↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣道七級の俺が、異世界で鋼鉄の「機巧武者」を駆り、帝国の蒸気演算を粉砕するまで 【全61話完結】  作者: 角乃とうふ
第四章 不夜の海市、偽りの仮面 

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/61

第十八陣 誕生! 新生クラウス

 海市(かいし)での激闘から数日。特務隊本部へと帰還した尋人たちは、休む間もなくクラウスの改修に取り掛かっていた。

 地下の整備ドックでは、夜を徹して金属音が鳴り響いている。


「詩織さん、第四回路の霊子バイパス接続、急いで! 霊子結晶の出力に耐えられるように、導線を二重化するわよ!」

「了解! 霊子硝子盤の術式改訂も同時に進めます。全体情報量を現行の二倍に引き上げるわ!」


 作業用足場の上で、エレナと詩織が比喩ではなく、本当に火花を散らしながら叫び合っている。

 中央に鎮座するのは、尋人の愛機クラウス。その姿が生まれ変わろうとしていた。白龍(ばいろん)から託された霊子結晶と、海市(かいし)を去る直前に調達した希少な強化合金のパーツが、エレナの手で惜しみなく組み込まれていく。装甲の隙間から温かい光を漏らすクラウスを、尋人は眩しそうに見つめていた。


 * * *


 一方、その頃。

 微かな月光に照らされた黄色の瑠璃瓦が輝く大秦国の宮殿、最奥の玉座の間。

 青磁の香炉から立ち上る沈香(じんこう)の煙の向こうで、女帝・瑛華(えいか)は、豪奢な刺繍が施された旗装(チーパオ)の袖からそっと手を伸ばし、格子窓の向こうの繊月(せんげつ)を見上げていた。


「……そうか。白龍、お前がそこまで言う男が現れたか」


 金糸の龍が踊る黒い立襟の近衛礼装に身を包んだ白龍が、深く(こうべ)を垂れる。


「はい。佐藤尋人……彼は、帝国に抗う我らの光になるやもしれませぬ」


 瑛華は、冷徹な暴君の仮面を外し、吊り上げた(まなじり)をそっと下げた。その瞳に、白龍にしか見せない慈愛の眼差しを湛えて、遠い空を見つめる。頭上の翡翠(ひすい)の髪飾りが、冷たい月光を浴びて(ほの)かに輝く。


「帝国という巨大な影を、その少年が振り払えるかどうか……。一つ楽しみが出来たな……」


 静かに語る彼女の胸中には、白龍と同じ未来への微かな希望が、今宵の月のように静かに灯っていた。


 * * *


 クラウスの改修作業が完了し、初の起動実験を迎えた早朝の皇都。


「ヒロト、準備はいい?」


 搭乗準備をして待機していた尋人に、エレナが自信たっぷりの笑みを向けた。徹夜続きでクマを作っているが、その目はかつてないほど輝いている。

 尋人は無言で頷き、クラウスのコックピットへ乗り込んだ。ハッチが閉まり、目の前の霊子硝子盤が起動する。


「こ、これは……!」


 目の前に広がる硝子盤は、以前とはまるで違っていた。

 画面には、機体の各部現状や霊子量、地勢情報が全て表示され、随時更新されていく。それは、尋人がかつてやり込んでいた、TPS――三人称視点の銃撃ゲームのUIにどことなく似ていた。


「尋人君から聞いたゲームの話を参考に、霊子硝子盤の表示を一新してみました。気に入ってくれた?」


 詩織が眼鏡の奥の目尻を下げて、満足げに微笑む。

 さらに操縦(かん)を握ると、機体のレスポンスの感度に尋人は驚愕した。まるで、自分の手足がそのまま鋼鉄になったかのような、凄まじい一体感。


「すごいよ!! エレナ、詩織さん、ありがとう!」

「やれやれ、これでは吾輩の出る幕もなくなったにゃ」


 にゃん丸が少し残念そうに呟く。

 尋人は操縦桿をそっと倒し、機体を一歩踏み出させた。

 霊子結晶によって増幅された出力は、機体の周囲に陽炎のような揺らぎを生んでいる。地下格納庫から朝焼けに染まる地上へと出ると、そこには凛、蘭、弥生が並んで待っていた。クラウスの新調された強化合金のシリンダーが朝日を受けて輝き、排気筒からは陽炎(かげろう)と共に細かな光の粒子が舞い散っている。極限まで高められた出力が、機体に神聖な気高さすら(まと)わせていた。


「尋人、その新しいクラウス、とても綺麗……」


 凛が眩しそうに機体を見上げる。


「ああ。これが俺たちの反撃の狼煙だ」


 尋人はコックピットの窓越しに、地平線の彼方を見据えた。

 その先には、白龍のいる大秦国が、そして、この世界を支配しようとするインペトラル帝国がある。


「新生クラウス、出撃準備完了です!」


 詩織の澄んだ声が響く。


「新生クラウス、佐藤尋人、テスト起動を開始します!」


 蒸気の咆哮を上げ、機体が加速する。

 帝国との全面戦争、そして白龍と共に戦う日の予感を胸に、尋人はクラウスを力強く発進させた。


【第四章 完】

第四章「不夜の海市、偽りの仮面」を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!


皇都で刃を交わした白龍との共闘、託された霊子結晶で生まれ変わったクラウス。帝国との戦いに、新たな展開を予感させるラストだったと思います。


さて、第五章のタイトルは「大秦国炎上」です。

舞台はいよいよ大秦国へと移り、インペトラル帝国との全面戦争に向けて物語が一気に加速していきます。戦記ものらしい、度重なる激しい戦闘と二転三転する戦局、それぞれの生き様が交錯する群像劇が織り成す、激アツの展開が待っています!


もし「尋人と白龍の絆がエモい!」「新生クラウスの活躍が楽しみ!」「続きが気になる!」と少しでも思っていただけましたら、ぜひ尋人たちの戦いを応援してくださると嬉しいです!


ページ上部にある**【ブックマーク追加】や、下部の【評価(☆☆☆☆☆を★★★★★に)】**をポチッと押していただけますと、本作がより多くの読者様に届く大きなチャンスに繋がります。


それでは、動乱の気配漂う第五章でまたお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。