第三十六話 相馬妹子のあやふや
第三十六話 相馬妹子のあやふや
「お邪魔しまーす」
「おっす、来たかマケル。まあ入れよ」
「ようイマイチ。うわぁ懐かしいな、イマイチの家。前来たの何年前だ?」
「小六の時が最後だと思うから、四、五年前じゃないか?」
「もうそんなになるのか。うーむ懐かしい。あれ? 玄関にハニワの置物なんて、前からあったっけ」
「いや、それは二年前くらいに買ったやつだな」
「変わった趣味してんなあ」
「俺の趣味じゃねーよ。まあいい、俺は飲み物持ってくから、先に二階行っててくれ。三年前に俺の部屋の場所変わって、階段上って突き当たりの部屋になったから。間違えんなよ」
「りょーかい。おー、階段の窓んところに置いてあるこのサボテン、これは見覚えあるぞ。確か昔来た時もここにあったな。ちょっと大きくなったか? ――さて、上って一番奥って言ってたよな。再開して以来初めてのイマイチの部屋か、失礼しまーす(ガチャ)」
「…………」
「あ、えっと、部屋間違えました。失礼しましたー……(バタン)」
「ん? 何やってんだマケル。さっさと部屋入れよ」
「えっ、イマイチの部屋ってここであってる? 見知らぬ誰かが中にいたからてっきり部屋間違えたかと」
「見知らぬ誰か? ……なんだ妹子じゃねーか。おい妹子、今から俺らここ使うから自分の部屋戻れ」
「…………うん」
「うし、じゃあまあ適当に座れや」
「……おいおいおいおい、イマイチおい! 今の子誰だよ!」
「は? 妹子だろうが」
「だからその妹子ってのが誰だつってんだよ!? 妹? 弟? ほどほどに伸ばしてる髪と可愛い系の顔立ちのせいで性別すらわかんなかったけど、お前に兄弟なんていたっけか!?」
「何言ってんだ? 妹子は昔からいたし、なんなら一緒に遊んだこともあるだろうが。ほら、冬に公園でかまくら作った時とか、夏に山にキャンプに行った時とか」
「そう言われるとイマイチとか同級生の友達の他に年下の子がいたような……。いやでも待て! 俺の記憶の中では一緒にかまくら作ったのは女の子で、キャンプに行ったのは男の子だった気がするんだけど!?」
「ハハハ、まあ妹子は小柄で中性的だからなあ。小さい頃からしょっちゅう性別間違えられるんだよな」
「それで、あの子は男なのか? 女なのか? 服装もTシャツ半パンで男女の判別できないし、声もさっき一瞬聞いた時はどっちでもあり得る声だったし」
「雰囲気もぼんやりしてて、男か女かわかんねえしな。兄の俺から見てもたまに弟か妹か迷うんだぜ? ハハハ」
「で、結局あの子の性別はどっちなんだよ!」
「物事がはっきりしない、不明瞭だ」という状態は、その対象に対する情報が少なければそれは確かに対象について判断を下しかねることにつながると思いますが、かといって得られる情報が多すぎるのというのも、その中に誤情報が含まれる可能性も多くなるわけで、それはかえって対象の真実の姿が見えなくなってしまうことにつながるというのも同様にあり得る話だなぁ、と情報に溢れる昨今の社会で常々思う次第であります。
だがしかし、ある対象の「真の姿」というのは、それぞれの人が「これが真実だ」と思い描く姿に過ぎず、唯一絶対の「真の姿」というものは存在しないわけですので、あえて言うならば偏った情報や間違った情報に踊らされて「客観的な立場から見て」「好ましくない真の姿」を思い描かないようにする、というのが正しい言い方かと思われます。
何の話かといえば、ようするに選挙で投票する人はよく考えようね、ということです。
毒にも薬にもならないような人に投票するのは構いませんが、あからさまに「こいつはやべぇ……! こんなやつに政治は任せられねぇぞ……!?」というような人を「無知ゆえに」選んでしまうのは避けましょうという話です。
何を伝えたいのかわかりにくい文章で申し訳ありませんが、いまさら別の話題に書き直すのは疲れるので、今回はこれであとがきとさせていただきます。
次の投稿は来週末のつもりです。




