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激昂のイレギュラー  作者: 亜空獅堂
Phase4:誰が為の断罪
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Phase4-8:誰が為の断罪

 耳鳴りと共に、視界に入る全てが分裂して見えた。

 うつ伏せで倒れているために低い視界。人間離れの巨体がゆっくりと近づいてくる。


 アングは敗北した。

 皮肉にも、自分を育ててくれた親同然の人物に止められたのだ。周囲一帯の地面、壁、電灯など。飛び散った炎による引火が、至る所で目に見えている。

 流石にあの爆発。近辺の建物にいた人々は声を上げ、続々と外へと飛び出していく。

 完全に倒壊した建物はないというのが不幸中の幸い。


 しかし、アング個人の結果としては、最悪であった。

 ダンがある程度まで近づき、自身の腰に手を当てながら見下ろす。

『やれやれ。学校でのお前の正義心には、胸震えるものがあったが、イレギュラーとなれば話が変わってしまうのが世の常だな』


 そう。

 例えどのような善行を積もうが関係ない。イレギュラーだと分かったその時点で、これまでの努力は跡形もなく崩れ去る。

 今の境遇も、改心も、誰も真なる部分を見てくれない。見ようともしない。


 背後から、パトカーのサイレン音が近づく。水を弾く足音もだ。

「ダン捜査官……ですか?」

『おう、そうだ! 悪いが、その男を連れて行ってくれ。外部から、アーマードの装着を解除する方法は?』

「装着者自身の脳波コントロール……しか知りませんよ。それか、もっと効果的な一撃を与えるか」

 話を聞きながら、アングは、ギギッ……と爪を、地面に突き立てた。



 終わる。

 世界をあるべき姿に戻すための戦いが、こんなところで。

 許されないのか。

 諦めるしか、ないのか。


 友の呼びかける声も、遠くに聞こえる。

 消え入りそうな意識に、瞼が勝手に呼応する。

 意気込みとは裏腹に、アングの世界が、闇へ落ちた。





 何も見えない。

 生きているという実感も……そこには、まるでない。


「――グ!」

 だがゆえに、自分の名を呼ぶその声だけは。

「アング!!」


 ハッキリと聞こえた。

 アングは目を開く。

 正確には、アングの精神だ。


 現実と同じくうつ伏せで倒れ込み、黒い水面が波紋を打つ、真っ暗闇な世界。

 アングの肩に手を当てていたのは、死んだ時と同じ、胸が血に染まったカウボーイ姿のユージーン。

「……アレを見ろ」

 彼はアングが目覚めたのを確認すると、正面へ視線を向けた。

 アングも上体を起こし、そちらを見る。



 これまでは認識できていなかった。

 数え切れないほどの多くの人々が、まばらな列を作ってそこに立っている。


 しかし、明らかに異質な外見だ。

 全員が不気味な笑顔の仮面を被る……。それは、スタジアムで見た幻覚と同様の状態。

 あの時は死体だったのが、今は二つの足で立ち、こちらを一点に見つめる。


 首より下には色が無く、魂だけが残った証明として、白い輪郭線のみが残る。

 あとは透明。今にも消え入りそうであり、誰も、言葉を発さない。


 ただ、最前列の真ん中に立つ人物……。

 爪先まで付こうかかという程に大きな、黒のゴシックドレス。

 不服だろうにこの格好をさせられた男性は、アングの担任だった、バーンズ・カモフだ。

 悪しき存在にその身を弄られ、生徒を襲う怪物として一生を終えた。


 彼の命を奪ったのはアングだ。

 言葉は無く、表情も読み取れないが、自分の正面に立っている。


 やがて、彼らの後方からだ。

 炎が立つはずのない黒い水面が燃え始め、こちらにまで伸びてくる。

 彼らは、見えない足元でその火柱を直に受けようとも、微動だにせず佇んでいた。


 ユージーンは顔を歪め、口を押さえた。

「代弁してやろうとも思ったけど……こいつら、てんでバラバラなことを言ってるぞ」

 同じ魂だけの存在として、彼には、言葉を発さずとも理解できるらしい。


 ならば十分、という理由にはならなかった。

「教えろ」

 これは義務だ。枷だ。

 自分には、いま彼らが何を望み、何を訴えようとしているのか、知る必要があった。


 ユージーンはしばしこちらを見てから、また彼らを見据える。

 小さく息をついた後に述べた。

「逃げろ、殺せ、熱い、まだよ、立て、撃て、終わらせて、やめろ、全部破壊しろ……」


 それは、断続的な指令の数々。

 方向性は定まっていない。ゴードンという小者には殺意で一致していたが、今は状況が違う。


 一つ確かなこと。

 彼らには無念がある。

 それぞれには別の想いがあり、そして、ここに魂として、在り続けているということは……。


 理解し、半開きだった口を閉ざす。

 半ば倒れ込んでいたその身を、立ち上がらせる。

 同じ目線となった者たちへ、アングは、宣言した。

「勘違いするな。俺は、お前たちの言いなりじゃない。お前たちの為に戦うわけでもない。ただ……」


 向けられる視線をまた噛みしめる。

 本物の世界は、どこもかしこも偽りだらけ。欠落した感情が常識として溢れる。

 ここにいる、苦しみ、死んでいった者たちが本物だ。この手の中にあることが唯一の証明なのだ。


「その感情、俺に使わせろ」

 半開きにさせた掌を彼らに向ける。

「居場所を失くしたお前たちに、最期の生き様を与えてやる」


 一切の変化がなかった魂たちの身体が、溶ける粘土のように崩れ始めた。

 握った手に、放つ言葉に、熱が宿っていく。


「俺はこの世界を燃やし尽くす。例えこの手が血に染まろうとも、世界から忌み嫌われようとも……!」

 彼らの姿を看取るよりも早く、水面の炎が、アングの横を通過する。


 見開いた瞳が灼熱に照らされる。

「地獄に堕ちようともだッ!!」





 それは、現実の世界にて不意に現れた。

『ん……?』

 異変に気づいたダンが振り向き、壁際を見た。

 地面に炎が引火していたことは事実だ。しかし、全く気づいていなかった。



 あまりにもよく見知った輪郭。人間……。

 倒れているそれを燃やし尽くすかの如く、熱気が舞い上がっていることに。

『しまった……! まさか今の爆発で!』

 いま第一に優先すべきは、市民の救助である。慌ててダンが駆け寄る。

 アーマードの装甲ならば、火傷せずに触れられるとして、手を伸ばす。



 ……空を切った。

 現実には、炎だけが撫でたということだが、その炎すらも風と同一化するようだった。

 ダンは地面を見下ろす。


 そこにはもう、何もない。

 人はおろか、残りカスすら存在しなかった。


「ダ、ダン捜査官!」

 到着した警察官も驚いていたが、それは、消えた重症者に対してではなかった。

 パトカーを停めた方とは逆側。細い道の軌道線をまっすぐ見ている。

 ダンもそちらを見て……。



 思わず、足元が覚束なくなった。

 路地の両サイド。

 荒廃した細道に、倒れた人型の炎たちが二本の列を作り、彩ってみせていた。

 隊列だけ見れば、まるでホテルや博物館の入口を照らす、グランドライトのよう。


 しかし、そんな安定した光ではない。

 豪雨と強風に煽られ、今にも消え入りそうな姿が、逆に目に焼き付いてしまう。



 ゆえに、気づくのが遅れた。

 パシャッ、という水たまりを踏みつける音。


 ダンが向き直る。

 歪なライトに釣られている間に、レッド・アーマードが、猫背の姿勢で立ち上がったのだ。


『レッド……。まさかお前が?』

 ダンの問いかけには答えず。


 代わりに、彼の装甲に変化が生じる。

 マスクガードが下り、牙が剥き出しとなる。

 小刻みに震える全身に合わせて、その口から、あらゆる結合部から、炎が湧き出る。


『その挙動は……頷きと見ていいんだなァッ!!』

 両拳を突き合わせてから、ダンは、再び彼に一撃をかまそうと走り始める。



 しかし、更なる異変。

 ダンは足を止め、その新たなる事態を見上げた。

 あれは、レッドの僧帽筋あたりからだ。


 ボコボコと。

 二本、四本と、うねりを見せる炎の折れた束だ。

 空まで向かおうかという具合にせり上がっていくそれが、こちらを見下さんと姿を現した。


 直後。

 ブゥンッ!!

 急に根本から折れ曲がり、横に薙ぎ払う勢いでダンへ襲いかかってきた。


 ダンは、急所さえ防御できればと、首、心臓部へ手をやる。

 炎というものは気体の変容。実体があるとは言い難い。



 しかし、この炎の鞭は。

 明らかに質量を兼ね備えている。ダンの肉に揺れが伝わる。

 装甲に明らかな衝撃を与えた。


 接触した部分の炎の中心に見える赤は……刺々しい金属の芯だ。

 装甲内部から伸びた炎ということは、自らその一部を分離し、武器として利用しているのか。


 それを証明するかの如く、彼は、太腿の突き出た黒い部分を、左手で引っこ抜いた。

 装着時と同様に黒の金属が変形。長い棒状かつ、先端には三角の尖り……。


 槍だ。

 その鋭利な武器全体に、ゴウッ……と炎が纏わりついた。

 防御に集中しているダン目掛けて、突きが繰り出される。


 だが、それが何だというのか。

 旧時代の武器を模し、ただ熱くしただけではないか。

 いっそ握り潰してしまおうと考え、ダンは右掌を前へ。


 槍先を掴んだ。

 あとは握力と少しの捻りのみ。



 しかし、すぐに違和感を覚え……。

『ぬぅっ!?』

 パッと手を離し、跳び退いた。


 受け止めるために使っていた掌を直視する。

 貫通していたわけではないが、ウジリウジリとだ。


 手の装甲部分に、融解するような感覚が発生した。

 そのうえ、ちょうどダンには見えていた。

 乗り移った炎が網目のような模様を作り、消えていくのをだ。


 レッドの体勢が俯き気味なことに変わりはないが、今度は彼の右手。

 その周囲を囲むように、また炎が形成されていく。


 ただ拳に炎を纏わせているわけではない。

 もっと広く、複雑な形を作ろうとしている。

 その歪な輪郭から、ダンは、ある資料写真と、拡散された動画を思い出した。


 スタジアムを襲撃した強化イレギュラー。

 頭が巨大な銃の形で、引き金は歯の形だった。


 まさにそれだ。

 向けられる大円の空洞。まるで自らの右手に、それを宿したかのよう。

 レッドは、下げていた右手を持ち上げ……。


 炎の牙が噛み締めた。

 空洞を突き抜け、先ほどよりも二回りは大きい炎弾を発射した。


 情報どおりであれば……まずい。

 しゃがめば回避はできるが、ダンは即座に走り出し、背後の壁から距離を取る。

 着弾したのはまさにその壁であり……瞬間。



 ドゴォォォォッ!!

 耳が弾け飛びそうな轟音だ。

 火炎は増幅。勢いも倍増し、十字型の爆炎を作った。

 これにより、建物のレンガはほとんどが剥がれ落ちる。抉り削られる。


 ダンの読みは当たっていた。

 スタジアムで、強化イレギュラーが多くの人々を亡き者とした攻撃と同じ。

 思えば、先ほどの槍や、鞭のような攻撃もそうだ。

 同日に出現した植物型のイレギュラー。その目撃情報と一致している。


 ゆえにダンの推察は、レッドは倒した強化イレギュラーの能力を奪っている、というところまで到達する。

 ならば、あの列を作っている、燃え盛る人々のシルエットは……?


 考える間もなく、次なる展開が発生する。

 レッドの背後からだ。



 ブオオオオオウ!!

 パトカーが、車体を大きく反らすほどの急発進。

 振り返ってすぐのレッドを、ボンネットの上へと乗り上げさせた。


 勇敢だが、これは致命的な打撃とは言えず、レッドは縁にしがみついている状態。

 警察官が窓から顔を出し、呼びかける。

「ダン捜査官! 何かまずいです! 逃げましょう!!」



 すると、またしてもだ。

 レッドの背後から、亡霊が如く次なる炎が発生する。


 あれは……頭の無い、馬だ。

 炎で象られた馬脚が姿を現し、前脚を上げた。

「うおわあああ!!」

 警察官が、声を上げながら飛び出す。


 次なる行動を予測するのは容易である。

 彼がある程度離れてから、振り上げられた脚は勢いをつけて下ろされ、ボンネットへの一撃となった。

 パトカーのメッキは捲れ上がり、エンジンにまで損傷が及ぶ。



 大破。

 赤黒い炎が雲として上がり、車体も大きく揺れた。

 警察官は、間一髪のところで爆風から逃れる。

 レッドは手で炎を吸収し、衝撃を和らげていた。


 彼が引きつけてくれたおかげで、大きな隙が生まれた。

『レッドォォォォォ!!』

 完全に背を向けたレッドへ、ダンが殴りかかろうと跳ぶ。

 即座に振り向いたのはレッドであり……。



 待ち構えるように、炎の槍を置いていた。

『しまっ……!?』

 肩裏のジェットを逆噴射するが、手遅れだ。

 右脇付近に槍先が触れた。


 たったそれだけの接触で炎は這い上がり、脇から胸元。

 そして、そこより上へと辿っていく。


 植物型の強化イレギュラーによって殺された二人の一般人。そのうちの一人は、死因が毒による影響だったとされている。

 毒の代替として、蝕むような熱……。内側から焼き尽くそうというのか。



 殺意の動きとは対照的に、レッドが言葉を発する。

『アーマードを脱げ……!!』

 まるで、敵に情けをかけているかのようだった。


 先ほどよりも明らかに火力は高く、事実、このままでは致命傷になりかねない。

『解除……。解除だ!!』

 脳波で脱衣は可能とされているが、ついダンは声を上げる。


 一瞬でダンの身体から装甲が外れ、元のキューブ状に戻った。

 しかし、その立方体からは火花と電流が散り……。


 銃声のような一発。

 衝撃と共に軽く舞い上がり、白い煙を漂わせる始末となった。修理に出さなければ、また装着はできないだろう。

 あっという間に形勢を逆転させたレッドだが、先ほどのダメージゆえか、よろめく。


 すると、頭の無い馬の炎が、身を沈めた。

 レッドは、その背にもたれかかるようにして乗る。

 よく見れば、蹄と鞍。その二点だけを、装甲の一部分による転用で固体化させ、必要最低限の存在として成り立たせているのだ。

 彼を乗せた炎馬は、燃え上がるパトカーを踏みつけ、疾走。戦線から逃れた。


 ダンはいよいよもって、彼のことが全く分からなくなった。

 イレギュラーである以上は処罰対象。しかし、この腹の底に生じる違和感は何なのか。


 並んでいた炎の亡霊たちは、いつの間にか姿を消していた。





「……ああ。そうか。了解した」

 耳元に指を当てていたフランが、通話を終えた。

 統括官のファーストレディが化け物に変えられていたという、異常時での連絡。ゼオンは、アーマード部隊の派遣に関する連絡でも来たのかと思った。


 しかしそれならば、こちらにも言葉の一つはかけるものではないか。

 彼は受け取った連絡を呑み込み、直立するだけだった。


 すると、二台のパトカーがやってきた。

 派遣を要請していた、SAUのアーマード部隊だ。四名の装着者が車から降りる。

 統括官がイレギュラーであった以上、彼が命じる制限や認可は、全て存在自体が無意味なものとなる。


 ゼオンは、射撃と近接の役割を、それぞれ二名ずつ分け与える。

 ゴードンは自ら、彼女の弱点をさらしていた。

 例え自爆しない強化イレギュラーであろうと、市民の安全を脅かす癌は、警察という立場上、取り除かなければならない。


 コンテナの両側面に、電磁警棒を持った二人が回り込む。

 その硬い箱の角を狙い、警棒の側面を当てた。

 これは、双璧を外すための行動である。雨の中での電気兵器の使用は危険だが、アーマード越しという状況から身の安全は保障されている。


 カッターを紙で切るかの如く、高圧の熱で、繋ぎ目を伝って裂いていく。

 正面から完全な真後ろまで到達すれば、天井ごと外れてしまうため、計算して半分の位置で下ろす。


 切った部分の壁は外れた。

 ここまで一点のみだった外気の侵入口は、それにより、側面まで大きく広がることとなった。


「ぐぎゃあああああああああああ!!」

 中にいる強化イレギュラーが、突如絶叫する。

 ゴードン曰く、外気に触れれば、彼女の身体は塵になるということだった。



 彼女を生かすための呼びかけだったのだろうが、逆効果だ。

 元に戻る見込みのないファーストレディなど、誰も必要としない。


 ただ、そう簡単に葬られるはずもなく、彼女の背から伸びていたタコの触手がうごめき始める。

 当然ガード・アーマード達を狙う。驚いた彼らを不意に薙ぎ払う。

 そこで射撃部隊が、遠距離から、マシンガンによる発砲を開始。


 柔い肌を鉛玉が貫き、背面の鉄壁に、緑色の血が付着する。

「があああああああああああああ!!」

 触手は大きく振り上げられるが、それは、苦しみによるものだ。


 被弾という物理的被害もあったためだろう。彼女の足先、手先から、肉体が粒状に分離。

 空気に呑まれ、飛散し、より根本へと風化が進む。

「あばがああああ、あばがああああああああああ!!」

 言葉となっていない叫びを散らし、やがて、喉元まで粒子と化す。



 最期は静かだった。

 元からそこにいなかったかのように、怪物はこの世から消えた。


 ゼオンの隣に立っているハルは、この異様な光景に、口をあんぐりとさせたままだ。

 彼女は、運転でゼオン達を運んでくれたが、ここに来てからは何も仕事を果たしていない。

 ちょうど、薙ぎ倒された警察官たちが起き上がり、手を取り合っているところだ。


 彼女に役割を与えることとする。

「ハル捜査官」

 言葉が聞こえていないのかとも思ったが、二度見ののちにようやく返答が来た。

「え? 捜査官?」

「このチームに来た以上はそう呼ばせてもらう。中に何が残っているか、見てくるんだ」

「あ、ああ……」

 チラッとコンテナの方を見てから、向こうを指差した。

「生き返ったり……しないですよね?」


 引きつった笑みを浮かべる彼女に対し、ゼオンは、顎で指示した。

 彼女は自身の後頭部を撫でつつ、コンテナの中へ。


 鼻を摘んだ。海洋独特の臭いと、血生臭さにやられている。

 すると彼女は何かを見つけ、しゃがみ込み、手に取った。

 異臭から逃げたいという気持ちもあったのだろうが、走って戻ってきた。

「ゼオン本部長!! こ、これ……!」


 それは、彼女の掌の上に載っていた。

 緑色の液体がへばりついていることから、あの怪物の体内から出てきたのだと誰にでも推理できる。



 アーマードの物と同じく、ルービックキューブのようにそれぞれの四角が凝縮された存在。

 中央のみが銀に輝く、茶色のキューブだ。

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