第8話 誤算とセカンドベイル――オモテ
<4月17日 17時27分 スーパーニューズ蒼霞店>
僕、霜凪トウマは強敵・姫矢ツルギと不満を言い合いながらカートを引いていた。
「スポドリ2箱、あとポテチ……」
「こんなもの、必要ない。さっさと返せ」
買い物かごからポテチを取り出したツルギの、ひどく不満げな顔。ここにきてもう4回目だ。
「っ……。じゃあ、代わりにゼリー飲料と保冷剤でいいか」
ヤツはぶっきらぼうに他の場所に向かっていった。
ったく、感じ悪いな……。
※ ※ ※
会計が終わり、袋に物資を詰めていく中、僕の中で沸々とツルギに対する探究心が湧き始めていた。
怪盗ベイル、いや盗みに対するヤツの態度は憎しみにも等しい。
聞き出しておけば、それに適した行動ができる……。
あと41秒――。丁度いい。
「なあ、姫矢」
「……何だ」
「君が怪盗ベイルを嫌っているワケ、聞かせてくれるか」
「……!」
それを聞いた途端、ツルギの顔から感情が消えた。
いや、そう感じさせるほど人間とは思えない表情をした。
明らかに動揺している。かなり大きいなモノを背負っているな……。
あと29秒――。ここからだと、街頭ニュースのモニターがよく見える。
「何の話だ、貴様ッ……!」
ツルギが僕の胸ぐらを掴みにかかった。どうやら、地雷を踏んでしまったようだ……!
「っ……! 悪い、変なこと聞いて」
申し訳なさそうに返すが、ヤツの剣幕は収まらることを知らない。
「この期に及んで……!!貴様が怪盗ベイルだろうがッ!!」
「!! お前、こんなんところでも戯言を……っ!!」
他の買い物客にも衝撃が走る。
マズい、ざわついている。これは予想外だ……!
「っ……」
時間まで後6秒。こんな時に警備員まで飛んできた……!
姫矢ツルギにはこの時、確信があった。
「8日前の挑戦状、あれは追い詰められている証拠っ!その日すれ違った時、お前の手から柑橘類の香りがした……!!」
なっ……!?洗っていたというのに、あの一瞬で嗅ぎ分けたのか!?
後3秒――まさか、詰んでいたのは僕のほうだったのかっ……!?
「これでも違うと――」
「違っ……」
ダメだ、通報される……ああ……のどかあああ――ッ!!!
チェックメイト――
と思われたその時、街頭テレビの速報が街全体に響き渡った。
『速報です! 怪盗ベイルが予告通り、東京ニューツリーに姿を現しました!!』
「なんっ、だと……!」
僕を締め上げていたツルギが、ニュースの映像を見て目を見開く。
買い物客、警備員や店長も通報することを忘れ、映像を見つめる。
そこに映っていたのは、ツリーの頂上で風と共に毅然と構える、僕と同じスタイルの蒼い仮面の男――。
紛れもなくそれは、怪盗ベイルだった。




