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激昂のイレギュラー  作者: 亜空獅堂
Phase8:白亜の閃光――虚構
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Phase8-4:白亜の閃光――虚構

『ふあぁぁぁ……』

 脳内の住人が、明らかにつまらなさそうに大あくびをかいた。

 アングは図書館のパソコン画面と向き合い、ヴィウスが書き記したエッセイ本の電子データを眺めていた。


 各席が三層の円状となって並ぶこの雄大な図書館では、今でも実体のある書籍が三百万冊ほど収められている。

 とはいえデジタル化は着実に進んでおり、今はそちらが主流。億単位のデータを、館内専用のパソコンで自由に閲覧が可能だ。

 その中には、ヴィウスの自伝的エッセイ本も含まれる。館内での累計閲覧数は、人気絵本の『ジャックとぶたの戦記』に次いで堂々の二位だ。


 この本を読んでみて、現時点で分かったこと……。

 ヴィウスの産まれ。それにまつわる美談。音楽への情熱。愛する曲目……などなど。

 中盤に近づけば近づくほど、アーマードや悪い組織との関連性といった欲しい情報からは遠ざかっているように思えた。


 当然、ユージーンが冷やかしの言葉をかけてくる。

『十五分も読んで進展なしなら、特に手がかりって言える内容も無いってことじゃねえのー?』

 彼は早く別の場所に行きたいのだろう。少なくとも、このような静かな場所ではないどこかだ。

 他の利用者の迷惑にならないよう、アングは吐息に混ざらせるような小声で文句を言う。

「少しは我慢ってものを知らないのか」


 するとユージーンの亡霊が、画面の左斜め上を指差す。

『チマチマ読まないでー、検索機能が付いてるんなら、もっと重要そうな単語から導き出してみろよ』

 デジタルに対応している本や資料の大半は、ワード検索でページの索引をすることができる。それはアングも分かっていた。

「じゃあ何を検索しろって?」

 ユージーンは上を向き、目を閉じて考え始めた。

『例えばそうだなぁー……。「感情」、とか』


 光明が差したような提案であった。

 この世界に隠された真実として、『感情』という単語は必然的に出くわす頻度が多くなる。

 それが彼の口から発せられたことは気に食わないと思ったが、アングは素直にキーボードへと手を伸ばす。

 言われた一単語を打ち込む。


 提案した張本人は、乾いた笑いと共に腕を組んでいた。

『と思ったけど、流石に露骨すぎて、敵様の警戒度としてはあまりにザル……』

「出た」

 エンターキーを押すと、ページが勝手に後半へと進んだ。

 該当項目は二箇所のみだが、間違いなく感情という単語を使用している。


 目が点になりかけたユージーンは、前のめり気味になってそのページを凝視する。

『マジかよ……。どれどれぇ?』

 そして丁寧に読み上げ始めた。

『音とは、感情の化身だ。人間が生み出した音には全て感情が宿っているとわたくしは思っている』


 あっという間に該当箇所は消化された。

 ここまでの内容だけを見れば、天才指揮者兼音楽家が、単に自分の音楽論をカッコつけて唱えているだけのように思える。



 話の続きが問題だった。

『それでいうと、わたくしは物足りなく感じる。果たして世の作曲家たちは、本心の音を奏でられているのだろうか。真実の音色なのか』


 アングは、粘ついた違和感に目を細める。

「こいつ、何が言いたい……?」

 仮にヴィウスが、人類から負の感情を取り去った一味の人物だとして、こんなことを言うだろうか。

 自分たちの意志で感情を消したのではないのか。

『けどわざわざエッセイに書き留めて出版するなんて、心の底からそう思ってるってことじゃねえの?』


 アングは、このエッセイがいつ出版されたものなのか、データ状の裏表紙を見て確認する。

 2223年……。今から二年前だ。

 アングは顎杖をつき、思考を限界まで突き詰める。

「こう仮定したらどうだ? 今の奴は何らかの組織に加入しているが、これを書いた当時ではそんな予定は無かったと――」



「だーれだ!!」

 白い光まみれだった筈の視界が、突如として暗黒に覆われた。

 ユージーンに意識を引きずり込まれた……わけではない。無駄に上ずった声を聞いた時点で正体は分かっている。

 アングは鼻で深く息を吐いた。

「図書館で大声を出す迷惑野郎」


 パッと、後ろから目を覆っていた両手が離れる。

 振り返れば、ワッと両掌を向けているポーズの見知った人物が、茶目っ気のある笑顔で立っていた。

「せいかーい! さすが、声だけで僕だって分かっちゃうんだなあ、アングは!」

 図書館で……と忠告したにも関わらず、パチパチと拍手しながらまだ歓喜の声を張り上げている。

 幼馴染のジョイ・フルーレの訪問に、アングは溜息をついた。

「昨日の恩がなかったら無視してたところだ」


 ここに来る前に彼から着信があった。家出中の身であるため、本来ならば電話に出るべきではない。

 しかし、彼が機転を利かせてくれたおかげで、ハルという警察からの追求を逃れられた。流石に無視はできないと思ってしまった。

 その結果、彼がこうしてやって来たわけだ。

「そうは言いつつもちゃんと待っててくれるんだから、やっぱり優しいね!」

 ウィンクと親指を立て、彼は調子良く言う。


 このような軽口を叩くためだけに会いたいと願ったのならば、肩透かしもいいところだ。

 アングは資料の閲覧を閉じ、立ち上がる。

「雑談がしたいのならここを出るぞ」


 するとジョイは、急にバツが悪そうな笑みに変わった。

「あー、いや……。実はさぁ」

 何やら視線までせわしく動かし始める。


 彼は後頭部を擦りながら、困り眉を浮かべた。

「デート……ってわけにもいかないんだ」

「当たり前だ、勤務中だろう!」

「しー! しー!」

 理不尽にも、一番うるさかったジョイに声量を抑えるよう促される。


 すると彼は咳払いし、想定外の発言をした。

「用があるのは僕じゃないんだよ」


 自分を前にすれば、いつでも子犬のように大興奮して飛びかかってくるような男だ。

 彼が自制的なことに、只ならぬ状況をアングは覚えた。

 それでもジョイは笑顔を繕い、出入り口の方へ身体を向ける。

「とりあえず、一緒に来てくれないか?」





 集中治療室での肌寒さは、綿毛布に包まっても消えることがなかった。

 あれからメーナは病室に戻った。見舞いに来たマックスをうるさいと思いながら適当に流し、また一人に。


 この建物自体から逃げ出したくはあった。

 だが、母の警告が記憶を掠めるだけで、そんな気は失せてしまう。


 今は何を優先すべきか。

 自分を、そして、この世界を見つめ直す必要があるのではないか。

 目を背けていた事実がある。

 一週間前の出来事。スケジュールが噛み合わないのを良いことに、メーナはマイライズ・ハイスクールでの強行撮影を決行した。

 そこで自分が録画した映像は、まだカフの中にデータとして残っている。


 逃げてばかりではいられない。

 自分がいったい何をしたのか、ちゃんと向き合う必要がある。

 メーナのカフはハイエンドモデル仕様。脳内チップという形になっているそれは脳波で起動し、網膜に画面を投影する。

 あの日の映像を、視界いっぱいに再生させた。


 既に、共演者であるサムの息は途切れかかっていた。

『ぶふっ……あぶっ、ぷ……』

 強化イレギュラーに襲われ、死の寸前という状況だった。

 逆流する血液の影響で、口から赤白い泡がぶくぶくと膨らんでいる。


 その悲惨な様子を、カメラの焦点は捉え続けていた。自身の網膜で直接撮影したものだ。

 この時のメーナの心境は、どうだったか。

 携帯プロジェクターをカフと同期リンクさせれば、映画の撮影のようにわざと手ブレを起こしたり、画角を傾けたりできたのになぁ……。

 呑気にも、そんなことを考えていた。


『何してる!?』

『いちおう撮影を……』

『ふざけるな……!!』


 映像の中で、レッド・アーマードが大きな声を出している。

 今のやり取りは、サムが死ぬ瞬間を撮影しようとしていたメーナを、レッドが叱責した場面だ。

 この後すぐに彼に手首を掴まれ、離れることとなる。


 また、身体の震えが止まらなくなった。

 半開きの掌で、腫れた両目を覆う。

「わた……し……な、なんて、ことを……!!」

 大切な仕事仲間が死の淵にあったというのに。

 自分の行動をおかしなことだとは、今まで微塵も思っていなかった。


 そして、自分を止めようとしていた、あの声についてだ。

 巻き戻す。

 レッドの声を、もう一度聞いてみる。

 何度でも聞き直す。


 思えばこの時点で、彼の言動にはどこか既視感があった。

 対面してからの第一声は意図的に低い声だったが、この時は忘れていたのだろう。

 普段から聞き慣れた、あの不器用な彼の声としか思えない。



「アング……くん……」

 彼は既に、気づいていたのだ。

 この世界の倫理観が、どれだけ欠如しているのかを。


 しかもこの状況は、似ている。

 劇の舞台上で、友が息絶える様を見送った彼と、サムの死を傍観していた自分。重なる部分がある。


 改めて思い返す。

 あの劇の映像は、俳優組合のアーカイブを通して視聴した。


 アングは、共演者を銃殺した。

 命を使った演出は革命的だと評価され、裁判でも、観客を楽しませた芸術表現として無罪。

 メーナも同じく感嘆し、この演出の発案者がアング本人であると知る。

 興味を抱き、彼を追いかけ始めた。


 ――何で。

 何で私は、当たり前のことだと思っていたの――。

 そして、自分がおかしいと気づけるのならば。


 彼は……?

 自ら友を殺めた本人は、どれだけの苦しみを味わっているのだろう。

 彼の気持ちを分かってあげられるのか。

 だが今ならば、何も知らなかった、あの時とは違う。

 世界から隔絶された者同士、支えになることができるかもしれない。


 決意したメーナは、脳波でアングの名に通話をかける。

 発信音が四往復した結果、繋がったのは人の声ではない。

『おかけになった電話は、現在電波の届かない場所にあるか、電源が――』

 システム音声を途中で切る。通話という手段を諦める。

 チャットアプリを起動し、アングとの個人ページに以下の文を送信。

『会って話したいです。今どこにいますか?』


 ただこれも、分かりきっていたことだ。

 既読はつかない。

 着信履歴を見ようとも、彼は折り返してこないだろう。

 今の状況ならば尚の事だ。


 それも彼らしい。

 以前ならば、そう自然と結論づけ、微笑んでいた。

 歯痒さが上書きしていく。

 目尻から、涙が滲み始める。

「何で……無視するのよ……。もう!!」


 彼に対して声を荒げるなど、あり得ないことのはずだった。

 腕を傷つけられたことはもうどうでもいい。

 ただ、自分を避け続けることに関しての文句だった。

 今はこうして、ベッドの上で震えることしかできないのか。

 自身へのやるせなさも募り始めていた、最中さなかのこと。


 短い間隔の激しい足音が、廊下から聞こえる。

 扉が開いた。

「メーナお嬢様! 大変です!!」

 ハッとなり、咄嗟に毛布を引き上げて顔を覆う。涙を見られまいと毛布で拭く。


 入ってきたのは、普段よりも明らかに取り乱した様子の世話係、グラートだった。

 走ってきたのだろう。呼吸も荒い。

 メーナがいるのを確認すると、彼女は部屋の中央まで早足でドタドタと向かう。

「今回の件は、マスコミからも完全に遮断できたと思っていたのですが……!」

 彼女は窓際の小さなテレビに近づき、リモコンで電源を入れる。

 カフでホログラムを起動し、同期リンク


 テレビの画面に映し出されたのは、あるウェブサイトの記事だった。

 グラートがホログラムをタップすると、記事内にある動画の再生が始まる。

 雑なウサギのイラストを頭部に被せた一人の男性が、忙しい挙動を取りながら何かを喋っている。

『有料会員の皆様にだけお届けする、とっておきの最新情報は~~~……?』

 チープなドラムロールの後、映像の右半分に……。



 その写真が公開された。

 レッド・アーマードが振り上げた白い爪。

 それにより、一人の人物が右腕を引っ掻かれている決定的瞬間。


 メーナの瞳が、揺れた。

『そう! みんな大好きメーナ・シンフォニーちゃん! どういうわけかこの場に居合わせた彼女は、暴走する赤い鬼神によって、その美しい肌を引き裂かれてしまったのでしたー!! かわいそー! もう薄着での仕事はできないかもー!』

 人の不幸を、面白おかしいノリで話している。

 そんな低俗な煽りはどうでもいい。


『さて、より詳しい情報はぁ~~~? 明後日発売の本誌面で!!』

 動画の内容は短かった。

 しかし、事態の深刻さを突きつけられるには十分過ぎた。


 両太ももを押さえて、どうにか震えを止めようとする。

 そう上手くはいかない。

「お……お願い。一人にさせて」

 なので、グラートを追い出そうと決めた。


 当然、彼女は面食らう。

「え? し、しかし……」

「早く出てってッ!!」

 らしくない。

 大声で怯ませるという強引な手段に出た。


 グラートはおろおろと取り乱しつつも、引きつった苦笑いを浮かべる。

「で、では、カフは置いていくので……」

 耳からカフを外し、テレビの前のチェストへ置く。

「また十五分後くらいに……!」

 逃げるように彼女は出ていった。


 一人になった瞬間、メーナは、自身の額に手を当てる。

 訪れた息苦しさは、彼を想う心を痛めつけた。

「違うのに……。アング君は、そんな……っ!」

 自分の立場が危ぶまれることは何とも思わない。

 アングが悪として糾弾され続けることのほうが、何十倍も辛かった。





 花束に忍び込ませた盗聴器が拾うのは、少女のすすり泣く音ばかり。

 カザミは、病院前のバス停にあるベンチに、うなだれるように座っていた。

 聞こえてくるメーナの悲痛な声が、胸中に突き刺さる。

 どういった精神状況なのかをようやく音声で確認できたが、思っていた以上だった。


 カザミは口元を右手で押さえて、振り絞るように謝罪する。

「本当に……ごめん……」

 この状態を誰にも悟られずにやり過ごすなど、至難の業だ。

 彼女はこのまま、一人であの恐怖と戦っていかなければならないのか。


 ピロロロロ……。

 この高い笛の音を着信音に設定したことを、後悔する。

 カフに着信が入った。誰からか確認する。


 非通知の表示。

 カザミは眉間を狭めた。受話器を持ち上げるマークを押すべきか。押さないべきか。

 何かを企む人物だとして、あとでやり返してやればいい。カザミは、その着信を受け入れた。

「はい。えっと……エリカですけど」


 少しのの後、女性の声が聞こえた。

『ショウ・ナルップさん……ではないんですか?』

「え……。あっ」

 昨日に聞いたばかりの真面目そうな声だ。

「まさか……ルーさん?」


 くすっ……と優しげな、ルー・レイアの息が漏れ聞こえた。

 彼女はナイゲール社に勤める身でありながら、裏派閥としてレジスタンスへの支援を行っている人物でもある。

『新しい情報を入手したんです。妹さん……カナ・シルヴァさんの遺体偽装について』


 自分が最も知りたかった情報であった。

 そもそも、それを知りたいがためにビルへ侵入したのだ。つい弾かれたように立ち上がる。

「調べてくれたんですか!? わざわざそんな……!!」

『いえ。それで確認なのですが、カナさんの遺体が送られてきたというのはいつ頃ですか?』

「2222年の、たしか……二月の上旬から中旬あたりだったはず」

『ふむふむ、なるほど……』

 マウスのクリック音がかすかに聞こえ、説明に続いた。

『二月の頭の話ですが、ナイゲール社が携えている医療研究所に、三つの遺体が送られていたそうです。不自然にも、全てがカナさんと同年代、同じくらいの体格の女子の』


 おぞましい話と捉えるべきか。単なる思い込みか。

 ともかく、こう結び付けざるを得ない。

「まさか、その子たちの遺体を使って……?」


 カザミが送られてきた段ボール箱で目撃したのは、カナにしか見えない人間の頭部だった。

 他の部位はレジスタンスメンバーが回収したのだが、ルーが診断の際に使用したDNA自体が、何者かに偽装されたもの。全てをカナ本人のものであると勝手に結論づけられてしまう。

『しかも、偶然にしては出来すぎていますが……。同じ日の別の時間に、清掃会社を自称するラット・クリーナーも訪問していたとのことです』

 サミット内で起きたイレギュラー抹殺。その準備をしていた可能性が高い謎の企業が、三年半前にも存在し、施設に出入りしていた。


「決まりだ……」

 カナの死は、偽装された。

 ブルー・アーマードの中にいる人物こそが、生きている本物のカナであり、彼女を助けるすべはまだ残されている。

「その研究所に行けば、カナが生きてるって証拠を入手できますか!?」

『偽装の記録を見つけるほうが早いと思います。遺体の捏造をそこで行っていたのならば、通常とは違う作業が挿入されているはずです。記録自体を消去することは一つのリスクですから』


 興奮気味だった自分を、冷静な分析で宥めてくれる。

 ともかく、ようやく見えた兆しの光。これを逃すわけにはいかない。

 通話越しだが、カザミは目を閉じて一礼。

「ほんっとうに、ありがとうございます……!! けど何でわざわざ、会ったばかりの私のために……?」

『それは……。あら?』

 何か言いかけたが、発言が止まる。

 しばらく待っても、続きの言葉は来なかった。


「……ルーさん?」

『あ……。いえ』

 こちらから呼びかけてみると、周りの人々に聞かれないようにという警戒ゆえか。小声で状況を説明し始めた。

『今……オフィスの大モニターに、ある映像が映し出されていて……』

 何やらざわざわとした人声までカザミの耳に入ってくる。

『ショウさんの端末でも見られるはずです……。ホワイトハウスからのライブ配信で調べてみて……!』


 ルーの声から、イレギュラー特有の緊張が滲み出ているように聞こえる。

 通話は繋いだまま、急いでブラウザを開く。

 指定されたワードで検索すれば、すぐに目に入った。


 今まさに、ホワイトハウスの公式動画チャンネルが、ライブ配信を行っている。

 あの大統領様が、意味のない発信をするとも考えづらい。カザミは深呼吸し、息を整える。

 動画を、最初から再生する。


 広告すら入らない特別待遇。

 開始ゼロ秒から、彼女の姿が広く映し出された。

 大統領専用の豪華な執務机の前に座り、両肘をついてはなだらかに手を組んでいる。

 自然な微笑みのまま、彼女は口を開く。

『皆さん、良いお昼を迎えられているでしょうか。マリウス・マキシロードです』


 就任してわずか一日。

 既に我が物顔で、ホワイトハウスという権威を手中に収めていた。

『この映像は、アメリカ国内……』

 彼女は、僅かに背を前へ倒す。


 黒い影が顔に陰影を落とした。

『いえ。全世界に向けて発信しています』

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