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第15.5話
夕暮れの外交局は、昼間の喧騒が嘘のように静かだった。
廊下を歩く職員の姿もまばらになり、執務室には紙をめくる音だけが響いている。
エリアスは机の上へ一冊の古い記録簿を広げていた。
何度も読み返された頁は端が擦り切れ、ところどころに小さな書き込みが残っている。
「局長。」
若い職員が書類を抱えて部屋へ入る。
「まだお帰りにならないのですか。」
「もう少しだ。」
職員は机の上の記録簿へ目を向けた。
「また、その資料ですか。」
エリアスは視線を落としたまま答える。
「ええ。」
「十五年前のことでしょう?」
しばらく沈黙が続く。
やがてエリアスは静かに口を開いた。
「第三使節団だけが、帰ってきた。」
それ以上は語らなかった。
若い職員も、それ以上は尋ねなかった。
「失礼します。」
部屋を出る音が遠ざかる。
エリアスはゆっくりと記録簿を閉じた。
そして、机の引き出しを開ける。
中には一枚の古い書類が、丁寧に保管されていた。
その紙へ一瞬だけ視線を落とすと、何も言わず再び引き出しを閉じる。
部屋には、時計の針だけが静かに時を刻んでいた。
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