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第11.5話
王都アストレアの中央市場は、昼前から人で賑わっていた。
野菜を並べる者。
魚を売る者。
焼きたてのパンの香りが石畳を流れ、買い物客の笑い声が絶えない。
そんな喧騒の片隅で、西街道から戻った商隊の男たちが荷を下ろしていた。
「やっと帰れたか。」
荷袋を抱えた男が腰を伸ばす。
「今回はずいぶん時間が掛かったな。」
別の男が水袋を差し出した。
「道は空いてたんだがな。」
一口飲んでから、男は首をひねる。
「妙に静かだった。」
「静か?」
「ああ。旅人も少ねぇし、商隊ともほとんどすれ違わなかった。」
近くで荷を運んでいた若い商人が話へ加わる。
「そういや、俺も聞いたぞ。西へ行く荷車が減ってるって。」
「景気のせいじゃないか。」
年配の商人が笑う。
「それだけならいいが。」
最初の男は少し考え込んだ。
「鳥も少なかったな。」
「鳥?」
「いつもなら街道沿いで嫌ってほど鳴いてるだろ。」
「そう言われれば……。」
ほんの一瞬だけ、その場に沈黙が落ちた。
しかし次の瞬間には、魚屋の威勢のいい声が市場へ響く。
「さあ、新鮮だよ! 今朝獲れだ!」
笑い声が戻り、人の流れが動き始める。
年配の商人が肩をすくめた。
「まあ、また噂だろ。」
誰も、その言葉に反論しなかった。




