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The Princess  作者: 千羽稲穂
3/4

公主旅行

 なんということだ……少女の手首と私の手首が手錠でつながれているではないか。



 あまりの衝撃に私の脳がフルに回転する。

 朝からの出来事が並んでいく姿は壮観で、改めて一から洗っていきたくなった。


 私は……旅をしている。


 旅をすれば、いろいろな品々に出会う。

 金銀褐色、高価なものも安価なものもある。


 私はそういったものを見定める手段はないが、集めることができる。物珍しいものがあれば引き取り、次の街に着き次第、売りさばく。


 だがそれを私の主な商売にするのではなく、なあなあでとどまることにしている。私の本質は旅をすることにある。


 私は旅をする旅人。

 旅人として生きていくと決めている旅人だ。


 だから、旅をする資金集めのために、私は商人じみたことをしているのだ。


 彼女を出会い、ほんの少し時を共にしたのは、そんな旅の途中のある街でだ。その町はさびれていた。

 人は住まず、殺風景な住宅だけ広がり、石畳には草が生え、家は半壊状態のものが多かった。木製の屋根は剥げていて、中が覗けた。


 私はその街を探検し、その日の宿にしようとしていたのだ。いろいろな建物の屋根から中をのぞき、その家安全なのか、それとも危険なのか、確かめた。ようやく安全だろうとした家に入った時、既に夜は更けていた。そこに身を置き、その日は眠った。


 とんとん、私に近づく足音を聞いたのは夜更けだった。薄目を開けると、世にも美しい少女が立っていた。


 絢爛豪華な銀白色の髪。くるりと大きな瞳ははっきりとしたブルースカイ。白い柔肌は陶器のよう。


 そんな少女、この世にいるはずない。

 なんだこれは夢か。


 私はもう一度目を閉じた。

 


 夢の中で私は、ある処刑人を見た。


 彼は思い悩んでいた。自身が死ぬべきか、生きるべきか。

 檻の中で、自らの拳銃をこめかみに押し付けていた。だが、すぐに拳銃を手から落とした。


 薄くじめじめした空気が立ち込めていた。

 私はそれに触れ、一層陰鬱になった。心がよどみ、うなされているのが分かった。


 私はこの男をどうにも憎めなかった。この男は、葛藤し、何度も逡巡し、拳銃を落としているのだ。体が拒否反応を起こし、彼の生き方を見せていた。


 彼は生きたいのだ。生きたくて生きたくて仕方ないのだ。だが、その心が拒否して、死ねないと苦しんでいるのだ。必ずしも生きることと死ぬことは平等に釣り合わないことがある。彼を見ているとふと悟るのだ。


 彼がそっと檻の外にいる私を見た。ぐっしょりと涙で濡れた顔が見えた。くしゃくしゃに歪み、あることに気づいた。

この男を私は知っていた。


 このくしゃくしゃの仮面がずり落ちる。



 ――お前は私だったのか。



 旅をするには、軽率な理由がつきものだ。

 これは自身の持論だ。


 私の理由はきっと命についてよくわからない疑問を持ったからだった。この地球において、私という命はあまりにも小さい。あまりにも、あまりにも……


 それに気づかせてくれたのは、私の母だった。

 母は、私に日々自身に価値はないのだと罵った。そんな母の口癖は「命は地球よりも重い」であった。


 価値がないことよりも、ここにある私のただ存在していた事実のみを彼女は慮った。ここに私がいるから、それだけで大切であり、私がしでかすことは何にも価値がないのだと言っていることと半ば同じであったように思う。


 私はこの自身に価値があるのか、見定めるために旅に出ることにした。私なんてどうでもいいのなら、私の意思だってどうだっていいのなら、きっとそれほどまでにここにある事実より小さい地球の価値を見てみたかった。地球のありとあらゆる価値を私を通してみてみたい。


 私は死ねないが生きたくもない。死と生が正反対ではない、私は自分探しというものに出かけているのかもしれない。


 起き上がると、傍らに少女が寝ていた。少女の右手には手錠がかけられている。私の左手にはその手錠の片方がかけられている。つまり、私は少女と手錠でつながっている。


 その少女というのも、銀色のオオカミのような銀髪をしていた少女で、昨夜見た少女と全く同じではないか。


 少女の姿は黒のレースのワンピース。


 すやすやと気持ちよさそうな寝顔をこちらに向ける。息が手に吹きかかる。ぶるりと私の体が震えあがる。


 そんな、まさか、私はこの少女と、一夜を。いや、そんなわけはない。ここら一帯は、きちんと見回ったはずだ。なぜこんなことになっているのだろうか。


「あれは夢じゃなかったのか」


頭を抱えて、少女をちらりと見る。が、やはりかわいい。

すらりと伸びる太もも。薄いベールに蓋をされた禁断のそれに淡い期待を抱き、スカートの裾に手をかける。


「んん……」


 少女はころりと寝返りをうち、私を手を引っ込めた。


「あら?」


 小さい雀のような声が少女の口から発せられる。するとゆっくりと、起き上がり、私と目線を合わせた。


 くるりと丸い蒼い瞳がそこにはあった。透き通っていて、私を写す。ある男がそこには写っていて、やはり私だとは感じられなかった。


「起きたの?」


 くしゃくしゃと髪をかく。その一つ一つが少女との夜の後のようでなんだか恥ずかしくなる。そんなことなかったはずなのだが、どこか罪悪感めいたものを抱いていた。


「君は何者なんだい?」

「私?」


 少女は何かを思い描くように頭の上に目をやった。


「私は、アゲイン、カタリナ、ステイ、スコッティー、昭、奇々怪々、悪魔、馬鹿、あほ、ゴミ、クズ、生きる価値のない……」

「待った待った」

「生き物、無価値、シット、ららぽーと??」


 嬉々として、少女は言葉を続ける。この言葉の数々、旅をする私は、どれほどの叱咤、侮蔑か理解していた。

 というより、後半は悪口も面倒になって、適当にそこらにあるものをつなげているようだ。


 少女はそれでもすべて述べて、すべてに笑みを見せた。


「ねぇ」言い終わった後、少女は私の体に乗り上げた。「ねぇねぇ」

「近いよ」


 少女の体重は軽い。目と鼻先は、少女の紅色の唇と、蒼い双眼だ。手だけ、つながれているから、そのままだ。


「あなた商人?」

「違う」

「なら、旅人」

「そうだ」


 ああ、間違ってた、と少女はおどける。どちらかと言えば間違えたことにとても喜んでいるようだ。


「なら旅人さん、私を凌辱して」

 


 一瞬私は固まった。



「な」頭の中にいろいろ飛び交ったが、最終的には理性が勝った。大勝利とは言わない。とても苦戦した。


「何を言っているんだ」

「だめ?」

「そもそも、今の状況が理解できない私に頼んだって、なんの得にもなら、な、い」


 と、言っている私のほうがどうかしている気がした。


「貞操を守るのが」こちらの理由の方が正しいはずだ。

「あー」


 少女は耳をふさぐ。


「その『貞操』聞き飽きたの」

「貞操は貞操だろ」

「みんなして、言うんだもの。貞操……男女が性的関係の純潔を保つことだっけ?」

「なんでそんなに詳しく言えるんだ」

「調べた」


 少女はどこから出したのかわからないが、辞典を取り出してきた。


「準備がいいね」


 少女はげんなりした。



 そして今に至るわけだ。

 


 最初はどうでもよかった。少女がどうなろうが、どうしようが。だが私の手錠をなかなか外してはくれなかった。


「私を傷つけて」

「嫌だ」


 と、こんな理由でいつも旅人を襲い、彼女の異臭を放ってたのだろう。

 

 正直言って、最初は良かった。最初だけは、よかったんだ。


 少女の美貌を隣でおあがめるなんてまたとない機会だ。それに私は商人のような旅人でいろんな精巧な人形を見てきたから、これもその一つのように思えば、目利きを鍛えるのにも良かった。


 一方で、彼女は容赦がなかった。彼女はその自身の変態性を隠すことなく表に出し、常に要求するのだ。死というものを。死に直結するかもしれない傷を。私は理解できなかった。


 そもそも、私は価値というものが知りたかったのだ。

 死の価値よりも生の価値を。この地球の価値を。命の価値を。

 少女はそんなものどうでもよさそうだった。つないだのはほんの気まぐれで、とにかく少女にとっての刺激を求めていた。

 

 刺激とは、と聞けば必ず「この世にとって最も素晴らしいもの」と自慢げに返してきた。


 そんなものないのではないか。


 とりあえず、私はこのままでは旅はできない。だから、少女をだまして斧を持ってこさせ、手錠を切り離させてもらった。

 恨めしそうに斧を見ていたが、彼女には一切向けなかった。どうしたのか、もう斧を手に持っていた時には、私の少女への理解が進んでいた。行動や心理は理解できるが、その中身を全てにおいて共感できないが。


 不可能なものにいつまでも構ってはいられない。少女を無視してすぐにその街を去った。


 


 ねぇねぇ、と後ろからついてくる少女がいた。


 まだついてきていた。少女に何も構っていない。食事や水すらも取らせていないのに、少女は元気に私の後ろをついてきていた。


 次の町は水がない街だった。砂が敷き詰められ、人も少ない。その町に来るまで移住する者たちを何人も見た。踏みしめるたびに踏んでいる感覚がなかった、靴の中がうだるように熱く、鉄板の上を歩いているようだった。


 その後ろを少女が裸足でついてくる。とんとん、とけなげな足音を響かせて、「あれは何? 私を殺す状況が整っているものなの? あれは? 最高の刺激が感じられそうじゃない」と可愛らしい声でどぎつい言葉を吐きまくった。そのせいで私に誰も近づいてこないおろか、私は水も食料にもありつけない状況が続く。


 もうそろそろ水もなくなってきていて、食料もここ数日食べていない。ここで数滴でも水を飲みたかったが、別けてももらえない。


「ついてくるな」

 いじけて、私はじんわりと染み渡る低い声を響かせた。

「ねぇ」

「ついてくるなよ!」


 私が足を止めれば、少女も止めた。

 少女を見れば、少女は何かを楽しみに待っていた。


「お前は勝手についてくるな」


 ぶるりと少女が体を震わせた。恐怖ではなく、歓喜として、彼女は受け取る。それが彼女の刺激だからだ。


 刺激とはなんだ。刺激とは、そんなに良いものなのか。


「もういい」


付き合うだけどうでもよくなり、近くの道に腰を下ろした。

ふてくされた私は鞄から、手の平より少し大きめの箱を取り出し、前に置いた。こうしてカンパを募るのだ。少女はその惨めさに惚れたのか私の横により、カンパを待った。


 のどが渇いてくる。ごくりと唾を飲み込もうとするがもう飲み込む唾もない。水気のない空気を飲み込むしかない。逆に一層カラカラとのどが乾く。


 しばらくすると、私たちに警戒を解いたのか街の人が目の前を通り過ぎるようになった。そして時折私の横にいる少女を見て、チャリンと何円かお恵みをしてくれた。少女はそのたびに嫌な顔をしたが、その顔も凛としていて絵になった。

 

 なぜ、少女はここにいるのだろうか。その問いもすべては刺激に収束してしまうのだろうか。そんなはずはないだろ。それなら価値とはなんだ。刺激という価値がそんなに大きいものなのか。


 ため息一つする。


「あなたは、考えることがたくさんありそうね」


 少女の声がしたと思えば、少女の手が私の服の裾に触れた。弱い力で引っ張っている。


「なんでそう思うんだ」


 私の心の中身を少女が悟ったことに不気味に思いつつ、この少女の中身がまた一層理解できなくなり恐ろしく感じた。


 少女は、いったい何の目的があるのだろうか。私を惑わせて、結局刺激が与えられると思っているのだろうか。利用されているようで苛立たしい。


「あなた、さっきから目の前の事柄が見えてないもの」

「目の前?」

「私とか、目の前の光景とか、見えてない」


 少女の力が強くなる。


「この世界にはたくさんの刺激があるの」


 私は少女の声に耳を傾ける。多くの人が私の目の前を通り過ぎたていたが、全くそうは見えなかった。事実より感覚がそうじゃないだろ、と否定した。

 この世界に私は一人だと感じてしまう。孤独にさいなまれる。


「今、足の音が私の目の前を通り過ぎた。音の刺激。

 目の前を通り過ぎるという存在を感知される刺激。

 私の肌が外気に触れる痛みという刺激。

 どれも素晴らしいもの。でもね、あなたは感じてない」


「そういう感覚があるのは分かる」


「いえいえ、分かっていない。私がどんな表情をしているか、私がどんな気持ちでいるか捉えることができてない。私は刺激が大好きなだけ」


「君がなんでこんなところにいる理由だろ」


「そう。ただ単に刺激のため。理由なんて他にないシンプルでいいのに、いろいろ考えてしまっている」


 目の前がどんどん真っ暗になってくる。頭の中で思考が定まらない。彼女の支離滅裂な言葉の数々に私の頭は考え込む。


 私が考えすぎているって、思ってもみなかった。目の前の事柄をとらえられていないことに気づいていなかった。

 いや、気づいているのだ。そう感じているし、捉えられている。

 

 少女に何のいわれもない。それなのに、少女は断言する。


 真っ暗な暗闇の中、私は足を抱えてうつむく。水がなく目がうつろになる。渦をまく、地面に足を取られそうになる。

 

 少女の声が響く。


「私は死ぬことができないの」


 少女の力がいつしか鎖に変わっていた。ここから離れられない鎖だ。その鎖は私の母親が課した言葉と同じだった。


 存在価値だけしか私にはない。

 さまざまな街に訪れるたびに感じるのはやはり、私なんて価値がないことだった。この星のほうがあまりにも大きくて「地球よりも重い命」なんて自身に感じなかった。


「私は、生きる意味を探した」


 私は価値を探した。彼女のようにここにいる、存在する意味を、価値を見定めたかった。目の前でたまっているであろう、お金の価値しかこの私にはないのか、この立っている地面は私よりも価値がないのか、見定めたかった。


「でも、結局出た結論はね考えないことだった。もっと素晴らしいものがあったから」

「それはなんだ」


 私の母なら命と呼ぶだろう。


「それは……刺激」


 少女の声が朗らかになった。


「生きている意味を考えるのは無駄だった。だってそういうことは暇な人がすること。暇じゃない人は、刺激を求めるの。それが私たちの最たるもの」


 生きている意味じゃなくて、刺激を求めることに意味があり価値があるということか。なら、私の刺激とは、価値とは何なのだろうか。私の刺激は何なのだろうか。この意味か、考えか。


 黒いヘドロに身を沈めていく。体が言うことを聞かず、ますます鎖は体に巻き付き、音も聞こえない。体も動かない。頭が重い。どこにもない答えを追い求めているようだった。


「刺激、きっとあなたは気づいていないだけ。私はそういうあなたに刺激を求めた。そういう人がね、一番私に刺激を与えてくれるから」


 巻き付く鎖に手をかけたくなった。価値を見出せなくて、手近にあるものに手を伸ばしてしまう。私の見定めるものよりも、これに価値があり今生きる価値があるのだと錯覚させられる。


 私は今これをしなければならないのだ。


 ーーちゃりん


 今小さな手が小銭を恵んでくれた。音が聞こえた。雑踏の中、目の前の缶に少年は物珍しそうにこちらを見つめていた。


 足元の黒い空間に波紋が広がる。白い波紋は私を中心に広がり、周辺を照らしていく。私の視界を明かしていく。


「これ、ちょっとだけあげる。僕の今日のおこずかいなんだ」


 少年の純粋無垢な黒の瞳が輝いていた。身なりはみすぼらしく、額には傷が残っていた。それは人為的に傷つけられたもので、痛々しかった。


「喉乾いくの辛いでしょ。僕もわかるから」

 

 さらっと乾いた風が私の目の前を過ったと思えば少年はすぐにその場から走り去った。


 砂埃が目に入り、痛みから目に涙が浮かんだ。目の前の光景を見れなくなり、しばらく目をつむりたくなった。しかし少年の後姿を見るためにじっとこらえた。彼の後姿は力ずよく、目に焼き付いた。


 私の少年の頃と似ても似つかない、明日をしっかり捉えた姿だった。あるのは美しさやけなげさで、心にくる。


 とくん、と何かが跳ねて答えが見えかかった。


 からりと晴れた空に、雲一つないどこまでも続く青。手を伸ばすとどこまでも広くて、ちっぽけに思える自分という存在。だが、そこにいて延々と続いているわけではない。受け取る自分がいる。


「これが、私の刺激だ」


 瞬きせずに目から大粒の涙が頬を伝った。汚い砂埃がまじったものだった。情けないものだった。今まで何を見て旅をしてきたんだと、叱りたくなった。


 今の少年の心や、背中。美しいものを目に写してきた。どんなものも比べてきた。私の価値と、地球の価値とを、比べて本当に大切なものを見つけられなかった。


 違うんだ。刺激とは全てにおいて無碍にされるものだ。私の価値で比べるべきものでもない。考えるべきものでもない。美しいものなのだ。全て淘汰するもの。


 ある場所では広大な青海を見た。

 ある場所では、光る洞窟を見た。

 力強く落ちる滝を見て力強さを感じた。


 それを感じる自分自身とその風景どちらも大切なものだった。どちらも大切な刺激だった。生きるものだった。


「どうしたの?」


 何かを待っている隣の少女は私を伺う。その一つ一つのしぐさに気品を感じた。おそらくそういった出なのかもしれない。


「君にとっての刺激と私の刺激はまた違ったものだとわかっただけだ」


 少しだけ結論が出てすっきりしただけだ。価値など見定めるなんて意味のないことだった。それに少女と私とではあまりにも価値の見定め方や考え方が違っていた。


 お互いの価値のために、私はふと少女のために何ができるか考えた。


 自然の美しさも人間の醜さも、私の見てきた光景の中ではきれいな光景の一つだった。なら少女のために、彼女のために……


 少女を少女のための刺激を与えられるように売ろうと考えた。


 私は商人を旅の傍らでしていた。人間を売るのもまた一つ。少女が望んでいるのは、きっとそういう刺激だろう。


 少女は私に何かを気づかせて、その後、私に裏切られるのを所望しているのだろう。だが、少女の考えとは違うのは、今私は少女のために何かできないかと内心では少女のことを気に入っている。少女のために少女の刺激を満たしてあげようと考えている。


「ありがとう」


 呟いて、少女のやわな手を握って引いた。少女はただ頭をかしげていた。


 鎖は小さく、暗闇ももう私には見えなかった。あれだけ考えてみたのに爽やかで、気兼ねなく少女のことを一つの名前で呼んだ。


「アゲイン」


 少女はうん、と大きくうなづいた。


「俺は君を売ろうと思う」


 少女の瞳が先ほど来た少年の瞳のように輝く。

 これが私と少女のためにできる刺激の交換だった。


 後に、少女は驚くほど少ないお金で売れた。私はその小銭を持ち、カンパをもらった少年のもとへ返しに行った。


 これから先もまだまだ刺激を求め、私は旅をするだろう。少ない小銭と、刺激のある景色を求めて、私が存在することを告げるために。

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