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剣道七級の俺が、異世界で鋼鉄の「機巧武者」を駆り、帝国の蒸気演算を粉砕するまで 【全61話・執筆済】  作者: 角乃とうふ
第三章 大秦国からの刺客

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第十二陣 歯車が噛み合う時

 機巧武者同士の激闘から一夜明けた皇都。

 大秦国の白龍(ばいろん)が敗れたことで、帝国軍の大半は撤退していったものの、戦いの火種は未だ(くすぶ)っていた。指揮系統を失い、皇都内に取り残された帝国の無人機巧兵(スチームドール)たちが、市街地のあちこちで局地的な暴走状態に陥っていたのだ。皇都守備隊と共に、六花分隊もその鎮圧任務にあたる。


「これより、六花分隊による残敵掃討作戦を開始する!」


 分隊長の凛が鋭い檄を飛ばす。

 尋人たち六花分隊に命じられたのは、南西の駅前広場に陣取る四本の鉄脚を持つ多脚自走砲(スチームクローラー)、計五機の排除。その無人機群は、分厚い装甲と砲門を外側に向けて、「方円」の陣を敷いていた。


「厄介ですね。奴ら、完全に防御に徹しています。しかも、広場への侵入路が狭く、クラウスの運用が難しい……」


 通信機から聞こえる詩織の声と共に、コックピット正面に据えられた「霊子硝子盤」に、赤い凸記号で敵機を示した街路図が転写されてくる。尋人は望遠レンズで目視しながら、その図面と現況を見比べた。


「蘭の『金剛』なら敵機の重装甲も粉砕可能ですが、迂闊に接近すれば一斉射撃の的になります」

「女は度胸! 当たって砕けろだ!」

「いや、砕けちゃ駄目ですよ蘭さん! 正面突破はリスクが高すぎます!」


 血気に逸る蘭を尋人はたしなめながら、クラウスのコックピットで、投影硝子のなかに示された敵機の配置と、味方の戦闘特性を照らし合わせていた。レンズ越しの実景と手元の戦略図……。なんだか、戦略シミュレーションゲームみたいだな、と彼は思う。ならば――


「……佐藤殿。何か策があるのか?」


 凛の問いに、尋人は短く頷いて答えた。


「あります。みんなの特性を活かした、『ヘイトコントロール』と『コンボ』を併用した殲滅作戦です」


「へいと……こんぼ? また妙な言葉を。だが、殲滅とは景気がいいにゃ!」


 尋人の横にいるにゃん丸が身を乗り出す。尋人は手短に説明した。

 進入路手前でクラウスが注目(ヘイト)を一身に集める隙に、敵機の一体に狙いを定める。詩織が状況分析とタイミングを計って指示を出し、蘭がその装甲を剥ぎ取り、凛が急所を突いて仕留める。次の攻撃に備え、弥生が二人に霊子補充を行う。これを断絶のない波のように繰り返し、敵に反撃の間を与えず全ての機体を沈黙させる、六花分隊が一丸となる波状攻撃。


「それぞれの役割(ロール)を繋いで、一つの巨大な生き物として動くんです。……いけますか?」


 しばしの沈黙。やがて通信機から、ふふっ、と凛が小さく笑う声が聞こえた。


「……面白い。武士の一騎打ちとは異なるが、極めて合理的だ。六花分隊、佐藤殿の策に乗る!」


 ――作戦開始。

 尋人はクラウスの操縦(かん)を押し出し、広場に続く隘路(あいろ)手前に躍り出た。


「こっちだ、ポンコツども!」


 多脚自走砲の五機が、一斉に砲口をこちらへ向ける。轟音と共に放たれた無数の砲弾。だが、指揮系統から切り離された敵機の攻撃は極めて単調で、軌道の予測は彼にとって容易(たやす)かった。

 クラウスは踊るように弾幕をかわす。五機は、完全に尋人という(おとり)に釘付けになった。


「敵が次弾装填準備に入るまで残り三秒……二……一……今です!」


 詩織の完璧なタイミングでのカウントダウン。その瞬間、尋人が叫んだ。


「蘭さん、凛さん! 連携開始(コンボ・スタート)! まずは右の一機から!」

「オラァァァァッ! くらえ!!」


 尋人の指示と同時に、死角から蘭が飛び出した。巨大な戦斧が、自走砲の分厚い前面装甲を無残に叩き割る。

 剥き出しになった機体の隙間へ、「蒼月(そうげつ)」を纏った凛が滑るように肉薄した。


「――六花が剣、四条凛。推して参る!」 


 閃刃。蘭がこじ開けたわずかな「道」を通り、凛の蒸気刀が動力部を一刀両断する。


「よし、一機撃破! そのまま次へ連携(コンボ)を繋げます!」


 敵が尋人から標的を切り替えるよりも早く、蘭の斧が二機目の装甲を砕き、間髪入れず、凛の刀が貫く。後方に控える弥生が、的確に霊子補充を行い、二人の機巧甲冑の出力を維持する。


 陽動、情報分析、装甲破壊と撃破、そして完璧な後方支援。

 彼らが「一人の武人」と化した連携は、無人機の陣形を紙細工のように切り裂いていく。

 五機の多脚自走砲は、ものの数分で完全に沈黙した。


「……信じられん」


 敵機の残骸を見下ろしながら、凛が呆れたように呟いた。


「無傷、しかも周囲の建物への被害も軽微……。佐藤殿、これが貴殿の戦の『術』なのか」

「みんなの腕が良かったからです。俺一人じゃ、ただ砲撃を避けることしかできなかった」


 尋人が謙遜すると、蘭が大笑いしながら通信を入れてきた。


「はっはは! 最高じゃねえか新人! いつもなら息が上がるはずなのに、今日はあっという間に終わっちまったぜ!」

「ええ、驚異的な効率です。佐藤さんの戦術眼……私の戦術演算を根本から書き換える必要がありますね!」


 詩織も、興奮冷めやらぬ様子で早口にまくしたてる。


「後方の霊子補充も、すごく安定して行えました! みんなの動きに無駄がないから、いつもみたいにカツカツにならなくて本当に助かりました! さすが佐藤様です!!」


 弥生もまた、安堵と喜びの混じる弾んだ声を響かせた。

 朝日に照らされた広場で、尋人たち六花分隊は肩を並べた。


 戦いの緊張から解き放たれた尋人は、ふーっと長い溜息を吐いた。


「……なんとか無事に終わって良かったです」

「ふぁ~、徹夜明けになったにゃ。夕凪亭に帰って、ゆっくりお茶漬けでも食べるにゃ」


 にゃん丸が呑気に前足で顔を洗う。こうして、六花分隊の長い緒戦が、静かに幕を下ろしたのだった。

はじめての六花分隊のチーム戦、いかがだったでしょうか?

次回、尋人たちが異国へ旅立つ予感……?

どうぞお楽しみに!


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