第三十五話 江瀬茅菜の戯け
第三十五話 江瀬茅菜の戯け
「ううぅ……。やばいやばい。これはやばいよ……」
「オー、十字じゃないカー。ニーハオマー」
「っ!? え、江瀬さんか……。お、おはよう」
「どうしたアルか十字ー? いつもの元気ないネー?」
「いや、ちょ、ちょっとね……」
「むー? アー、わかったアル。オマエ変な鳥食べたアルな? ダメよー、変な鳥食べるときはちゃんと火通さないトー(バンバン)」
「あ、あの江瀬さん。背中叩くのやめてもらっていい?」
「んあー? なぜアルかー?(バンバン)」
「漏れ、漏れちゃうから……!」
「アー、トイレなのナー! それは悪かったアルなー(バンバン)」
「だ、だから……叩くのやめろっつってんだろうが!!」
「十字がキレたアルー! くそウケるアルなー!」
「なにしてんの?」
「オー、マケル。オハヨーアルな」
「マ、マケル君……ッ。お、おはっ……」
「どうしたん十字君」
「お、お腹が、限界……」
「なに、十字君腹痛いの? ならそこの角曲がればコンビニあるし、そこでしてこれば?」
「!? マケル君ッ、ナイスアドバイス……ッ!」
「あ、行っちゃった」
「慌てすぎて途中でコケて、その衝撃で漏らさないといいアルけどナー」
「あのさ江瀬さん。実は声かける少し前から様子見てたんだけど、腹痛い人の背中叩くのはガチでやめてあげてね? 本人にとっては割とマジで死活問題だから」
「マー、あれはワタシなりのスキンシップアルからなー」
「アメリカンとは違う意味で過激なスキンシップだなオイ」
「でも、ワタシの故郷ではアレが普通ヨー?」
「江瀬さんの出身地って……」
「中国アルよ?」
「嘘つけ! そんなウルトラエセ中国人風の喋り方する中国人がいるか!」
「アイヤー、ホントよ? ワタシ、鳥取生まれ鳥取育ちヨ?」
「中国って中国地方のことかよ! てか、どっちみち中国人ではないよねソレ!?」
「マー、この口調はワタシの一世一代のギャグアルからなー」
「なんて反応したらいいかわかんねぇよ……」
「オット、喋ってたらもうこんな時間アル! マケルも急ぐがヨロシ!」
「俺は飲み物買ってきたいし、十字君の様子も見たいから、そこのコンビニ寄ってから行くよ」
「お前いい奴アルなー。それじゃあ、ワタシは先に行ってるアル! “再見”!」
「あ、今の発音だけネイティブぽかった」
さて、今日は前回から一週間しか間を開けずに更新することができました。おはようございます。K君です。
さて、“エセ○○”といえば実際は○○ではないのに、あたかも○○であるかのように見せかけることを指します。エセ外国人といえば外国語しゃべれないのにそれっぽい発音や容姿をした人、ゼロ年代まではしばしば“ペラペラ”という擬音語が外国語を流暢に話す様子を指し示し、エセ外国人キャラは大抵「ペラペラ」としゃべっていました。不思議。
今回とりあげたエセ中国人。漫画なんかで今でも登場したりするこのジャンルのキャラクターの特徴である「~アルよ」という語尾がどこで生まれたか、ご存じでしょうか。
これは日本が諸外国との貿易を盛んに行い始めた室町以降の貿易港で、外国人に難解な日本語をなんとか理解してもらおうとした際に「とりあえず単語に“~ある”ってつけとけば言いたいニュアンスはわかるから」と教えたのが始まりとされ、その昔は中国人に限らず、各国の貿易商人が“~ある”、“~です”、“~よ”などと、いわゆるつたない日本語を口にしていたようです。その後様々な創作物でそういった口調の外国人がとりあげられる中、特にアルアル言う中国人の印象が強かったらしく、そのイメージが現代まで残り続けているそうです。
次回更新は七月中を目指します。




