155.狙撃手、ライフルに感謝の祈りを捧げながらPKする
俺は復活ポイントの泉でリスポーンした。
酷い目にあった・・・。
まさかモンスターの進軍コースのど真ん中に陣取ってしまうとは、この狙撃手一生の不覚である。
アレだ。
どうやら推測するに、街のそれぞれの門に直線で突進するようなコースに、モンスターの群れがポップするに違いない。
いわば東西南北を十字で結ぶルートだ。
ということは十字から外れた斜めのポイントに陣取れば、モンスターの進軍コースに巻き込まれずに済む。
そうだな、草原エリアの端のあたりだ。
よし。そうと決まれば早速移動しよう。
移動がてらに街の正門を横切ると、プレイヤーの大群VSモンスターの大群という、まさに公式イベントの名に恥じぬ激戦が繰り広げられていた。
意気揚々と俺を踏み潰したハムスターどもはとっくに駆逐されたようで、今は1000匹を超える狼やらイノシシが正門に向かって突撃を繰り返している。
対面するはプレイヤー軍であり、前衛職が列をなしてモンスターを食い止め、斬り伏せ、後衛からは矢や魔法が雨あられとモンスターたちを射抜いている。
明らかにプレイヤー軍の優勢だが、まあ今はそうだろう。
防衛イベントはまだ序盤である。
これから徐々にモンスターの強さが上がっていくに違いない。
俺は剣戟と怒号が響き渡る主戦場からこそこそと離れ、草原エリアの端へと移動した。
普段は初心者や生産職が狩りに勤しんでいる草原エリアも、今このときは人っ子一人見当たらない。
当たり前だがみんなイベントに参加しているのだ。
俺は唇の端を吊り上げる。
いい塩梅だ。
これなら誰にも見つからず一方的にPKに勤しむことができる。
俺はそのあたりの丘に登ると、頂上で腹ばいになった。
白銀のライフルを地面にセットする。
スコープを覗き込む。
正門までは1km以上離れているが、2つの激戦の様子が手に取るようにわかる。
1つはプレイヤー対モンスター。
そしてもう1つは――そこから少し離れた場所で行われている、PKプレイヤー軍対PKKプレイヤー軍だ。
PKプレイヤーはモンスターの大群を相手取っているプレイヤーたちを標的にしたい。
そしてPKKプレイヤーはそれを防ぎたい。
そんなわけで公式イベントとは全く関係ない部分で、不毛な争いが繰り広げられていた。
血の気の多い一部のPKプレイヤーは真正面からPKKプレイヤーを蹴散らそうとしているが、むしろPKKプレイヤーを適当にかいくぐり、一般プレイヤーの元へ向かおうとするPKプレイヤーのほうが多い。
そしてどちらかというとPKKプレイヤー軍のほうが数が少ないので、打ち漏らしたPKプレイヤーたちがすでに一般プレイヤーを狩り始めている。
とはいえ一般プレイヤーも黙ってやられるばかりではない。
何せ最も数が多いのが、この一般プレイヤー軍なのだ。
正面からのモンスター軍を相手にしながら、側面からのPKプレイヤーたちも迎撃するという数を頼みにした二面作戦で、正門の死守を続けている。
獅子奮迅の活躍といえよう。
さて。
そんな様子をスコープ越しに確認しながら、俺もいよいよライフルのトリガーに指をかける。
大量のプレイヤーとモンスターが入り乱れているものだから、特定の誰かを正確に狙うことは難しいのだが、それでも目安はある。
いい装備、高そうな装備をしている一般プレイヤーが狙い目だ。
つまり、高価なレアアイテムをドロップする可能性が高いプレイヤーである。
俺はピカピカの鎧を身に纏った剣士に照準を合わせる。
イノシシを簡単に斬り伏せていることから、なかなかの腕前を持っていることがわかる。
その剣士の頭目掛けて――トリガーを引く。
ターン。
ヘッドショットが決まり、剣士は電子の光となって消滅した。
同時に俺のアイテム欄にいくつかのポーションが入る。
残念、ハズレだ。
まあいい。
ポーションとて店売りよりも安値でオークションにかければ売れるので、全くの無駄になるわけではない。
それよりも万を超えるプレイヤーが正門付近にひしめいているのだ。
数を稼ぐ絶好の機会である。
ライフルのクールタイムが開けるたびに、どんどん攻撃すべきだろう。
次はあのシーフだ。
ターン。
次はあのプリーストだ。
ターン。
次はあのランサー・・・あれはダンチョーじゃないか。
まあいい死ね。
ターン。
次はあいつ。
ターン。
次は――。
ターン。
ターン。
素晴らしい。
何ということだ、全くバレない。
プレイヤー軍が多すぎて、そしてモンスターと激戦を繰り広げているおかげで、こんな1kmも離れた場所からちまちまと狙撃しているスナイパーの存在など誰の目にも入らないのだ。
そして肝心のPKプレイヤーたちも、PKKプレイヤーをかいくぐったり薙ぎ倒したりするのに忙しいようだ。
俺は心躍った。
例えるならばクレーンゲームの景品を、手掴みで取り放題しているような感覚だ。
ほしいものがいくらでも手に入る。
獲物が尽きることはない。
PKプレイヤーにとって、これほど心が高揚することがあろうか。
これも超遠距離から一方的に狙撃できるライフルという武器の恩恵である。
有り難うライフル。
接近戦では何の役にも立たないが、それでも俺はお前を選んでよかった。
お前を信じてひたすら使い続けてよかった。
そしてこの最高の相棒を作成してくれたカジ様にも果てない感謝を捧げよう。
俺は目を¥マークにしながら、哀れな子羊どもを嬉々として狩り続けた。
<次回予告>
狙撃手、調子に乗って死ぬ。




