルちゃんを見てるとき、実の娘をみていような表情を浮かべる時があるっスけど、心根はすでにストライクゾーンだって思っているはずっスから、だまされていいけないっス」

「鬼畜そのものってことですね、了解です店長!!」

「「鬼畜鬼畜!!」」


双子のステレオ音が飲食店(バール)に反響(こだま)する。


元B級冒険者キッカ。

現役時代の二つ名は「毒舌女王」

常連客の毒婦カルラ婆さんは母方の叔母にあたる。

血は争えないという事か・・・







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