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刑事アズキ 第三話。

冬の朝の神奈川県警。

アズキは椅子に腰掛けスマホを見ていた。

すると、強く尖った焦げ臭いコーヒーの香りがアズキの鼻を刺激した。

アズキが香りのする方を見ると、そこには湯気の立ったサムライブルーのマグカップを持った石田がいた。

石田はアズキに近寄ると、スマホを覗き見し、ニヤリと笑いながら言った。


「へぇ、意外だな。アズキ、お前がアニメ好きだったとは。」


アズキが石田を見上げながら話した。


「ちょ、石田さん。なんで人のスマホ覗き見してるんですか?」


「スマン、スマン。で、そのアニメは何なんだ?」


石田はそう言って、ズズッと音を立てて、コーヒーをすすった。


「アニメじゃなくてブイチューバーです。あと、私じゃなく弟がはまってるんです。」


アズキは少し怒るようにして石田に答えた。

そこに、若い刑事がやってきた。


「失礼します。通行人が路上で刺殺された若い女を発見しました。」


「わかっていることは?」


石田が聞くと、若い男性刑事が状況を説明し始めた。


「女の名前は佐藤彩、年齢は28、夜桜れんの名義でブイチューバーをしていたようです。」


ズズッとコーヒーをすすると、呆れた顔で石田が言った。


「ブイチューバーねぇ、世も末だ。」


「同意します。」


照れくさそうに小さく頷くと、アズキは立ち上がった。


「珍しく意見が合ったな。さぁ、ガイシャにご対面といきますか?」




神奈川県警内、遺体安置室。

石田が申し訳なさそうな顔をすると、アズキに話しかけた。

 

「事件続きの中、無理させて悪い。スマンがダイブしてくれるか?」


「石田さん、大丈夫です。私、水泳部だったんで、意外にタフなんですよ。」


アズキは健気に返事すると、深く息を吸い、暗い記憶の海へ潜っていった。




ーー——「スパチャありがとう。❤」


「PCの電源が落ちる。」


「Club NOIR。」


「蓮、月城蓮を連れてきて。」————




アズキはビジョンを語るとふらついた。


「アズキ、大丈夫か?今日はここまでだ。」


石田はふらつくアズキを抱き抱えた。




翌日の夜、横浜、福富町。

ピンクに紫、極彩色のギラつくネオンの中、開店前のクラブノワールがあった。

赤と青に輝く『Club NOIR』のスタイリッシュな看板を前に、アズキと石田が立っていた。


「立派な店じゃねぇか?いつも俺が行くスナックとは大違いだ。」


「行きますよ、石田さん。」


石田が苦笑いをすると、アズキが店内に入って行った。

石田はカーキグリーンのヨレヨレのスーツから警察手帳を取り出すとボーイに見せた。


「神奈川県警だ。ここに月城蓮って男いるかい?」

 

ボーイが慌てて、奥にいるミルクティーベージュの髪、黒のテーラードスーツを着た男に声をかけた。

 

「月城さん、神奈川県警が……。」

 

月城と呼ばれた男が、鋭い目つきでアズキ達を値踏みするように見つめた。


「県警が俺に何の用だ?」


「失礼します、月城さん。」


そう言うと、アズキは月城に近寄り、匂いをクンクンと嗅ぎ始めた。

月城は驚き、怪訝な表情でアズキを見た。

アズキは驚く月城を見つめると、ビジョンを語り始めた。




————「覚醒剤を見せるガイシャ。」


「キメセクを求めるガイシャ。」


「性行為。」


「Xを見せるガイシャ。」


「佐々木って豚、凄い貢ぐの。」


「ブヒブヒで滅、笑うガイシャ。」————




アズキは力なく首を振り、重苦しい顔で月城を見た。


「違う……この匂いじゃない……。」


刑事アズキ。 第三話。 終わり。

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