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激昂のイレギュラー  作者: 亜空獅堂
Phase4:誰が為の断罪
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Phase4-7:誰が為の断罪

 装着時に発せられた気圧により、アングの足元の水たまりは、連続して波紋を打ち続けていた。

 その余波がまだヒシヒシと伝わるかのようだ。アーマード装着者のダンは、拳を握ったまま直立し……。


 しばらくして、白き装甲に覆われた己の身体を、ジロジロと見回した。

『なんと……! 俺のこの筋肉とよく馴染むようだ!』

 巨大な右拳を開閉させ、感触を確かめる。

『よし。今日からこの武装の名前を、パワフル・アーマードと名付けよう!!』


 黄色のモノアイがこちらを見抜く。

『ではものの試しに……!』

 ダンが駆け出す。

 右拳を深く引きながら、突進してくる。


 アングは身を沈め、先ほどと同じ要領で防御の体勢に入る。

 おそらくまた右ストレートが来る……。



 だが、大きな身なりからは想像もできなかった。

 彼の身体がくるりと横に回る。

 視界から消えた。


『っと、見せかけてェ!!』

 驚く暇もなかった。アングは視線を横へずらす。


 目に見える全てが、彼の裏拳で覆い尽くされた。

 アングは咄嗟にしゃがんだ。頭上を拳が通過する。


 ドガァァァンッ!!

 振動が起きた。

 回避することはできたが、大砲でも命中したかのような轟音だった。


 裏拳が、アングのすぐ傍にあったレンガの壁に、亀裂を入れた。

 まるでクレーターのような広がり方だ。並ぶレンガの一つ一つに、治りようのない崩落が生まれた。


 もし、この殴打を食らいでも……。

 いや、かすりでもするだけで、骨折は免れないだろう。



『ガハハハハ!!』

 今度は、めり込んでいた拳が震え始め……。

 そのまま真下へと振り下ろされる。


 アングは全身を使って横に転がり、回避。

 今度は地面のコンクリートの破片が、空へと舞い上がる。


 この回避のかんに、アングは、ダンの懐へと近づけた。

 見るからに分厚い装甲であり、加減を入れた攻撃では、何の効果も得られない。


 ゆえにアングは爪を振り上げ、ダンの胸元を引っ掻く。

 これによって生じた火花を、レッドの特殊能力で増幅させる。


 つまり爆発だ。

 両者の間に炸裂する衝撃。

 炎を操るレッドならば、ある程度の耐性がついているため、何ら問題はない。



 しかし、想定外だったのは……。

『効かんなぁ』

 直撃を食らったはずの巨体が、何の焦りもなく、こちらを見下ろしてきていることだた。


 そして、アングは気がつかなかった。

 横へ下ろされていたダンの右手が、親指と人差し指をくっつけていることに。


 弾いた人差し指の先端。

 それが、アングの側頭部に命中。



 揺れた。

 脳が。身体と精神が。

 まるで分離したかのようだった。


 本来ならば軽い小突き程度の接触は、食らったその身を発射させる勢いを与えた。

 足の爪先を食い込ませようとするが、止まらず。地面を抉りながら、対面のコンクリート壁に叩きつけられる。

『がぁッ!? くっ……!』

 装甲の中で、血反吐をぶち撒けることとなる。


 勝ち目がない。

 少なくとも、今の段階では。そもそもダンを倒すつもりは無いわけなのだ。

 離脱さえできれば、どうにかこの場を凌いだことにはなる。


 へばりついた身を剥がしつつ、アングは手の内がバレぬよう、右の掌を後方へ向けた。

 ずしりと近づいてくる身が、彼の射程圏内へ到達する前に……。



 点火した。

 赤の装甲を浮かせる小爆発。ここから続く、長く細い路地の出口を目指し、連続で加速をつける。

 相手の歩幅はかなりあるとはいえ、この移動であれば、距離を取ることは可能なはず。



 ……だったが。

 ふと背後を見たアングは、ダンの体勢に違和感を覚えた。

 眼前に誰もいないその場で、強烈な一撃を与えようかと言わんばかりの腰の落とし。腕の引き……。


 するとあれは、ダンの右肩裏付近だ。

 暗闇による影だった部分が、轟く光を放ち始めた。

がさんぞ……!! お前を捕まえて、ブルー・アーマードの少女や、さっきまでこの辺りをうろついていたらしい緑のアーマードについても聞き出す!!』


 刺々しい光輪が発せられる。

 その身が、アングの目線からは、大きくなったような気がした。



『そ、そんな……嘘だろ!!』

 ユージーンも驚きの声を上げる。


 それもそのはず。

 あれは……ロケット推進だ。


 ドゴォォォォォォウッ!!

 肩の裏から凄まじき噴射炎が起き、その巨体を宙に浮かせるだけでなく、前へと押し出している。


 しかもその速度は、瞬く間にアングを凌駕しようというほどだ。

『追いつかれるぞアングゥゥゥッ!!』


 ユージーンが抱いた危機と同様に、アングも戦術の変更を決断した。

 小爆発による加速を止め、身を捩る。ダンの方へ向き直った後にかかとで着地。

 仰け反るような体勢のまま、左右の掌から交互に炎弾を発射する。


 しかしこんなものは、単なる牽制程度にしかならない。

 ダンは、横にした左腕を顔の前で掲げ、防御のまま突っ込んでくる。


 対してアングは、言葉を火力に乗せる。

『奴らを、俺の仲間だと思い込んでるのなら!』

 両手を向き合わせ、自分の頭部と同等の大きさの火球を作る。


 それを右手で鷲掴みにした。

 頭の斜め後ろまで振りかぶる。

『お前は……とんだ筋肉バカだ!!』

 ピッチャーの投球のような動きで火球を放り投げた。


 揺らめく残像が、しかし軌跡は一直線にダンを狙って飛んでいく。

『おお! 良いピッチングだな!!』

 驚きの声を上げ、少し顔を上向かせるダン。



 しかし、声色は上がり調子のままで……。

『だが……』

 ニッと白い歯を浮かべる姿が見えるようだった。


 先ほどの回転裏拳と同じ動き。

 今度は、アングが投げた火球に対して行ってみせた。


 彼の手の甲による振りが、揺らめく円形をぐにゃりと変形させる。

『野球ボールはァ……! 人にぶつける物ではなぁぁぁぁいッ!!』


 MVP選手顔負けの、豪快なスイングだった。

 火炎が低く吹きすさぶ音。それを突き抜けるように、弾丸ライナーが飛ぶ。


 目には見えていたが、冷静に対処できるような遅さではなかった。

 アングは咄嗟に左手を前に出す。

 掌の中に収め、炎の勢いを殺そうとする。



 しかし、回転がかかっている影響か。

 その勢いは止まず、逆に肥大化し続けるばかり。



 やがて、膨れ上がった炎の結末は。

 分かりきっていた。


 白い光。爆音……。

 破裂した熱風が、この狭い路地を焦土へと変えた。





 カザミは、逃走したゴードンを追うのが遅れていた。

 二人の間に放り込まれた、日食模様の球体……。その使用者を追い詰めようとしたためだ。

 結果的に、その人物には姿を消され、逃げたゴードンも、先にアングに捕まる羽目となった。

 しかし、ダン・フルーレの介入という急展開もあり、再びゴードンが孤立している状況。


 アーマード同士の戦いに割り込もうとするほど馬鹿ではない。

 カザミは、情報源オアシスと成りうる初老の男を見つけるため、建物同士を飛び移っていた。


 すると、見つけた。

 左膝に手をつき、必死に呼吸を整えようとしている小太りのシルエットが。

 大通りからは逸れた、中道での休憩……。またしてもといった感じだ。


 もはやこの区域自体が、安全とは言い難い。急ぎカザミは、彼の目の前で着地する。

 不意な出現に男が飛び退く。

「ひぃっ!? な、何だ。女のほうか……」

「走れる?」

「馬鹿を言え……。こ、この疲労が……目に入らないのか! 車でもヘリでも呼んできてくれ!!」

 カザミは呆れ、この非常時に呑気すぎると思った。


 先ほど、パッチから連絡があり、タロウ・サキヤマの配信音声を聞いていた。

 その際の彼の発言も、実に甘いと思った。

 レッドに殺されたくないから。共感を得て欲しいからという理由で、彼は、妻が強化イレギュラーにされたという事実を白状したのだろう。

 あれはハッタリではない。警察内部に潜むレジスタンスからの通達でも、発見された彼のファーストレディが、強化イレギュラー化されていると確定づけられた。


 この不用意さが、どのような結末をもたらすか。

 彼に分からせてやりたくもあったが、利用価値が薄れる可能性があるため、言葉を封にした。

「そんな見え見えな手段は取らない。少し癪だけど、あんたとあたしの身体を紐か何かでくっつけて、空を飛ぶしか……」



 それは、提案の最中のことだ。

 空気が圧縮されるような低い音が、後方から聞こえた。

 カザミは振り返り、それが、急ブレーキの音だったのだと気づいた。

 二台のパトカーが、この中道の入口を塞ぐかのように停車したのだ。


 このタイミングでの登場に、ゴードンの眼差しに期待の輝きが蘇る。

「あ、あれは……私を保護しに……!?」

 何処ぞの仮面を被った少女よりも、公的組織のほうが安心できるのだろう。

 その正義の使者たちの方へ歩き始め、左手を大きく振った。

「おおおおい!! こっちだ! 早く安全なところへ――」



 その期待が一瞬で反転する。

 パトカーから、それぞれ二名ずつ警察官が降りてきた。

 既に装着している。彼らがまとっているのは、灰色の装甲、ガード・アーマード……。


 妙だと彼も感じたのか。立ち止まり、前方を細目で見る。

 そして武装した警察官たちはというと、そこから大きくは動かず。

 背中や腰のあたりに携えていた、ある物体を向けてきた。



 サブマシンガンだ。

「ッ!!」

 カザミは慌てて、ゴードンの肩を強く引いた。


 直後、始まった。

 水粒を引き裂く銃弾の雨が。


 カザミは、ジャケットに備え付けられたバリアを起動。

 頭を抱えてしゃがみ込んだゴードンごと、その範囲内へ。


 ヴォウッ! ヴォウッ、ヴォウ!

 青白い光の膜が、放たれた銃弾たちの勢いを止める。


 ゴードンのこの怯えようから、彼らも、『通常の人間なら絶対にあり得ない挙動』をしていると判断したのだ。

 つまり、死体でもいいから終わらせるという選択肢を実行している。


 カザミは視線を右へと向ける。建物の裏口と見られる扉がある。

 右脚を真横へと伸ばし、爪先からはナイフを出してみせた。

 細い隙間に刃を差し込むかたちで蹴り込む。


 施錠の際に使われる金具、デッドボルトやトリガーを切断してみせた。

 ドアノブを引き、ゴードンを押し込むかたちで共に中へとなだれ込む。


 中は暗い。カザミは、仮面の暗視モードを起動する。

 人間の気配はない。ツン、と染みるような、薬品の臭いが鼻を刺激する。

 ファイルが入った棚や、灰色のデスクが置かれている。


 そしてデスクにセットされた椅子には、俯き気味の白いフォルムが、コンセントから伸びるケーブルと繋がりながら座っていた。

 ロボットだ。目元はおろか、どこにも目立つ光は灯っていない。

 壁には、歯の健康に関するポスター。各作業に応じた治療費が書かれた案内板などが貼られている。閉店中の歯科医院だと判別できる。


 扉を閉め、ゴードンの手首を引っ張りながら前へ進む。

 内部の扉も開けると、次に見えたのは待合室。

 ガラス越しの奥向こうに見えるのは……二階へと上がれる階段だ。

 一旦高所へ上がるというのは、一つの手として最適。



 そう思案した最中。

 再び銃撃が起きた。

 閉めた木製の扉。そこに小さな穴が次々と空き、木片が舞う。


 鉛玉の大群だ。悲鳴を上げるゴードンの背中を押し、待合室側の壁際へとしゃがむ。

 あと僅かに遅れていれば、どこかの部位に命中していた。通り過ぎた弾道たちが、待合室のガラスを次々と突き破り、粉砕する。


 一人の警察のアーマードが、扉を真正面に蹴り倒した。

 三人の警察が同時に侵入。残りの一人は回り込みを仕掛けたかもしれない。


 すると、この明らかに異常な騒音に反応してか。

 スタンバイ及び充電モードだったと考えられるロボットが、むくりと立ち上がった。

 警察たちの方を見て一礼する。

『こんばんは。歯の治療は、午前九時にお越し――』


 彼らにとって、本当にどうでもいい対象だったのだろう。

 特に何か言うでもなく、正面に立っていた一人が、電磁警棒を斜めに振り下ろした。


 戦闘用にモデリングされていないロボットなど、その殴打を食らっただけで一溜まりもない。

『くだ――あ、うう、ああアアアア……』


 バチバチという音。見る見るうちに抉られる、艶のある白い表面……。

 何の罪もないロボットは、火花を散らしながら、斜めに真っ二つとなった。

 上半身になった部分が、スライドする形でズルズルと滑り落ちる。

 下半身も、両膝をつこうとしていた。



 その瞬間を狙う。

 追跡されても面倒。ならばここで制圧する。


 体勢を低くし、ロボットの陰に隠れるようにして近づいていたカザミが、床を蹴った。

 残骸の上を越える。先頭のアーマードの顎めがけて、飛び膝蹴りをかました。


 見事に命中。更にカザミは、流れるようにもう片方の足裏で、相手の胸元を蹴った。

 敵の身体を利用したバク宙。その動きのまま、天井の楕円形の照明へ、爪先のみで足を引っ掛ける。

 まるでコウモリのような姿勢となった。


『共犯者だ!! 撃て!!』

 当然、後ろに控えていた二人は、カザミ目掛けて連射。

 射撃が始まったのを見てすぐ、カザミは横へと飛び降りる。


 その間にまず、ワイヤーを飛ばした。

 先端のアンカーを、射撃中のサブマシンガン、その銃口へ引っ掛ける。

 ファイル類が入った棚の陰に隠れたそのタイミングで、巻取りを開始した。


 突如暴れ始めた銃身。これにより、射撃の向きが大きく右へ逸れる。

 入口から見てすぐ横……。



 薬品の香りが漂う棚へと火花が散った。

 これがカザミの狙いだ。


 ドガンシャァァッ!!

 破裂音。そして、ガラスの割れる音が重なった。

 引火により、小さな花火のような閃光が誘発されたのだ。


 衝撃で、前方にいた一人は壁に激突。もう一人は外へと投げ出された。

 アーマードの装甲があるため、死にはしないだろう。


 しかし、間髪入れずにというタイミングでだ。

『おの、れ……。イレギュラー……!!』

 最初に転倒させた一人が、いつの間にやら、既に起き上がっていた。隠れているカザミを狙い、重い歩みを進める。

 既に彼が振り上げている手の中には、ロボットを亡き物とした、電磁警棒が電流を散らしている。


 カザミは立ち上がりざまに上体を捻り、勢いをつけ、相手の腋を狙ってかかとを突き出す。

 ブーツの踵からは、爪先ナイフの倍はあるサイズの刃が飛び出す。

『そんな柔い蹴りで!!』

「ごめんね」


 先に近接戦へ持ち込めば……という考えだったのだろう。

 彼の目論見は破裂した。



 ズブシュッ……。

 腋から肩にかけて。

 カザミのブレードは、何の抵抗もなくその装甲を貫いたのだ。


『なん、だと……!?』

 銀色の刃に血が付着する。抜けば飛沫となって舞う。

 このブーツに搭載された刃は、レッド・アーマードの装甲くらいならば斬れる、という想定で作られたものだと恩師から教わっていた。


 うずくまる彼を治療してやりたいところだが、時間がない。

 カザミは煙幕弾を捨て置き、目眩ましをバックに奥へと進む。




 上の階にあるのは歯医者とは別。中小企業が貸し切ったオフィスだった。

 屋上を除く、四階が最上階の雑居ビル。

 カザミとゴードンは、四階に存在するオフィスに忍び込み、壁沿いに小走りで進んでいた。


 先頭の足がピタリと止まる。

 手首を掴まれていたゴードンは、その急停止につまずき、彼女の背に肩からもたれた。

 不愉快に思いながらも、カザミは、目の前の空間を気にかける。


 窓ガラスへと続く、座れるほどの大きさの段差がある。そこに腰掛けた。

 下の様子がよく見える大きな窓だ。それを開かず、なるべく屋内に身を伏せながら見下ろす。

 カザミは一旦仮面を外し、肉眼で状況を確かめた。


 やはり、三台ものパトカー。四名のガード・アーマードが待ち伏せをしていた。

 カザミ一人ならばいくらでも撒ける相手なのだが、元統括官という大柄のお荷物を抱えなければならない以上、機動力という面でも、被弾リスクという面でも細心の注意を払う必要がある。


 そのゴードンはというと、何やら、屋外に備え付けられた鉄製の非常階段がある方をジッと見下ろしていた。

 そちらから逃げるのも手の一つだが、パトカーの台数とアーマードの人数から逆算して、必ず人員を割かれているだろう。

 つまり、どちらから逃げようが、結果は同じということ。


 カザミは、昼間のトラックに侵入した際と同じ要領。吸盤のデバイスを使って、窓ガラスを慎重に外した。

 ちょうど傍には、非常時用の消火栓扉がある。中にある太いホースを利用すればいい。

「いい? 今からお互いの胴体同士を巻き付けるから、飛んでる時に絶対暴れないこと!」

 注意を促すも、彼は、先ほどから向けている視線の方向を、変えようとしない。


 どういうつもりだ。生き延びる気力が失くなったのか。

 そんな疑念を抱きながらも、どういった経路で飛んでいくのが一番安全か、再確認しようと外を見る。



 不意に、腰を押された。

「えっ……」

 気づいた時には、身体が、宙へと投げ出されていた。


 落ちる。

 いや、この程度ならば、自力でどうにでもなる。


 問題は……。カザミは即座に振り返った。

 自然と目つきが鋭くなってしまう。

「あいつ……!!」



 他でもない、ゴードンだ。

 彼は完全にこちらへ背を向け、非常階段へと続く扉の方に走り始めた。


 まんまとやられた。

 彼へ抱いていた感情は、実際のところアングと同じだ。本来ならば絶対に許せない。

 それでも、家族の仇を見つけ出すためならと、助けてやったのに……!



『おい、あれは!!』

 無論、カザミの姿を、下の警察たちも補足した。銃口が上を向く。

 カザミはすぐにワイヤーを伸ばし、建物の屋上から伸びる出っ張りへと引っ掛ける。

 曲線を描いて舞い上がるその身を狙い、警察たちの弾幕が放たれた。


 ワイヤーを掠め、身体が少しブレるも、どうにか被弾せずに屋上へ着地。

 カザミは北側に回り込み、下を見下ろす。


 階段を駆け足で下りていくゴードンの姿が見える。既に二階だ。

 ここからワイヤーを射出したところで、彼を捕まえることはできない。


 しかしどういうつもりか。道路には、二台のパトカーが待ち構えている。

 自ら墓穴を掘ったか……。そうカザミは思っていた。



 しかし、爆炎と轟音。

 その二台が大破した。ゴードンは思わず尻もちをつく。


 かといって、恐れおののくわけではない。

 まるで、自信を取り戻したかのように再び歩みを再開させた。


 何故、わざわざカザミを裏切ったのか。

 疑問は浮かんでいたが、この爆発を受けて、解消した。


 ゴードンを逃そうとする何者かがいる。

 彼の都合のいいように、事が進みすぎている。

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