ちょっと待て! それは犯罪だろ!
「すげえ……この街、思ってたよりもずっとカラフルだな! 屋根にはたくさんの小さな旗が飾られてるし、カーテンや絨毯も色鮮やかだ。街中が色彩に溢れてる!」
ハジメは、超高解像度でレンダリングされたこの世界のあらゆる隅々を観察しながら、感嘆の声を漏らした。
ハジメとゴエモンは、『白の回廊』と呼ばれる街の中を歩いていた。
「だからこそ『白の回廊』なのさ。白とは、すべての色が合わさってできる色だからな」
ゴエモンがハジメの言葉に答えた。
二人が歩くこの街は、大きく3つの区画に分かれていた。
最も広大な面積を占めるのが、農地が広がる『緑の区画』。そこは街のすべての農作物が集まる場所であり、ブドウ、ツル植物、オリーブ、レタス、ジャガイモをはじめ、想像しうるありとあらゆる野菜、果物、根菜類が栽培されている。
次に広がるのが『茶の区画』。ここは主に農民や平民たちが暮らす一般的な居住エリアだ。
そして、街の最も高い場所に位置するのが『金の区画』。貴族や富裕層だけが住むことを許された場所である。
この3つの階層によって、『白の回廊』の社会的なピラミッドが形成されていた。
現在、ハジマックスとゴエモンは、その『金の区画』へと向かって歩みを進めていた。
「ゴエモン、もしかして探してるワインって『ヴォルペ家』のやつか?」
「その通りだ! 実は仲間のパーティーが一度そのワインを手に入れたんだが、途中で盗まれちまってな」
「マジか? 残念だったな。最近この辺りじゃ盗難事件が多発してるらしいけど、どこかの犯罪グループの仕業か?」
「いや、盗んだのは『2人の英雄』だったらしい。どこの誰かまでは特定できなかったがな。とにかく、代わりの品を手に入れるためにここに来たってわけだ」
二人はやがて、ダークオーク(黒樫)で造られた巨大な館の前に到着した。
建物の周囲には無数の光の粒子がふわりふわりと舞い、幻想的に輝いている。2階建てのその館には、黒木の太い梁に支えられた広大なバルコニーがあり、壁から梁に至るまで見事な彫刻がびっしりと施されていた。使われている木材が最高級品であることは一目でわかる。
「これ、お金で買うのか? それとも『交渉』でいくのか?……交渉だよな! だからこそ、圧倒的なカリスマ性と美貌を持つこの俺を選んだんだろ?」
ハジメが冗談めかしてウインクをすると、ゴエモンは友人の顔を見てクスクスと笑い声を漏らした。
「ははっ、お前は面白い奴だな、ハジメ。だが違う……俺たちは『盗む』んだよ」
「盗む? ……えっと、盗むって、あの『泥棒』のこと?」
「ああ! なにせ俺たち『ユミルの猟犬』は、欲しいものがあれば奪い取る主義だからな!」
ハジメは、その言葉を聞いた瞬間、両目を限界まで見開いた。
(おおおおおおおいッ!! また『ユミルの猟犬』かよ!! ってことは、さっきあいつが言ってた「ワインを盗んだ2人の英雄」って……俺とクラングのことじゃねえか!!
やばい、やばいぞ! 俺、まだリスポーン地点(復活ポイント)を更新してない! もしここで死んだらあの最初の酒場に戻されるし、何よりアイテムをロストする危険がある! クソッ! なんで序盤から、こんな特大のトラブルに巻き込まれなきゃならないんだよ!)
ハジメの頭の中はパニックに陥り、あまりの急展開に心の中で絶叫していた。
そんな彼の内心の焦りなど露知らず、ゴエモンは親友に向けるような優しい笑顔で微笑みかけた。
「それじゃあ、行こうか?」




