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第二十一話 人寺武士の部活

第二十一話 人寺(ひとでら)武士(たけし)の部活

「あっ、即君。ちょっといいかな?」

「何か用か?」

「確か即君って剣道部だったよね?」

「そうだが、それがどうかしたか?」

「実は人寺君のノートが俺のノートに混じっててさ。部活に行くついでに渡して貰えたらなーと思って」

「人寺? 人寺武士は剣道部じゃないぞ」

「えっ!? 違うの!?」

「どうしたマケル」

「ああ、イマイチか。人寺君って剣道部じゃなかったっけ」

「んん? 違うのか? あいついつも『小麦穀物焼き、売り切れてたでござるよ~(パンが売り切れてたよ~)』とか言ってるのにか?」

「どう考えてもラストサムライだよね、あの口調」

「竹刀を帯刀してそうなイメージがあったんだがな……。剣道部じゃないって事はほかにそれっぽい部活に入ってるって事じゃないか?」

「すると……弓道部とか? 弓道部ってたしか花津夜さんが入ってるとこだよね。あっ、花津夜さんだ。ちょうどいいところに!」

「あ……? なんか用か?」

「人寺君って弓道部だよね?」

「人寺……? 誰だそれ」

「ほらあの『雨でござるかー。傘持ちてはきてぬで候ー(雨かー。傘持ってきてないよ-)』って言ってるやつ」

「ああ、あいつか。……いや、うちの部員じゃねぇな。部活で見たことねえし」

「ええー?? 弓道部でもないのー?」

「いよいよ、分からなくなってきたな」

「じゃあ、囲碁・将棋部とかは?」

「囲碁・将棋っていうと……木関か」

「まだ教室に残ってるから聞いてみようか。ねぇ木関さん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「なにマケル君。私も今数学のプリントやってて、ここの答え聞きたいんだけど」

「俺よりも緒世に聞いた方がわかりやすいよ。ところで木関さん、人寺君って囲碁・将棋部?」

「え? 違うけど?」

「そう、ありがとう」

「あら、乃葉香まだそのプリントやってるの? 教えてあげるからさっさと済ませよ?」「こうなったら委員長の塚井に聞くのが早いんじゃねえか?」

「そうだね。なあ緒世、人寺君って何部?」

「人寺君? たしか英語クラブだったと思うけど」

「「意外すぎるわ!」」


「武士道といふは、死ぬことと見つけたり」という有名な言葉がありますが、これは別に「そうかわかった、武士道の本質ってのは死ぬことにあるんだ。よし、死のう!」というような自殺推奨の言葉ではなく、常に死を覚悟することで迷い無く行動することができるという意味だそうです。生きることを求めて行動すると、その行動が誤りだった時に後ろ指を指されることになりますが、死ぬことを求めて行動すれば、例え誤りだったとしても死後に陰口を聞くことはできないため、間違えることを恐れずに行動できる、ということらしいです。

そういえば現代でも、「いつ死ぬか分からないから、死後のハードディスク内のデータの扱いについて、生前から手を打っておいた方が良い」という言葉をよく耳にします。やはり日本には今でもブシドースピリッツが生き続けているんですね。

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