第六話 向けられる憎悪
爆乳酪農家狙撃兵ホルスタイン零-zero- 第六話です、先行して投稿済みの分割版を、雪風が執筆した状態の長さに結合してつなげただけの内容ですので、中身は一緒です。
「次へ」のボタンを何度も押すのがめんどくせー! ガッツリ胸やけするほど一気読みしたい、という方のみパンシロン片手に読んで頂ければと思います。
爆乳酪農家狙撃兵ホルスタイン零-zero- 第六話 向けられる憎悪
オズワルドの死からさほど日を置かずして、その男は執務室の豪華な椅子に身を沈めていた。
空席となった情報統括局長の椅子に、かつてその主であったオズワルドの後釜として、新たな男が座っている。
ハインリッヒ・クルーガー特務上級大佐。
これといった実績があるわけではない。
特別な才覚があるわけでもない。
ただ、命令には忠実であり、組織に対しても従順だった。
――少なくとも、その時までは。
就任の挨拶と式典を終えたクルーガーの前に、ゾルゲが姿を現した。
「このたびは、ご就任おめでとうございます、クルーガー新長官。」
「やぁ、ゾルゲ君だね? 組織から連絡は受けているよ。わざわざ済まないね。」
クルーガーは上機嫌だった。
「はい、これからクルーガー長官とは、長く良いお付き合いをお願いしたいと思っております。」
ゾルゲの眼が、いつものようにクルーガーを下から値踏みするようにねめつける。
オズワルドですら、好きになれなかったあの眼だ。
「私こそ、これからよろしくお願いしたいものだよ、ゾルゲ君。我々とカルテルは今まで以上に、持ちつ持たれつで、うまくやっていきたいと思っているよ。」
「はい、前任のオズワルド長官にも、長いこと良くして頂きましたのでな。あんなことになったのは大変残念でしたが、後任の長官のお人柄をこうして感じて、安心致しました。」
オズワルドとのあの夜の、最後の晩餐を思い出し、ゾルゲの顔にうっすらと笑いが張り付く。
長官執務室のテーブルからは灰皿が撤去されている。クルーガーは、ヘビースモーカーだったオズワルドと違い、嫌煙家のようだ。
代わりに、オズワルド自慢の高級酒が収められていたキャビネットには、以前よりも高級な酒が増えている。
クルーガーはキャビネットから一本の瓶を取り出し、二つのグラスを片手にテーブルへ戻ってくる。
レミーマルタン ルイ13世。
ブランデー、コニャックの中でも、替えのきかない超高級酒の代名詞だ。
バカラ製のクリスタルボトルに入っており、価格も数十万~数百万円クラス。
もちろん、今クルーガーが取り出したのは、その中でも後者――数百万円クラスのものだろう。
他にもキャビネットの中には、同じくレミーマルタン ルイ13世のレアカスクも並んでいるのが見える。
そちらは熟成樽の中から、奇跡的かつ圧倒的な熟成を見せた「たった一つの樽」だけを厳選してボトリングした、垂涎の逸品だ。
自分とゾルゲのグラスに惜しげもなく琥珀色の液体を注ぎ、勧める。
「ほぅ、レミーマルタン ルイ13世ブラックパールですか……私も実物は初めて見ましたぞ、長官。」
通常のバカラ製クリスタルボトルを特殊加工し、黒真珠のように怪しく光るメタリックな輝きを持たせた超限定品だ。
数千万円クラスで取引される、文字通りの「幻の酒」である。
これ一本が高級車一台分に匹敵する値段。ボトルだけでも数百万出すコレクターがいくらでもいるはずだ。
「ハハ、分かるかね、ゾルゲ君? この『ブラックパール』の重厚な輝きが…そこらの成金が持っているルイ13世とは格が違うのだよ、ハハハ!」
「さすが長官、良い趣味をしていらっしゃる。やはり一流の男は、同じく一流の酒を飲むべきですからな。お相伴に預かります。」
(俗な男だ……)
もちろん声には出さず、ゾルゲは喉に流し込む。
「しかし……こうして長官という立場にもなると、何かと色々と物入りでしてな。まさかこんなに金が出ていく立場とは思っていませんでしたよ、ハハハ。」
クルーガーも続けてグラスの中身を一気に飲み干す。
ブランデーの芳醇な香りを楽しむでもない。ただただ高価な酒をガブ飲みすることで、満足感を得ようとする下品な飲み方だ。
味というより、その酒の金額に酔っているだけの飲み方だ。
「物入り、ですか?」
「ええ、長官ともなれば、やはり立場相応の付き合いというものがありますからな。」
ゾルゲは一瞬だけ黙った。
「…なるほど」
その後の話は、実に手短だった。
クルーガーは組織への忠誠を何度も口にしながら、その忠誠に見合った「便宜」を要求した。
金。
高級な酒。
人事への口添え。
そして――今後導入が予定されているスケルトンについても。
「まあ、私としても導入そのものに反対するつもりはありませんよ。」
「ただ…こちらにも立場というものがありますからな」
そう言って、クルーガーはにこやかに笑った。
ゾルゲは笑わなかった。
その日のうちに、彼はボスのもとへ報告に向かった。
「…あの男、少々欲が深すぎますな。」
「ほう?」
「忠実…ではあります。命令にも逆らわないでしょう。」
ゾルゲは一度言葉を切った。
「…が、あれでは、動かすたびにこちらから餌を与えねばならんでしょうな。」
「つまり?」
「コストパフォーマンスは…あまり良いとは言えないかもしれませんな。」
ボスは黙ってワインを一口飲んだ。
「…そうか」
それだけだった。
やがて二人は、別の話へと移った。
端末に映る情報は、やはり彼らが家族であることを示していた。
(あの兵士が第一室移送に反対していた女性の件は、恋人か…)
キーボードを操りながらミゲルは思考する。
(二か月ほど前から、同じファミリーネームの収監者と警備兵がチラチラここに配属、収監され始めたようだな…オズワルド長官が死んだことで、後任のゴタゴタ騒ぎもあって、その混乱が加速しているのか…)
昨日から彼は生霊としての情報収集を始めていた。最近感じていた違和感は、やはり配備兵達のミスマッチで間違いなかった。
この収容所に配備されている兵士の中に、収監者と同じ苗字を持つ兵士がすでに五人見つかった。全員、最近この収容所に転属してきたものばかりだ。
軍上層部にはもはや、それらの配置ミス、ミスマッチングをチェックする能力すら失われているようだ。
オズワルド急死に伴う後任の急な交代劇による混乱も、もちろんあるのだろう。
だが事実として、ここに配属されてきた兵士の中には、毎日ここに人質として収監されている自分の家族に、銃口を向ける苦痛を強いられている者がいるのだ。
(…もう、軍の人事部もまともに機能していない、という事か…)
事務室に一人の兵士が入ってくる。運動時間に男の子にお菓子をそっと渡していた兵士だ。手には何かの書類を持っている。
「これ、来週の警備の配置スケジュールだ。」
そう言って手渡された書類を、ミゲルは受け取る。
「ああ、ありがとう。」
今の時間はミゲル一人だ。メンドーサ中尉はいない。またどこかでサボっているのだろう。
「なぁ、あんた…ちょっと待ってくれ。」
部屋を出て行こうとする兵士を、ミゲルが呼び止める。
「ん? 何だい?」
ミゲルのデスクに近づいてくる兵士に、デスクの引き出しから取り出したチョコレートバーを握らせる。
「これ…子供さんにあげてくれ。」
短くそう伝えると、兵士の眼が大きく見開かれる。
「親子なんだろ? 俺、見てのとおり今はデスクワークが中心だから、さ…。」
ミゲルがPCモニタの方に視線をやりながら答える。画面には警備兵や収監者の名前が映っている。
画面を見た兵士は観念したように黙って、ただミゲルを見つめている。
「いや、何か他意がある訳じゃないよ。ただ、辛そうだなって思ったから…」
「もちろん、報告なんかするつもりはないさ。配属ミスは俺の責任ではないしね。」
兵士に笑いかける。
その笑顔を見て、ミゲルに他意がないことを分かってくれたのか、兵士の表情が和らぐ。
「あ…あぁ、ありがとう…」
兵士はようやくぎごちなく笑い、ポケットにチョコバーをしまう。
「それと、この警備の配置スケジュール、来週からあんたをあの子達となるべく逢える配置にするよう修正しておくよ。スケジュールの調整も俺に任されているからね。」
「…すまないな、気を使ってもらって…子供はまだ小さいし、妻はちょっと体が弱くてな…」
ミゲルは黙って微笑む。
(やはり今のこの国は、間違っている…)
「なぁ、あんた…」
少し迷ったが、ミゲルはその兵士の耳元に顔を近づけ、なにかを囁く。
聞いていた兵士の眼が大きく見開かれる。
「…幽霊…」
「そうだ。あんたもいつまでも家族に銃口向け続けるこんな生活、ごめんだろう?」
ミゲルと兵士は小さな声で話し込む。
事務室の入り口ドアの外で、ドアに背中を預けている男がいる。
だらしなく気崩した制服、無精ひげ、手にはコーラの缶。
メンドーサ中尉だ。
しばらく事務室から漏れ聞こえてくる、ミゲル達の小さな声に耳を澄ましていたが…
「…ちっ…」
中尉は小さく舌打ちをして、事務室から離れていった。
「まただ…」
端末の前でミゲルが呟く。
つい先程兵士から申告があった。
知らない間に、自分が死亡した事にされている、と。
確認してみると、確かにデータ上は死亡している。人事部に連絡して修正させているが、これで二回目だ。
「いくらなんでもガバガバすぎるだろ…」
おもわず愚痴が漏れる。
「…先月なんざ、とっくに戦死した偵察小隊のやつの名前が警備スケジュールに載ってたぜ。」
いつの間にか隣にいたメンドーサ中尉が、いつものコーラ片手に立っていた。
「死人に警備させる気ですか? って嫌味言ってやったら、慌てて死亡処理手続きしてやがったがよ…」
「戦闘中の混乱によるMIA(Missing in Action、戦闘中行方不明者)は、ある程度は仕方がないと思います。どうしても混乱状態になりがちですし、戦場によっては十分な追跡調査が難しい場合もあるでしょうから。」
「でも、さすがにこれはヒドイ…彼は戦闘中でもなんでもないのに、突然先日死亡処理がなされています。たぶんこっちの報告書にある、似た氏名の兵士のMIA報告と勘違いした結果だと思いますが…」
中尉も端末の情報を覗き込む。
「出身地も年齢も全然違うヤツじゃねぇか…適当にもほどがあるな。」
「例の長官の急な交代劇やらの影響もあって、混乱が助長されてるんでしょうけど、もうどの兵士がどこで生きて配備されているのか、どこで戦死したのか、把握できてないんじゃないですかね?」
「だろうな。最近じゃ、ちょっと生死が怪しい兵士に関する情報があると、事務的にポンポンMIA判定出してるって噂だ。もぅメチャクチャだよ、今の軍は…よっと。」
コーラの空き缶を、見事なコントロールで屑籠に投げ込むメンドーサ中尉。
「どうだい? これならいつ軍をクビになっても、プロリーグで食っていけそうだろ?」
ドヤ顔の中尉だが、ミゲルはどう反応していいやら考えあぐねているうちに、ふと思い出す。
「…あ、そろそろ行かないと…」
「うん? なんかあるのか?」
「ええ、収監者の若い女性が一人、今日出所することになってるんです。その案内と手続きにいかないと。」
「若い女ね…」
「どうかしましたか、中尉?」
書類を手に取りつつ、ミゲルが尋ねる。
「いや…よし、俺も行くよ。お前、この手続きは初めてだろう?」
「ええ、そうですけど…格別複雑な手続きでもなさそうですし、わざわざ中尉のお手を煩わせるほどの仕事では…」
「いいから、いいから。付いてってやるよ。ホレ、行くぞ。」
勝手に宣言し、部屋を出ていく中尉の後を、慌ててミゲルは追いかける。
受付カウンター前で待機していた若い娘に書類を渡し、収容所の出口まで案内する。
女性はやつれており、自由の身になれるというのに、表情は沈んだままだ。
七か月ほど前から収監されていたようだ。不自由な収容所生活で消耗しているのだろう、ミゲルはそう思った。
メンドーサ中尉は、手続きと説明をするミゲルの後ろで、黙ったままじっとその様子を眺めていた。
ミゲルは収容所の出口まで彼女を見送り、彼女に封筒を渡す。中身は金のようだが、封筒の厚みからして大した金額ではなさそうだ。
手渡された封筒をしばらくじっと見ていた女性は、突然その封筒を地面に叩きつけた。
「ふざけないでください、こんなもの…バカにしないで下さい!!」
突然の行動に困惑するミゲル。しばらく固まっていたが、地面に落ちた封筒を拾い上げ、ぎごちない笑顔を女性に向ける。
「えっと…あの、ここでの生活には、色々と不満もおありだったでしょうけど、今日からは自分の家で生活できますね。気を付けて帰ってください。」
困惑しながらも、なんとか笑顔で彼女に挨拶するミゲルだが、女性の表情は硬いままだ。
唇をかみ、無言のままミゲルを見つめる彼女の眼に宿っている色は、明らかな敵意と激しい憎悪だ。
固く握りしめられた彼女のその手には、手紙のようなものが握られている。そして女性は…
泣いていた――
ミゲルと、その後ろでポケットに手を入れて立っているメンドーサ中尉にも視線を向け、無言でにらみつける。
「私…兄のこと、一生忘れません…絶対に貴方達を許しませんから…」
女性はそう告げると、くるりと踵を返してそのまま収容所のゲートを出ていった。
ミゲルは訳が分からないまま、呆然とその後ろ姿を見送るしかなかった。
「…そりゃぁ収容所の暮らしは快適ではなかったんだろうけど、収監者の待遇を決めているのは俺じゃぁ…」
思わずそう呟く。ミゲルはあの女性とは、ほぼ面識はないはずだ。
もちろん、収容所内ですれ違ったりしたことぐらいはあるだろうが、先ほどの手続きまで、彼女の名前すら知らなかったのだ。
あそこまで激しい敵意を向けられるほど、恨みを買う覚えは無いはずだ。
理不尽な彼女の対応に、それでも声を荒げる気にはなれなかった。
自分に向けられた彼女の眼に込められた憎悪と悲しみと涙が、ミゲルにそれをさせなかったのだ。
「そうじゃねぇよ、ミゲル。」
予想外の出来事に立ち尽くすミゲルの肩に、背後から中尉の手が置かれる。
「あの娘な…兄貴が徴用兵だったんだ。」
「徴用兵…じゃ、彼女も人質に取られていた収監者だったんですか…?」
「あぁ、兄貴の方は、俺の昔の部下だったからな…兄貴が戦死して、人質としての利用価値がなくなったから解放されたのさ。」
「…第14小隊、知ってるだろ?」
第14小隊、国境付近に配備されていた部隊だ。
一カ月程前に、侵攻してきた隣国軍との戦闘で全滅したと聞いている。
確か、全員が徴用兵で構成されていた部隊だ。
隣国軍の侵攻を迎え撃っていたが、兵力に圧倒的な差があった。
援軍要請を出していたが、結局全滅したらしい。
不思議なのは、すぐ近くに士気も錬度も高く、装備も充実している政府軍正規兵部隊の大部隊がいたのに、彼らは援軍に動かなかったというのだ。
食堂で兵士達の噂を聞いた。
第14小隊は、見殺しにされた、と――
「隣国軍との戦いで、正規兵部隊の損耗を抑えるために、まずは徴用兵だけで構成される第14小隊をぶつけて、隣国軍侵攻部隊の戦力を少しでも削ってから、正規兵部隊を投入したかったんだろうな…」
「要するに、少しでも敵戦力を減らすために、捨て駒にされ、すり潰された捨て石部隊だった、って訳だ。」
メンドーサ中尉が呟く。その表情からは、いまいち感情が読み取れない。
「ひどい話です…でも、その作戦を指揮したのも、捨て駒にする判断を下したのも俺じゃあ…」
「そんなことは分かってるさ。あの娘もな。」
「ミゲル、お前が悪い訳じゃないことぐらい、あの娘も解ってるのさ…でも、誰かに感情をぶつけなきゃ、やりきれない。」
「…………」
ミゲルは何も言えない。
「お前があの娘に渡そうとしたその封筒な、遺族年金さ。はした金もいい所だ。」
「兄を無謀な絶対死守命令で死地に送り込んだのはお前じゃない。援軍を出さなかったのもお前じゃない。自分を人質に取って収容所に収監させたのも、お前が悪い訳じゃない…」
「そんなこと、あの娘にだって、解っているのさ。」
中尉は繰り返す。
「あの娘、手紙持ってたろ? 家族を人質に取られている兵のほとんどは、収容所の家族と頻繁に手紙のやり取りをしてるからな。多分、兄貴からの手紙に、自分達が捨て石にされていること、書いてあったんだろうな。」
「あの娘にとって、分かってはいても感情をぶつける先が必要だったんだ。」
「そして、お前や俺が、その時目の前にいた。」
ミゲルは黙っている。
「あの時のあの娘にとっては、あらゆる理不尽と憎悪の対象である軍の象徴が、たまたま目の前に立っていた政府軍の制服を身に着けた、お前と俺だったのさ。」
「…中尉は、こうなることを知っていたから、俺についてきてくれたんですか?」
「まぁ予想はしてたさ。俺自身、過去に何度も出所者に捨てゼリフを吐かれてる。」
「息子が戦死した母親には、『いつか殺してやる』って言われたこともあったな…」
去っていく女性の背中に視線を送りながら、中尉のセリフにはどこか自嘲の響きが感じられた。
「だから気にするな、ミゲル。お前のせいじゃないし、お前が悪い訳じゃないんだ…考えすぎるなよ。」
「…有難うございます、中尉。でも、やっぱりおかしいですよ、こんなの…」
「だけど、どうしてやることも、俺達には出来ん。」
中尉がまっすぐミゲルの眼を見る。
「…お前も妙なことは考えんことだ、ミゲル。俺達末端の一兵卒が声をあげたところで、世の中は何も変わりゃしない。上の連中は何の興味もないんだ。」
「世の中ってのはそういうモンだ。俺達にできる事なんてのは、多少の理不尽には目をつぶって、自分のささやかな生活と、家族を守るのが精々さ…」
そう告げると、中尉は最後にもう一度ミゲルの肩を叩き、兵舎に帰っていった。
今夜だ――
ミゲルは時計を見る。
ガブリエルから聞かされていた時刻まで、もうすぐだった。
夜間歩哨の時間を利用して、これまで何度かガブリエルとも接触し、打ち合わせを重ねてきた。
今夜、この収容所に反乱軍が夜襲を仕掛けてくる。
すでにミゲルは、生霊として見込みのありそうな兵士たちに密かに接触し、何人かを仲間に引き入れていた。
彼らは皆、どこかの収容所に家族や恋人を人質として取られている者たちだった。
中には、よりによってこの収容所に家族が収監されている者もいる。
毎日、自分の家族に銃口を向けて監視する仕事に、極度の疲労を覚えている者たち。
そんな兵士たちは、僅かな躊躇いの後、ミゲルの誘いに乗った。
今夜の夜襲に呼応して、彼ら生霊も動き出す手はずになっている。
予定時刻まで、あと10分…。
PC端末を叩きながらも、ミゲルは壁掛け時計を何度も見る。
「随分時計を気にしてるようだが、お気に入りの番組でも始まる時間か?」
事務所に入ってきたメンドーサ中尉が声をかけてくる。
もちろん、手にはいつもの缶コーラ。
「何なら、ちょっとぐらい大目に見てやるからテレビ見てきていいぞ」
いつものように、いい加減な態度と口調で笑う。
「あぁ、いえ。そういう訳ではないんですが…勤務時間中のテレビはどうかと思いますよ。中尉はよくテレビ見てるんですか?」
「そりゃまぁ、たまには息抜きも必要だろ?」
「たまに、ですか…」
何か一言言ってやろうかと思ったが、やめた。
勤務時間中にテレビを見てサボっている中尉と、今夜の襲撃を教えずに軍を裏切ろうとしている自分。
どちらが罪深いのだろう。
そう思うと、何かを言う気にはなれなかった。
他人に偉そうに言える立場じゃないだろう…。
「どうも、やはりお前は固っ苦しくていかんな」
中尉はバツが悪そうに頭を掻くと、タバコに火をつける。
そしてコーラの空き缶を灰皿代わりに、一服始めた。
事務所内は禁煙なのだが、これも中尉なら今さらだ。
「なぁ、ミゲル…」
「はい? なんですか、中尉?」
「この前の解放された娘のこと、何度も言うが気にするな。少なくとも、お前が悪い訳じゃないことだけは、はっきりしている」
「はい。分かっています…でも、中尉は何も感じないんですか?」
「俺だって、これで良いだなんて思っちゃいないさ。だけど、どうしてやることもできないのも事実だろ?」
中尉は煙を吐き出す。
「お前があの娘を、政府軍の軍服を着たまま慰めてやれるのか?」
「……」
「余計に怒らせるだけだぜ」
中尉は続ける。
「お前が、あの娘の兄貴を生き返らせてやれるのか?」
もちろん、ミゲルには答えられない。
中尉の言うことは正論だった。
達観したような中尉の言葉に、以前のミゲルなら反論したかもしれない。
だけど、今は違う。
政府軍の軍服を着たままでは無理でも。
兄貴を生き返らせてやることはできなくても。
新しい悲劇が生まれるのを、少しでも減らすことはできるかもしれない。
少なくとも、そのために戦うことはできる。
幽霊となった、今ならば――。
「お前も俺みたいに、多少はテキトーにやることを覚えたほうが良い」
中尉が言う。
「でないと、お前みたいな生真面目で責任感の強い奴ほど、あれやこれや全部自分一人で背負い込んで、勝手につぶれていくんだ」
そこで一度、言葉を切る。
「俺は何人も、そういうやつを見てきて…」
ドズンッ!!
中尉の言葉を遮るように、何かの爆発音と衝撃が事務所を揺らした。
(始まった…!!)
ミゲルの身体が硬くなる。
もう、後戻りはできない。
「何だ、今の音!?」
メンドーサ中尉が、音の聞こえてきた方角へ視線を向ける。
事務所の外の廊下も騒がしくなる。
「おいっ、何だあの爆発音!?」
「分からん、とにかく歩哨に連絡を取れ!!」
「武器も持っていけ! ちゃんとヘルメットも被っとけよ!!」
何人もの兵士が慌ててヘルメットの顎紐を締め、銃を手に走っていく。
そろそろ、他の生霊たちもそれぞれの役割を果たすために動き始めているはずだ。
ミゲルは手近な無線を手に取り、本日の夜間歩哨のスケジュールを素早く確認すると、連絡を取る。
「…分かった、こちらもすぐに援軍に向かう!!」
無線の向こうでは怒号が飛び交っている。
突然、どこからか攻撃を受けたらしい。
もちろん、ミゲルにはその攻撃の正体が分かっている。
「…中尉。歩哨が攻撃を受けたようです。単発の攻撃ではなく、本格的な攻撃だそうで、援軍の要請が出ています。我々も行きましょう」
ミゲルは近くに置いてあった愛銃を手に取る。
銃には事前の打ち合わせで空砲を装填してある。
他の生霊たちも同様だ。
「分かった…ちっ、めんどくさい夜になりそうだ…!!」
中尉も自分の銃を手に取る。
二人は事務所を飛び出し、収容所の入り口を目指して走り出した。
タタタタタタタタタ!!
外では、すでに銃撃戦が始まっているようだ。
軽快なフルオート射撃音が響いている。
ミゲルは、自分の被ったヘルメットに貼り付けた蛍光塗料のテープを確認する。
生霊であることを示すマーク。
これを付けている兵士は、銃もすべて空砲となっているため、反乱軍からは狙われないよう事前に打ち合わせてある。
ミゲルは手近な土嚢の陰に飛び込み、物陰に潜んでいる敵らしき影に向かって射撃を開始する。
近くの見張り櫓に立っている人影にも、ヘルメットに蛍光塗料のテープが貼られているのが確認できた。
ミゲルがチョコレートバーを渡した兵士だ。
彼もまた、見張り櫓の上から空砲を撃っている。
外から撃っていた人影の中から、誰かが飛び出した。
そのまま収容所の入り口へ向かって走っていく。
ガブ…!!
マズい。
入り口には、兵士三名が待ち構えているはずだ。
銃を抱えて入口へ走っていくガブリエルに向けて、ミゲルが叫ぶ。
「おい!! 入口に向かったやつがいる!! 止めろ!!」
ガブリエルに直接注意を呼び掛ける訳にはいかない。
だが、ガブリエルはミゲルの声と、その意味するところに気づいたのだろう。
すぐには入口へ飛び込まず、その脇に身を隠した。
そして、手榴弾のピンを抜く。
入口へ投げ込む。
ガブリエルは身を伏せた。
ドンッ!!
入口から爆風と鉄片が噴き出し、内部からの銃撃が止む。
そのまま何名かの仲間を伴って突入する寸前、ガブリエルがちらりとミゲルの方を向いた。
礼を言うように、ニヤリと笑う。
うまくやれよ、ガブ…。
そう念じながら、ミゲルは再び暗闇の人影に向けて、土嚢の陰から空砲を撃ち続ける。
「くそっ!! 反乱軍の襲撃か! まだ無事だな、ミゲル!?」
メンドーサ中尉が、顎紐を掛けないままのヘルメットを手で押さえながらミゲルのそばへ来て、土嚢の陰にしゃがみ込む。
「中尉…えぇ、おそらく反乱軍でしょうね」
ミゲルたちが隠れている土嚢から、少し離れた位置の遮蔽物が吹き飛ぶ。
迫撃砲だ。
収容所入り口の鉄の扉は、すでに破壊されている。
最初の爆発音は、迫撃砲でこの扉が吹き飛ばされた音だったのだろう。
せわしなく動くサーチライトが辺りを照らす。
だが、すぐに銃撃を受けて破壊される。
「中尉、連絡は? 援軍無しでは、このままでは守り切れないかもしれません。」
「反乱軍…とかどうか、まだ断定はできませんが、襲撃者の戦力は思ったより多い…」
もし援軍が要請されているのなら、なんとかその情報をガブリエルたちにも伝えねばならない。
「すでに援軍要請はしてあるようだが、距離が遠すぎる…俺たちだけで何とかするしかねぇ…」
中尉のその言葉に、ミゲルは内心で安堵する。
だが、それを表情には出さない。
「それよりもな、ミゲル…」
メンドーサ中尉が手榴弾を投げ、ミゲルのほうに顔を向ける。
「上の方からの命令だ。守り切れないなら、収監者を処刑しろってな…」
「処刑!? そんな…メチャクチャだ…」
絶句するミゲルに、中尉が笑う。
だが、その目は笑っていない。
「上の考えそうなことだ。人質を奪還されるぐらいなら、皆殺しにして、今後の襲撃をさせないように見せしめにしろ、ってことだろうな」
中尉がペッ、と唾を吐く。
「それを…俺にも命じるのですか、中尉は?」
ミゲルがメンドーサ中尉の眼をまっすぐ見つめる。
土嚢に突き刺さった銃弾が、土煙を上げる。
「ふん…ミゲル曹長」
メンドーサ中尉が口調を改める。
「は、はい!!」
思わずミゲルも居住まいを正す。
「貴官はこのまま、この持ち場を死守せよ。私は警備が手薄な裏口の援軍に回る」
中尉は一拍置いた。
「我々は命令を遂行しようとした。しかし、すでに収監者の房の周りには敵が侵入しており、近づくことができない。よって、現場の判断で持ち場の維持を優先するものとする」
「中尉…」
「けっ…多少の理不尽には目をつぶって…とは言ったが、さすがに俺だって、こんな滅茶苦茶な命令なんざ聞けるかよ」
中尉はニヤリと笑う。
「俺たちは任務を遂行しようとしたが、無理でした。これでいいのさ」
「なんなら上への報告は、『コーラ片手にサボってました、サーセンww』で済ますさ」
「俺には人質に取られた家族もいないしな。お前は俺の上官命令に従っただけだ」
「…はい!!」
ミゲルの顔が明るくなる。
「じゃあな。俺はこのまま裏口の援軍に行く。裏口に装甲車が突入してきたらしい」
中尉は立ち上がる。
「こんなクソッたれな戦いで死ぬんじゃないぞ、ミゲル」
そして、ふと思い出したように付け加える。
「あぁ、それとな…ヘルメットの顎ベルトは外しとけ」
「ベルト…ですか?」
「軍の教本じゃ、しっかり締めろと書かれている、だろ?」
中尉は自分のヘルメットを軽く叩く。
「だけど戦場では、それが常に正しいとは限らねぇのさ」
その瞬間。
見張り櫓がグレネードの直撃を受け、吹き飛んだ。
爆風が、ミゲルたちの隠れている土嚢の辺りに散らばっていたゴミを吹き攫っていく。
慌てて中尉が頭のヘルメットを飛ばされないよう手で押さえ、土嚢の陰に伏せる。
頭上まで飛んできたサーチライトのガラス片から身を守る。
「ほれ、見たろ?」
中尉が笑う。
「敵さん、爆発物もたんまり持ち込んでやがる」
「顎ベルトを締めてるとな、爆風で煽られてヘルメットが引っ張られた拍子に、首の頸椎が抜けたり、首の骨をへし折られたりする場合があるんだ」
中尉はヘルメットを押さえながら続ける。
「それなら、ヘルメットを飛ばされるだけの方がマシなのさ…じゃぁな」
そう告げると、メンドーサ中尉はミゲルに右手を上げる。
銃撃がやんだ隙を見て、遮蔽物を伝いながら裏口へ向かっていった。
中尉が無事に建物の影に消えていったのを確認してから、ミゲルはヘルメットの顎ベルトを外した。
突入したガブリエルたちは、内部の敵兵を銃撃と手榴弾で排除しながら、収監者たちが捕らえられている房を目指す。
房の位置や、そこに繋がるルートは、事前に生霊たちから情報を得ている。
ガブリエルの率いる小隊の前方で、廊下の角にいた敵兵が突然、悲鳴を上げ倒れる。
慌てた様子で後ろを振り向いたもう一人の敵兵が、何かを喚きながら背後に向けて銃撃を始める。
「今だ!! 撃て!!」
ガブリエルたちが、背後を見せた兵士を銃撃で仕留める。
その向こうから、生霊の印をつけた兵士と共に現れたのは、反乱軍兵士ではなかった。
普段着を着た、どう見ても一般人だ。
男女、老人、子供までいる。
銃を握っているのは若い男性だけだ。
皆、やつれた表情をしている。
若い男たちだけは、ぎこちない手つきで銃を握っていた。
生霊たちが襲撃に呼応して収容房を解放し、人質たちにも武器を手渡して、内部からの撹乱を行っているのだ。
もちろん、人質のほとんどは銃など使ったこともない一般人だ。
それでも、生きるかどうかの瀬戸際である。
少しでも勇気のある者は、慣れない銃を手に取る。
彼らもまた、家族を守るために戦っているのだ。
ガブリエルの指示で何名かの部下を護衛につけ、輸送車両やブラッドレイが待機している出口へ分散して移動を開始させる。
何名かの反乱軍兵士が倒れた。
慣れない銃の扱いで、自分の足を誤って撃ち抜いてしまう人質もいた。
それでも、死者を出すことなく輸送車両までたどり着く。
政府軍の士気はもろく、投降する者もいた。
移動する人質たちを見ると、目をそらして銃撃をやめる者もいる。
中には、上官と共に彼らを見逃す政府軍兵士もいた。
彼らとて、自分の家族ではなくとも、人質に取られている者のほとんどが、ただの無辜の一般市民であることは理解しているのだ。
いかに職業軍人といえど、大義なき戦いに忠誠心だけで最後まで戦える人間は、そう多くはない。
やがて、聞こえてくる銃声や爆発音もまばらとなり、制圧・解放作戦は終了した。
生霊たちの内部撹乱もあり、最低限の犠牲者で作戦は成功したと言っていいだろう。
襲撃開始と共に、生霊たちは収容所内の通信を遮断。
欺瞞情報を現場の混乱に偽装して発信し、収監者たちの房を解放。
重火器を収めた武器庫の鍵を隠し、送電線を切断し、弾薬庫を爆破した。
「終わったな…」
動く者のいなくなった収容所で、ガブリエルがミゲルに話しかける。
もう動いている人影は、反乱軍兵士と最後の収監者たちだけだった。
ガブリエルは手に何枚かのドッグタグを持っている。
幽霊志望の兵士から集めておいたものだ。
ガブリエルはそのドッグタグを辺りの血だまりにつけ、あえて血まみれにする。
そして、死亡している政府軍兵士たちの周りに落としていく。
「これで、このドッグタグに刻まれている兵士はMIA認定されるはずだ。」
「ああ。最近の政府軍の追跡調査なんかデタラメもいいところだ。これで幽霊になった兵士の足跡をたどられる心配はないはずだよ。」
ミゲルも自分のドッグタグを、頭部を吹き飛ばされ身元不明となった兵士の遺体のそばに落とす。
代わりに、その遺体が本来身につけていたドッグタグを回収する。
この兵士にも、人質に取られた家族はいたのだろうか。
人質に取られていなくても、待っている家族がいるのかもしれない。
なにより、短い間だったが、この名も知らぬ兵士もまた、ミゲルの同僚だった。
ミゲルは、亡くなったかつての同僚たちのために目を閉じ、十字を切った。
安らかに眠ってほしい…。
俺は今日から幽霊となって、あんたたちとは違う道を行く。
「ゆくのか、ミゲル」
背後から不意に声をかけられ、目を開けてミゲルは振り向く。
メンドーサ中尉だった。
顔中泥まみれ。
服はあちこちが破れ、血も滲んでいる。
反乱軍兵士たちが一斉に銃を向ける。
「待ってくれ!! この人は…この人は、そうじゃないんだ…」
ミゲルが周りを制する。
しかし、「敵ではない」との言葉までは出てこない。
ガブリエルも中尉に銃口を向けてはいる。
だが、引き金にはまだ指をかけていない。
もしこの男が政府軍のままなら、声など掛けずに後ろから銃撃していたはずだ。
だが、銃は持っていない。
素手だ。
何より、その眼には戦意も敵意もない。
「おっと、見てのとおり、もうやる気はねぇよ。撃たないでくれよな」
メンドーサ中尉が両手を上げ、抵抗の意思がないことを示す。
「投降するのか? だが、あんた職業軍人だろ? 家族は人質に取られてはいないんだろう?」
ガブリエルと部下が、油断なく中尉に銃口を向けたまま聞く。
「メンドーサ中尉、中尉もこのまま俺たちと一緒に…」
ミゲルが割って入る。
しかし――。
「おっと、それ以上は言うな、ミゲル」
中尉は笑う。
「俺は、お前たちと一緒に行く気はねぇよ」
「言ったろ? 今の安定した生活を捨てる勇気は俺にはねぇよ。政府軍と命がけでドンパチやるなんて、冗談じゃない」
そう言って笑う。
だが、それは自嘲気味の笑いだった。
「お前たちの…幽霊っていうんだっけ? 幽霊になった奴らのことは、上には戦死したと報告しとくよ」
「俺にできるのは、それぐらいだ」
「メンドーサ中尉…」
「生きろよ、ミゲル」
中尉の声が少しだけ低くなる。
「こんな腐った国のために生きる人生、お前にゃ向いてねぇよ」
「気づいていたんですか、中尉?」
ミゲルが問う。
「まぁな」
中尉は肩をすくめる。
「お前、ウソつけるタイプじゃねぇんだもん」
「…」
「お前さ。以前、俺が世話になった上官殿に似てるんだよ」
「え…?」
「お人好しな上官でよ」
中尉は遠くを見る。
「部下のことを第一に考えてくれてた。何かあると、すぐ部下の待遇改善だの配置換えだので上層部に噛みついてくれてた」
「そのせいで上からは煙たがられて、出世コースからは外されてたけどな。ハハッ」
中尉はタバコに火をつける。
「何でもかんでも自分でしょい込む性格でよ。なんかあると、『俺に任せろ、俺が何とかするから』と…」
一度、煙を吐く。
「『責任は俺が取る。それが上官の義務だ』が口癖だったよ」
「お前と同じ、生真面目すぎる人だったよ…」
タバコを咥えたまま、メンドーサ中尉は遠い目をする。
「危険で無謀な強行偵察を俺が命ぜられた時も、なんやかんや理由をつけて自分で肩代わりしてくれたよ…」
「そして結局、その任務で戦死しちまった…」
「後で知ったんだ」
中尉の声が、わずかに掠れる。
「その強行偵察は、敵の目を引きつけて、本隊の侵攻から目をそらさせるための囮…最初から捨て駒にする作戦だったことをな」
中尉の手元から、タバコの灰がポロリと落ちる。
「この後、生き残った俺も、またどこか別の基地に配属されると思う」
「お前たちと一緒に幽霊になる気はないが…」
中尉は、ミゲルを見る。
「その基地にお前たちが来たときは…」
タバコをブーツの裏で踏み消す。
「そん時は、裏口のドアの鍵ぐらいは内側からこっそり開けてやる」
「俺にできるのは、それぐらいだからな…」
そう告げると、メンドーサ中尉は背を向けて歩き出した。
もう、振り向くことはなかった。
爆乳酪農家狙撃兵ホルスタイン零-zero-
第六話 向けられる憎悪
終わり




