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剣道七級の俺が、異世界で鋼鉄の「機巧武者」を駆り、帝国の蒸気演算を粉砕するまで 【全61話完結】  作者: 角乃とうふ
最終章 招かれざる転生者、戦いのその先へ――

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第五十七陣 新たなる援軍、苦闘の防戦

 尋人たちの上空に到達した一艘(いっそう)の合衆国飛行船のハッチが、開放される。

 まばゆい青空を背景に、巨大な質量が、二股口の戦場へと猛烈な勢いで降下した。


 ドォォォンッ! ドォォォンッ!


 激しい土煙を巻き上げ、大地を爆裂させて着地した二機の機巧武者。

 一機は、陽光を反射して鋭く輝く白銀の装甲を纏った氷閃(ひょうせん)。そしてもう一機は、戦場には不釣り合いなほどに華美で、圧倒的な威容を誇る極彩色の重装甲機――女帝・瑛華(えいか)鳳凰(ほうおう)だった。


「佐藤! すまない、遅くなった!」

「借りを返しに来たぞ、皇國の戦士よ」


 通信機から響く、白龍(ばいろん)の熱い叫びと瑛華の心強い声。大秦国の誇るその機体は、着地と同時に素早く身を翻し、クラウスと桔梗を背後に庇うようにして、漆黒のイワンに相対した。


「白龍! 瑛華様まで! ――来てくれたのか!」

「約束したはずだ! 次は必ずお前の剣になると!!」


 白龍の言葉に、尋人は胸が熱くなる。エレナたちの応急処置でボイラーの火は繋がっている。この頼もしい援軍がいれば、イワンを打ち破れるはずだ――そう希望を抱いたその時だった。


「私の美しい計算の前に、これだけイレギュラーな要素を並べたてるとは……。まあいい。邪魔者をまとめて排除するには良い機会だ。見せてやろう。お前たちの絆とやらが、効率的なシステムの前では、いかに無力であるかをね」


 イワンがそう言うと、その後ろに控えていた六機の無人機巧武者(スチームナイト)が、まるで一つの生き物のように滑らかな挙動で前に出る。その動きは、「断続的連動演算術式」によって完全に統制されていた。


「チッ、来やがったな! 白龍、瑛華様、奴らの連動は尋常じゃない! 気を付けてくれ!」

「言われるまでもない! ――はあああッ!!」


 尋人の警告に応じるように、氷閃が地を蹴った。合衆国の最新技術によって限界まで出力を底上げされた白銀の機体が加速する。その右手に握られた巨大な青龍刀が、大気を引き裂く鋭い風切り音を立てて無人機巧武者の一体へと振り下ろされた。

 防げるはずのない、神速の一撃。


 キィィィィィンッ!!


 しかし、氷閃の青龍刀が届く直前、斜め後ろにいた別の二機が、寸分の狂いもない超高速のステップで割り込み、カイトシールドを掲げてその刃を受け止めた。凄まじい衝撃波が街道を吹き抜ける。


「なっ……!? 防陣の展開速度が速すぎる!」

「退け、白龍! 我の前に立ち塞がる不遜(ふそん)な人形どもめ、消し飛ぶが良いわ!」


 すかさず瑛華の鳳凰が躍り出る。その巨大な三節棍が、変幻自在の軌道を描きながら、三機を襲う。一撃で複数をまとめて粉砕せんとする、猛烈な質量攻撃。


 だが、無人機巧武者たちは鳳凰の攻撃が到達する「確率」を瞬時に演算していた。

 三機が同時に跳躍して三節棍の打撃軌道から逃れると同時に、残る三機が鳳凰の死角へと完璧なコンビネーションで回り込む。


「させるかあっ!」

「――通さぬ!」


 尋人のクラウスと凛の桔梗がそれを遮るように割り込むが――。


 ズウゥゥゥゥン……ッ!!


 ヴェレスから放たれる黒蝕領域(アビス・フィールド)がさらに色濃くなった。瞬く間に増幅された暗黒の陰が尋人たちを包み込む。

 コックピットの計器が激しく明滅し、せっかく回復した機体の出力がジリジリと、しかし確実に奪われていく。合衆国の最新技術で強化されたはずの氷閃と鳳凰も、その動きが目に見えて重くなり、駆動系が悲鳴を上げた。


「くっ、何だこの不快な波動は……!? 腕が、機体が重い……っ!」

「バカな、鳳凰の特殊装甲まで透過して出力を削ってくるだと……!?」


 白龍と瑛華に焦りの色が走る。この弱体化(デバフ)波動の領域では、全ての有人機の出力が削がれていくようだった。やがて、クラウスと桔梗を包んでいた「光の年輪(オーラ)」までもが消失していく。それを待っていたかのように、無人機巧武者が反撃に転じた。


 シュババババッ!!


 片手剣を引き絞った六機が、動きの鈍ったクラウスらの隙を突き、前後左右から容赦のない激しい刺突を同時多発的に仕掛けてきた。一撃をどうにか捌いても、間髪入れず、死角から次なる一閃が突き刺さる。息つく暇もない圧倒的な波状攻撃の前に、尋人たちは完全に守勢に立たされた。


「くそっ、互いを庇う動きまで先読みされているのか……っ!?」


 尋人はクラウスの大太刀を必死に振るい、僚機の背後を狙う刺突を辛うじて弾く。だが、弱体化の影響で機体の追従性が目に見えて遅れていた。強烈な火花を散らして防いだ直後には、すでに別の刃がクラウスの装甲を容赦なく削っていく。

 それは、凛たちも同様だった。仲間の死角を埋め合おうとする「絆の連携」が、「断続的連動演算術式」によって瞬時に割り出され、裏をかくようにすり潰されていく。尋人たちは完全にイワンの計算の檻の中に閉じ込められ、防戦一方の極めて泥臭い苦闘へと追い込まれていった。


「フフフ、無駄なあがきだ。お前たちの動き、戦術の癖――全てはすでに我がシステムの中にインプットしている。完璧な演算式の前に、お前たちの機巧武者は遠からず、完全に沈黙する」


 黒蝕領域(アビス・フィールド)の中心で、不気味に静止したままのヴェレス。

 計算し尽くされた無人機による波状攻撃と、容赦なく出力を奪い続ける弱体化(デバフ)波動。尋人たちは、敗北へのカウントダウンをジリジリと突きつけられていた。

かつての戦友との共闘も、イワンには届かない……。

次回、この絶望的状況を打破する手はあるのか!?


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